NO77/希望

ヒロト2022年令和4年5月18日(水)

ジローさんからコメントが届いたよ、ケンジ。1974年のジローさんの日記では、ジローさん、ものすごく悩んでいる。二人とも苦しんでいるんだね。二人には申し訳ないけど、逆になんか羨ましく感じてしまう。

始まったふたりのもがき合い、辛いことも多いだろうけど、こっちは楽しませてもらいます。これまで、日記の全ては載せられないのでチョイスさせてもらっているけど、ジローさんとの日々はどんどん行こうと思います。

よろしく!


ケンジ1974年昭和49年5が5日(日)

今日は「こどもの日」私らは、朝から草野球を見に行ったり、相撲を見に行ったりで忙しかった。野球の方は、朝8時半頃ジローからTELがあり、牛乳屋のチームの野球の試合が、千住大橋の方であるから見に行こうということで起こされて、朝飯も食わずに行ったのである。そして近所の食堂まで戻って来て昼食をとり、今度はすぐ近くの公園で行われていた相撲大会をちょこっと見に行ったのである。私もやりたかったのだが、ジローとのコントの稽古もあり、小学生低学年の相撲を見て即、例の稽古場へ向かったのだ。

今日の私は、何か胃の調子が悪くて乗らなかったが、それでもまぁーまぁーいい線いってコツコツと成果は上がっているようだ。今日は疲れたのでもう寝るとしよう。あッーねむいねむい!


ケンジ1974年昭和49年5月6日(月)

今日もいい天気であった。私はどうも午後一時から二時半ぐらいの間、体がかったるくなってコントの稽古に身が入らなくなる傾向があるのだ。ジローにそれを気取られ注意を受けると、それに反発して余計やる気を削がれるのだ。参ったものだ。しかしそこをやらねばならんのだ。これは大変だ。でも一度選んだコントの道、もっともっと苦しんでやるべきなのかも。

さて、オートバイの運転にもようやく慣れてきて、だいぶ余裕も出てきた。でもふとした油断が災いの元、十分気をつけていかなければ!生活の方もだいぶリズムに乗ってきたし、そろそろ読書などする時間も出来てきた。いよいよ頭も体もフル回転させる時が来たのだ。ヤッタルデェー!


ケンジ1974年昭和49年5月7日(火)

今日も一日終わった。毎日稽古の連続な訳だが、何かこう稽古ばかりしていても、発表の場が確保されていないというのは不安なものだ。これでいったい客の反応はどうなのか?

ということを考えた時、無性に自信がなくなるのである。4月まではどんなことをしても、毎日二回は舞台というものがあり、そこで発表出来た。それが今なくなってみると、そういう発表の場の有り難さがつくづくわかる。

明日は、二回目のスターアクションのリハーサル日だ。何かそれだけが楽しみのような気がする。それでもコントを目指したからには、その壁を破らねばならないのだ。今が一番苦しい時かも知れない。とにかく相棒を信頼して、共にスランプと戦っていかねばならぬ。


ケンジ1974年昭和49年5月9日(木)

今日は牛乳配達をやっている途中から雨が降り出し、天気予報では「梅雨入り」だとのことだ。雨のシーズンはやだねェー!

それに相反して、私の心は夢いっぱいの最高の状態なのである。というのは昨日、例のスターアクションのリハーサルに行って、途中の休み時間に私らのコントを、スタッフのディレクターや作家の人たちに見て貰えたのである。その上、「君たちのは面白い、努力を続ければきっと売れる。俺らに出来ることなら何でもバックアップするから頑張れ」という風な旨の激励の言葉まで貰ったのである。

別にその言葉で有頂天になる訳ではなく、とにかく何か目的が出来た。確実な目標が得られたということで、私らにとってまずは小さいけれども、大きく飛躍できるチャンスだと思って、大いに闘志を燃やしているところなのだ。


ヒロト2022年令和4年5月18日(水)その2

売れない役者だった俺も、何度かは、これはいけるかも知れないぞ!という局面はあったんだよ。

その中で、最も夢と希望に胸がいっぱいに膨らんじゃったことがある。

三十代半ば、役者を始めて10年あまり、テレビドラマのちょい役、少しはギャラの出る舞台などまばらに仕事はあった。でも、もう子供が二人いたし、バイトも頑張らなくては食えなかった。そんな中、事務所が石井ふく子さんプロデュースの舞台の仕事を取ってきてくれた。石井さんの舞台は、一ヶ月公演、しかも東京でやったあと、必ず名古屋とか大阪公演があるんだ。その間はバイトしなくても大丈夫なくらいのギャラを貰える。

また違う演目でも呼んでくれた。そんなことが三回くらい続いたある芝居の打ち上げの時、石井さんに呼ばれた。

「まさき君、これからお前さんのこと、使うからよろしくね。」

やっと、やっとこれで役者として食っていけるようになるのか、バイトしなくてもいいようになるのか、って夢見心地になったもんだった。かみさんに早く知らせたかった。

それからどうなったのかは、ここではやめておこうね。今日は気持ちのいいまま終わろう。


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