NO87/フランキー堺さん

ケンジ1974年昭和49年9月4日(水)

あーあ、今日のスターアクションの本番もとうとうコントの出番はなかった。ショボン!

もうちっとも発表できない、非常に苛立ち焦りを感じる。でも焦ることはないのだ。十分に実力をつければいいのだ!そう言い聞かせてもやはりもう少し発表の場というのが欲しい。

そんな訳で、今日は本番終わってから日本テレビのタレント学院へ久し振りに寄って来た。運良く、ちょうど平山先生が来ておられたのだ。早速先日のことを詫び、事情を言って、プロダクションに所属するのはまだ早いというような主旨のことを告げたのだ。そうしたところが、別にプロダクションに所属しなくてもフランス座なら、勉強のために出してやるというのだ。それにはまずその出し物のネタを考えねばならぬのだ。とにかく私らの勉強しやすい方向に話を進めよう。


ケンジ1974年昭和49年9月5日(木)

今日は十二時前にジローのアパートへ行き、朝食をとって即稽古をしに行くという気になれなかったので、まず演芸場へ例によって勉強に行った。いろいろな人たちが出演していた。相変わらず同じようなネタをやっている人、同じネタのようでもだんだんその面白さを出して来た人たち。アッと驚く大魔術などいろいろ見て来た。

そしてジローと、例によって激論を交わした。とんでもない方へ話が変化したりしながら。


ケンジ1974年昭和49年9月13日(金)

今日は、昨夜深夜ジョッキーを聞いていたせいもあって、午後一時半頃まで布団の中にいたのだ。よってジローの所に行くのも遅くなり、またまたジローからお説教である。いつものことながらジローはきちんとしている。

私がどちらかというと、自分本位で感情や欲望のおもむくままに生活する方だから、そのようなきちんとした規律正しい真面目一方のジローのような人物とコンビを組んだというのは、私にとっては大きなプラスになっているだろう。でもジローの方では、とんだ厄介なお荷物かも知れない。しかしそんな私に、飽きずにきちんと忍耐強くついてきてくれるジローには、感服するものが大である。


ケンジ1974年昭和49年9月21日(土)

フゥーン、まぁーまぁーだった。

今日は三鷹でのスターアクション本番。出前と給仕の役で、フランキー堺を目の前に置いて芝居をやってきた。まぁーテレビに映るか映らぬか、そして、他人が見て、また自分が後でテレビを見てどう思うのかは別として、とにかく一流コメディアンのフランキー堺さんの目をにらんで、たとえ一言の芝居でも出来たことは、私の人生にとって、芸歴にとって、大きなひとつの経験であった。良かったねェー!

帰りには久し振りに日テレ学院に寄って、今日の第三期生卒業おさらい会の「打ち上げ」に参加してきた。参加といっても、勝手に厚かましく首を突っ込みに行ったという感じであるが。今日のスターアクションの本番がなければ、「卒業おさらい会」に出演したかった私らなのだ。

それにしても、一年前の私らと同じような若人が、卒業というひとつの区切りを新たに、また明日を夢見て巣だって行く姿を見た。ちょっとオーバーかな?しかし私らも負けずに頑張らなくっちゃ!


ヒロト2022年令和4年5月28日(土)

フゥーン、どころじゃないよ、ケンジ。

フランキー堺さん、凄い人と仕事したもんだ。

1929年鹿児島生まれ、昭和17年上京して、港区麻布中学に入る。同学年に、加藤武、なだいなだ、小沢昭一、中谷昇などがいて、戦時中ながら、演劇部、剣道部、音楽部などに所属して、活発に活動した。そして、慶應義塾大学法学部に進む。在学中にジャズドラムに夢中になり、のちにプロになり、ジャズバンド兼コミックバンドのシティスリッカーズを結成。ギター植木等、トロンボーン谷啓、ピアノ桜井センリなどもいた。

ジャズをテーマにした映画をきっかけに、数々の映画に俳優として出演することになる。ブルーリボン最優秀男優賞はじめ数々の賞を受賞している。ミュージシャンとしても、紅白歌合戦に4連続出場した。

俺としては、1958年TBSテレビで放送されたテレビドラマ「私は貝になりたい」。

自分はまだ6歳だから、大人になって再放送で見たのだけれど、物凄く心が動いた。テレビドラマであれだけの名作はなかなかないと思うよ。(昨日書いた「岸辺のアルバム」も名作だけどね。)

主人公は理髪店の店主。

第二次大戦中、徴兵され、戦地で上官に命令され、捕虜を刺殺してしまう。

戦後、軍事裁判でC級戦犯として処刑されるまでを描いたドラマ。小市民が、戦争の渦に巻き込まれて苦悩する姿を見て、震えるくらい感動したのを覚えている。

のちに、映画化もされ、テレビでもリメイクされたみたいだけど、やっぱり、最初の白黒のやつをまた見たいね。

ケンジ、その人と共演したんだよ。うらやましい!

ところで、今夜の仕事の帰り道、ホタルを見られる里山の小川がある。そろそろいるかも知れない。見てみるね。乞うご期待!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る