NO61/日活俳優影山英俊さん

ヒロト2022年令和4年4月29日(金)

昨日日記を書いたあと、ある思いに捕らわれた。ケンジの日記、4冊目に入った。あと20冊あまりある。まだまだ長い交換日記の旅になるね。それなのに、終わった時の事を考えちゃったんだ。その時感じるのは、達成感なのか?楽しみではあるけれど、ケンジロスにもなりそう。どうしよう、考えてみると結構淋しい思いになるかも知れない。

でも、フッと思った。性格も考え方も違うお前と俺だけど、やってる事はかぶっていることが多い。この二人の人生を合体させて、新しい一人の人生を小説にするのも面白いな。

こりゃちょっと、いい思い付きかも知れないぞ。また楽しみが増えた!

でも、今はまず、ケンジの日記の次のページをめくってみよう。


ケンジ1973年昭和48年9月20日(木)

昨日からまた国鉄が、順法闘争てな厄介なものを始めた。いい加減焦れったくなる闘争であることよ!

おまけに今日はここ数日になく蒸し暑かったので、帰りのブタ小屋電車にギューブーギューブーと詰め込まれたときは、さすがの私も心頭を滅却せざるを得なかった。

ところでいよいよ発表会まであと二日、私の出演するコントの進行具合といえば、最初に考案した演出がことごとくクレームをつけられ、今日未だに総指揮のセキという男からクレームをつけられるという散々な目にあっているのだ。だがここまで来たらもう変えようがない。セキ氏は演出家ではないのだから、私のイメージ通り、強硬に続行するつもりだ。なに、その成否は、発表会の時の観客の裁断による他の何物でもないのだから。


ケンジ1973年昭和48年9月22日(土)

昨日は、先日仲間と下見したにも関わらず、私が間違えて初台の稽古場に行ってしまい、あわてて遅刻するのを承知で銀座そごう八階の発表会会場でのリハーサルに中央線で急いだ。それが運命のとり合わせとでもいうべきなのか、その順法闘争のさ中での満員電車で、四ッ谷から乗って来て私の背中にくっついて煩わしいオジサンがいた。と突然、そのオジサンが私に声をかけてきた。ふと見ると、その煩わしいオジサンこそ、日テレのコウノプロデューサーであった。私は驚いて、

「おはようございます」と会釈した。そしてそれから有楽町のそごうまで、ずーっとそのコウノ先生の話を拝聴しながら来たのだが、大変参考になったし、自信もついたし、親近感をも持った。良かったねー!

そして、今日の日テレ最後の発表会、私の出来ばえは上の位を自認して、それに恥じぬものであった。

五日市線、五日市駅をいつものように夜遅く降りて、雨に濡れた大久野へのいつもの道をひとり歩いて来て、ああ、もうこれで例のコントのセリフの勉強も大声でしなくていいのかと考えると、ちょっぴり感傷的になった。

善き六ヶ月間であった。


ヒロト2022年令和4年4月29日(金)その2

俺は21歳の時、公務員でありながら、高円寺にあったドラマスクールという、俳優養成学校の夜間部に六ヶ月間通ったのは前にも言ったよね。正確なところはよく覚えていないけど、男4、5人、女7、8人て感じだったかな。夜間部ということで学生というより、俺のように働いている人が多かったように思う。たまに早く稽古場に行くと、演劇を専門的に勉強している昼間のクラスの人が自習していたりして、もうプロのような雲の上の人みたいに見えたもんだ。

夜間部のみんなのほとんどは、普通の学校とは違って、当然のことだけど自ら望んで、自分で稼いだお金で授業料を払っているわけだから、みんな熱心でよく練習したし、議論したし、そして一部の若い子は別として、ほとんどは社会人なのでよく飲みにも行った。ケンカもしたし、ちょっとした恋ごころを持ったこともあった。楽しくて印象深い半年だった。きっとケンジも同じようにやっていたんだろうね。

六ヶ月経って卒業になる。やっぱり卒業発表会がある。それぞれ寸劇やコントを好きなようにやってごらんなさいと、ドラマスクール主宰の野田雄司先生がおっしゃった。俺は2つやらせてもらうことにした。ひとつは、それぞれみんなの演し物の合間、繋ぎの短い時間に何回も出たいと思って、我ながら上手く描けたゴルゴ13の大きめのお面を顔に付けて上半身裸になり、幕間に飛び出して行って、

「ゴルゴ!ゴルゴ!ゴルゴ!」と客に向かって叫んで、それだけで引っ込んで行く。客に後ろを見せて引っ込むわけだけど、後ろにもお面を付けて見せるようにした。ゴルゴ13の後頭部のお面で真っ黒なスポーツ刈りの後頭部には、ポッカリ大きな丸い白抜きのハゲがある。

今考えると学芸会みたいだけど、客は結構笑ってた。

俺の活躍はそれだけじゃないよ。実は同じクラスに、現役の日活の俳優さんがいたんだ。

影山英俊さん、2歳年上の背が高くスラッとしていてカッコいい。目がギョロっとしていてどっちかというと強面かもしれない。その頃は日活ロマンポルノ全盛でよく出演しているのだけれど、ちゃんとした演技の基礎を勉強したいとドラマスクールに入った人なのだ。なんでか仲良くなって、二人でコントをやろうとなって、当時、マカロニウェスタンが流行っていたので、ガンマン同士の決闘コントをやることにした。麦わら帽子をカウボーイハットにして銃とベルトはおもちゃ屋で買った。内容はよく覚えてないけど、これも結構ウケたなぁ。ひとつだけ思い出した。お互い弾が出なくてアレ?アレ?ってなって拳銃を交換して調べ、はい大丈夫!って戻してまた決闘ってやつ、どう?面白い?

現役の日活の俳優さんがよくやってくれたよなあ。影山さんとは卒業後も何度か連絡したり、出演映画を観たりしたけど、だんだん疎遠になっちやった。

影山さん、どうしてるのかなと調べたらすごい!大活躍!出演作品並べてみよう。なんか

俺的にはワクワクしてくるよ。

禁断制服の悶え

感じるんです

色情妻肉の誘惑

バックが大好き

新団地妻売春グループ13号館

肉体犯罪海岸ピラニアの群れ

実録白川和子裸の履歴書

官能教室愛のテクニック1972年

妻三人肌くらべ

昼下がりの情事古都曼陀羅、、、、、、、

ケンジ、ワクワクした?

全部で44本あった。他にテレビ38本、Vシネマ13本、これでもほんの一部なんだろうね。2014年の「仮面ライダー鎧武」、2016年公開の「白鳥麗子でございます、THE MOVIE」、2017年のVシネマ「制覇9」組長役で出ている。まだまだ現役で頑張っているようでうれしい。

もうひとつ、思い出した。影山さんが映画の中で、素っ裸になって後ろ斜めからのアングルで、自分のモノで給食で使うような大きなやかんを持ちあげる、というシーンがあったんだって。ロマンポルノは必ず前張をするから自分のモノは使えない。勿論使えたとしても持ち上げられないって笑ってたけどね。ではどうしたか?

太い針金を首からぶら下げて、その先端を折り曲げてそこに引っ掛けることになった。でも、針金は見えちゃうし、首に食い込んで痛い。そこでネクタイに針金を仕込もうということになった。ついに成功!

でも、素っ裸にネクタイだけ付けてやかんをぶら下げているってどう?って言いながら、まんざらでもなさそうな顔してた。

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