NO74/ケンジとジローのコンビ誕生

ヒロト2022年令和4年5月14日(日)

ケンジの1974年昭和49年3月24日の日記に『昨日はピンク映画を見た後、ジローの部屋に泊まった』とあるよね。

そして、ジローさんのコメント、

1974年昭和49年3月23日の日記

『ケンジ、泊まる』

ぴったり一致!お二人にとっては当たり前でしょうが、なんか嬉しい。


ケンジ1974年昭和49年4月18日(木)

今、ビールの酔いで顔を火照らせながら日記を書いている。ビールを飲んだのも久しぶりのことだ。それもスナックで。

ひょっとすると、今日のそのビール一杯が、今後私の一生にとって大きな一区切りになるかも知れないのだ。

というのは今夕、ジローと二人で、コントコンビの結成式をしたのだ。くるま座も今月いっぱいで終わり、そして私とジローは、一年間、邪念を払って、ここらで一発コントに打ち込もうじゃないかという結論に達した訳だ。そこには、まだ私らは芝居も下手だし、もっと芝居の勉強をしたい、という思いもあったのだが、一年間とにかくがむしゃらに行動してみようという結論が出た。

そして今夕、一杯のビールをお互いの腕を交差して飲み干しながら、この一年の誓いを立てたのだ。

こんな事を他人が聞けば、何を子供だましを、と感ずるかも知れない。しかし私らにとってはそれでこそ純粋な誓いだと確信するのだ。とにかくこの21歳の年を頑張ってみよう。おもいっきり。


ケンジ1974年昭和49年4月21日(日)

参った。また体中が熱っぽくてかったるいのだ。四月も終わりに近づいたというのに、今さら風邪もないだろうに。昨日の夜更かしでコンディションが狂ったのだろうか。そんなことじゃァーしょうがないのだが。今日からいよいよ、くるま座最後の公演に入ったというのに。よって昨夜の三時までの舞台稽古が最後の舞台稽古ということになったのだ。

思えば、この七ヶ月はまったく短かった。何かきっと身についたものもあるだろうが、まだ実感として湧いて来ない。とにかくあと10日間バッチリやろう。今回の芝居はちょっと異色で、児童劇じみたところがあり、今日の初日を見たところではあまり好評とは言えず、どちらかというとつまらない部類に入りそうなものだ。でも最後だ。それをバッチリ決めようじゃないか。ねェー!


ケンジ1974年昭和49年4月23日(火)

どうも最近の私は顔に生気がない、瞳に輝きがない。みんなから、寝てるんだか起きてるんだかわからないと言われる。暗示されて生気をなくされているのか、そのせいもあるかも知れない。でも、それにしてもあまりに表情が無さすぎる。それが時々ふと舞台でも感ずるのだ。そんなことを考えながらやっていたら、尚更表情がなくなる。

ジローとコントの稽古をやっても、何か自分を脱しきれない。うわべだけでやっているという感じなのだ。このままじゃァーダメだ!

まだ素人の方がいい。もっと気持ちを上向きに持って行かなければ。ウキウキした気持ちを感じなければダメだ。

こんな私に欠けているのは一体何か。

それは恋愛かも知れない!


ヒロト2022年令和4年5月15日(日)その2

そこかーーーい!


ケンジ1974年昭和49年4月24日(水)

ようやく、突然襲って来た原因不明の気だるさもとれてきて、いよいよ状態も良くなってきた。やらなくっちゃ!

それに反して、最近とみに他のくるま座員との仲が嫌悪になってきた。もちろんジロー以外の連中とである。私にとっても心当たりがない訳でもない。でも私から見れば、私のひとりよがりかも知れないが、私には大した落ち度があるわけではなく、他の連中の、ある小さな誤解と偏見が端を発して、人間の宿命である感情とか理性とかの増幅作用によって、初めの些細な誤解とは似ても似つかぬ、

計り知れない敵対感情が産み出された、と感ずる次第である。

人間の心情なんていうものは奇妙なもので、誰かが放ったほんの些細なきっかけによって、たちどころに連鎖反応を呼び、取り返しのつかぬことになるのは多々あることなのだ。今日の私の場合もまったくそういうことだろうと思うのだ。

私は、他の連中のくだらない下劣な話などにはあまり乗らず、またその乗り方も知らない。よってあまり口もきかなくなる。他の連中がみんなで笑い転げてベチャクチャしゃべり捲っている時に、一人ブスッーとした顔つきのヤツがいたら、みんなは気分が悪くなるのは必定だろう。

また私は、他の酒好きの連中とは違い、夜、飲み屋で一緒に飲んだりなんてェーこともしない。それがますます一緒に飲んで仲間意識を持った連中と、そうでない者との格差となって増幅される。

ここで言っておきたいのは、私は面白ければいつでも笑うし、しゃべりもしよう。でも、これは私の生まれつきのものかも知れないが、つまらない時にはまったく無視するというか、軽蔑しているように見られがちな態度にでるというところがあるのだ。

でも、私としては、今までと変わりなく一生懸命やっていると言いたい!


ヒロト2022年令和4年5月15日(日)その3

他の連中の皆さん、

「ケンジはどうしようもないシャイな奴だなぁ」

と、笑ってやってください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る