NO78/石井ふく子さんの膝の上に座る

ケンジ1974年昭和49年5月10日(金)

オッー痛、今日は稽古で左手の人差し指を突指してしまって、今でも曲げると痛いのだ。参った参った。それとは裏腹にイメージの方は最高であった。ジローの音楽とリズム感覚はまさに天才的なものがあるし、そこへ私のひらめきィーションの天才力が発揮されれば、まさしく鬼に金棒である。何か目の前が急に開けたような気がする。今の私はまさに最高の夢心地というところだ。今日の稽古では、今度スターアクションの公開録画の時受け持たされそうな、本番前のアトラクション用のコントを考えた訳だが、それが抜群に面白くなりそうなのだ。やはりコントというのは、自ら面白いと感じ、ウキウキした気持ちを押し殺して、平然とやるところに真の面白さが出るのだと思う。


ケンジ1974年昭和49年5月11日(土)

今日の稽古は前半は乗らずシラッーとしながらやってしまったのだが、後半、新作のコントを稽古しだした時から徐々に乗ってきて、最後は決まった。本当はこんな事ではいけないのだが。でも、稽古の順序次第でこれも改善できると思う。ところでその新作だが、何とか一通りまとまって輪郭もはっきりしてきて、あとはそれを確実にするのみというところまでこぎつけた。また明日も頑張らなくっちゃ!

それにまた今夕は日テレ学院へ行って、三期生の前で花束のコントをやってきた。まずまずの出来だとは思ったのだが、意外と笑ってくれたので、私らもちょっぴり気を良くしているのだ。やはり、客の一人もいない稽古だけでは真の実力はつかない。どんどん人前でやる機会を得、場数を踏んで自信をつける。それがなくては!


ケンジ1974年昭和49年5月12日(日)

今日も稽古で日がくれた。何か日一日と稽古も充実してきたような気がする。ますます頑張らなくっちゃ!バイクの運転にもだいぶ慣れてきて結構重宝している。でもここで気を抜くと事故のもと、運転はあくまで冷静に緊張してやらなくては!

さて、明後日の夕方はスターアクションの初の本番の仕事で京都行きだ。ひょっとしたら今度の新作のコントをやらせて貰えるかも知れないし、頑張らなくっちゃ!さて、今夜は久し振りに風呂屋に行って下着を替えたので、清々しい気分なのだ。


ヒロト2022年令和4年5月19日(木)

あのう、差出がましいようですが、(ジローさんもだけど)久し振りに風呂屋に行ったとかが多いんだけど、もう少し風呂入った方がいいんじゃないかな。一週間ぶりとか、10日ぶりとか、こっちまであちこち痒くなって来るんですけど、、、


ケンジ1974年昭和49年5月15日(水)

ハッーア、くたびれた。昨日夕方4時の新幹線で京都へ行き、今夕7時50分過ぎに東京駅へ帰って来るというスケジュール、参ったよ。スターアクションという番組の仕事を始めてからこれが初めての本番。期待と不安に胸を膨らませたり縮ませたりしながら行った。そして今日午後一時からの本番、とすんなり行くところだったのだが、どうしたことか、今日に限って不手際が続発し、開始が20分以上遅れてしまったのだ。そんな訳でどうにも間がもてず、不意に到来した私らの出番、コントをやれときたのだ。さすがの私らも、もしかしたらとは思っていたが、まさか本番前に、「めくり」という私らの仕事のスタンバイしている時になって、急に呼び出されて、やれ!と言われても、ちょっと参っちゃうのだ。しかし、ここで引っ込んでちゃー男がすたる。待ってましたとばかりにやったのだ。でも案の定結果はあまり良くなかった。少なくとも自分らで反省してみたところに於いては。

だけど問題はこれからなのだ。これでクシュンとなっていたらダメだ。これを踏み台がして飛び立たなければ!


ヒロト2022年令和4年5月19日(木)その2

昨日の話の続きをするね。

確かに石井ふく子さんは、自分のプロデュースする舞台には必ずと言っていいほど呼んでくれたよ。いわゆる石井ファミリーの端っこくらいには入れて貰えたんだ。多い時は東京、名古屋、大阪など一年間に6ヶ月舞台があった。ケンジみたいに一日300円じゃないよ。ずいぶんと経済的にも助かったけれど、芝居には稽古もあるし、他の仕事は入れにくいので、やっぱり繋ぎでアルバイトはやらなくてはならなかった。合間にテレビドラマのちょい役でもあったらいいんだけど、情けないことに、俺の需要がなかったということなんだね。それでも、一流の人たちと仕事をするのは気持ちが上がるし、地方公演での生活も楽しいので、10年くらいは続いたなぁ。

石井ファミリーはよくパーティーもあったんだよ。ある時、カラオケ大会みたいのがあって、俺も歌ったんだ。やしきたかじんの「東京」俺も役者だろ、ただ歌うだけじゃつまらない。マイク片手に踊りながら、ノリのよさそうな人のそばにグッと近づき、目と目を合わせながら歌ったりした。このコロはコロナのコの字も無かったので大丈夫。だんだんと石井さんに近づいてきた、どうする俺、少し離れたところから石井さんの目を捉えた。その目を外さず歌いながらすぐ前まで来た。そこで、自分でも思いもよらぬ行動に出た!

石井さんの膝の上に座っちゃった!あまり体重をかけないようにしながら身をよじり、見つめ合いながら歌う、その距離20センチか?石井さん、怒ってない?そしたら石井さん、手の平でリズムに合わせながら俺の背中をさすってくれたぜ!

さあ、次のターゲットは?いるじゃない、すぐ隣に。ピン子さん!チャレンジャーの俺はここでも膝に乗った。ピン子さんが笑ってる!一本のマイクに顔をくっ付けるようにして歌ってくれた。最後は笑いながら突き飛ばされたけどね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る