NO105/三人の日記

ヒロト2022年令和4年6月28日(火)〈おれっちの就活日記〉

おれっちには風が吹いているかもしれない。

魚屋と電話が繋がった。彼が言うには、おれっちも勿論知っている、ベテランの魚屋のおばちゃん二人がちょうど辞めるというんだ。だから、人手は欲しい筈ですと答えてくれた。

10年くらい前、魚屋に純朴そうな若いヤツがいて、他店ながらおれっちに何故かなついていた。彼が転勤してから全然顔も見ていなかったけど、何と最近、戻って来たという、しかも店長で!出世したなあ。

おばちゃん辞めにしろ、新店長にしろ、タイミングはバッチリ。後は、その新店長と話をしてどうなるかって事だね。もう彼の事をヤツとか・・君とか言えないな。

そして、新しい職に就いたらもうひとつ、考えている事がある。

人間、いくつになったって夢を持ってもいいよね。

その事については、仕事が決まったらまた聞いてくれ。

話は変わるけど、ジローさんの日記がまた届いたよ。何か日記は終わりらしい。年末三日間の浅草演芸ホールの事。

『ジローの日記』

1974年12月28日

疲れたまま稽古を少しして明日に備える。

12月29日

初舞台、70%成功。

12月30日

二日目“いい線”慣れて来た感じ。

12月31日

大晦日。演芸ホールの支配人からも、いい言葉をかけられ満足な一日。

来春に向かってGo!

ケンジとも、いい感じで別れた。

最後の舞台の一撃が非常に気になる・・・

のだが・・・


〈ジローの日記は、ここで終わっている。あとはケンジの日記を楽しもう〉


ジローさん、現在のじろりんさん、貴重な日記、ありがとうございました。また、何か思い出したりしたら、コメントでお願いします。

それにしても、『最後の舞台の一撃・・・』

気になるなぁ。


ケンジ1975年昭和50年1月1日(水)

昨晩は日記を書こうとしたところに、タケちゃんが車で迎えに来て、書かずに御来光を拝みに出掛けたのだ。あいにく今年は厚い雲に立ち込められ、日の出は拝めなかった。

しかし、御嶽神社へ初詣したし、太陽が出たものと仮定して、タケちゃんとコウちゃんと三人で万才三唱して来たし、結構であった。

とにかく、私らの初日の出詣りは恒例のことであるから、どうも行かないと気分がスッキリしないのだ。御嶽山は、過日降った雪がまだ溶けずに残っており、革靴とぞうりとで登った私ら三人は、あちこちで滑りそうになり、気を使いながら登破したのだ。

昨年は、大晦日まで演芸ホールに出演できたし、かなりうなずける線まで出せたし、本当に結構な年であった。ただ三日目の二回目の出演がカットになったことだけが、何か今年に残された宿題、課題といったようなものに思われる。

とにかく、今年一年も、今年こそ花ビラの一つも咲かすよう頑張ろう。

ヤリマスヨォー!


ケンジ1975年昭和50年1月2日(木)

今日はショーちゃんおぢさんが来たのだ。例によって夕方。ためになる話を聞いた。今日の話は、天才論、人生論、等々であった。

人間は全て、嫉妬の動物である。自分より優れているものを決して認めない。認めればその人は自分の存在を否定したことになるのだから。といったようなことを一つ一つ分かりやすく説明してくれた。でも今は、自分より優れているものを認めれば、うんぬんのところが非常に難しい。自分はもっともっと勉強しなければ、それを実感として悟ることは難しいだろう。

また、これらの話の後にした、人間は常に競走の動物であり、それを常にトップを走っていたら他の人に憎まれるばかりだ、二番か三番を走るのがよろしい。闇雲に敵を作るのは無益なことだ。そして常に忘れてはならないのが、努力。天才は99%の努力と1%の才能だと、エジソンは言った。その努力も他人にひけらかす努力でなく、常に日陰でする努力、これがもっとも好ましいのだと。いちいちなるほどと思う。


ケンジ1975年昭和50年1月6日(月)

今日は一日、テレビとコント集読みで暮れた。お昼過ぎに母から頼まれた品を買いにマーケットに行った、体を使ったのはそれぐらいのものであった。きっと私の体も、この正月でだいぶ肥えたに違いない。私の体は、ちょっと気をゆるめれば、即太るのだから、多少食事も控えめの方がいいようだ。これは決して太るとカッコ悪いからそうするというのではなく、むしろ、体のコンディションとして、痩せてた方がいいからだ。とにかく我が家にいると、食っちゃ寝という生活につい入り込んじゃうので、そろそろアパートの方へ帰ろうと思う。もうこの正月休みが済んだら、当分の間は我が家へは帰らず、また血と汗の努力を積まなくちゃ。私は何か、稽古に励んでいる日々がもっとも落ち着くのである。まぁーこの正月は一年分ゆっくりしたし。また、今年の大晦日まで頑張らなくっちゃ!やるよォー!


ヒロト2022年令和4年6月28日(火)

ケンジ、今日は夜7時に、檜原村産業廃棄物焼却場反対のシンボジウムに参加して来たよ。オオノの呼び掛けで、スズコちゃんも来たよ。ケンジのふるさと、日の出町の更に山奥の美しい山村に、あろう事か、大規模な焼却場建設が既に申請済みだという。前にもちょっと書いたよね。最初にウッドチップ工場として、如何にも村の産業に寄与するような形で村に入り込み、突如として焼却場建設を申請するというやり方。

檜原村から出る一年間のゴミの量の40年分を一年で焼却処分するという。美しい山中を毎日何十台ものトラックが行き交い、365日

産業廃棄物を燃やし続ける。産業廃棄物なので、自治体の事業ではなく、民間業者が出す産廃を民間業者が焼却処分する。申請書に不備がなければ、そのまま通ってしまう事が多いらしい。だから、その不備を突き、計画の無謀さを訴えていくしかない。このままいくと11月までに通ってしまうかも知れない。

何故檜原村なのかのカラクリも聞いた。産廃を出す業者は出来るだけ安く出したい、処理業者は安くしてでも多く請け負いたい。だから処理場は大規模なものを安く建てたい。目立つところには建てられない。そこで目をつけたのが、土地が安くて目立たない山奥の檜原村だって訳。

檜原の人たち、頑張ってるよ。村人たちがほとんどひとつになっている。9人の村会議員も反対で足並みが揃った。(村長だけはまだはっきりとしないみたいだけど)

コミュニティ、小さな塊が発信し、何かを作り上げていく。隣の人がどんな人かよくわからないところに住んでいる自分には、羨ましいぐらい。

住民ではないけれど、檜原村の人たちと一緒に反対の声をあげていこうと思う。

何故かって?またあの美しい村で遊びたいから。




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