NO51/怪獣の中の世界

ヒロト2022年令和4年4月11日(火)

ファイヤーマンと怪獣の格闘!

怪獣の中でケンジが格闘!!

悪いけど、笑っちゃった。


ケンジ1972年昭和47年11月9日(木)

今日も怪獣であった。息をするのが苦しくなったり、目や口にゴミが入ったりしても、決して自らは取り除けず、本番が終わるまで我慢する。まさに忍耐の鍛練である。それに、私の昔からの弱点、中学時代から足は十二分に鍛えておいた筈なのに、足腰に力がないというのか、要領が悪いというのか、とにかくすぐ転びそうになったり、足を絡ましたりするのだ。何故だろう、足も短いし、腹も出てるし、重心が低くて転びにくい筈なのだが。

困ったものだ。さて、明日もまた怪獣である。毎日仕事のあるのはいいが、怪獣なんてェーのはあまり長くやっているものではあるまい。ても、まだ私などはその怪獣でさえうまく扱えないのであるから、今やめるというのも意気地がない。とにかく一、二ヶ月様子を見よう。そして怪獣の葵と噂されるようなヤツになっちゃろじゃないか。


ケンジ1972年昭和47年11月10日(金)

今日はもうダウンやで、もう首から背中にかけて、イテェーというか締めつけられるというか、とにかく言い知れぬ痛さなのだ。

今日は例のファイヤーマンの怪獣で、とうとう格闘シーンを撮ったのだ。歩くだけでも思うようにならず足腰フラフラ千鳥足てな調子であるのに、なんと飛んだり跳ねたり走ったり転んだり起きたりの立ち回りをやろうというのだからメチャクチャな話。それをまたやり遂げた私もあっぱれあっぱれ。しかしそれには、鼻の頭を擦りむいたり、首と背中の筋をおかしくしたりといろいろ苦労もあったのだ。とにかくあの重い巨体でトンボを切るなんてェーことは生まれて初めてであるのだ。

そして、そのドラマの上でも、私の扮した怪獣ドリゴラスは無惨にもファイヤーマンにたたっ殺された。トドメはファイヤーフラッシュとかいう必殺技なのである。とにかくまいったまいった。無事終わってよかったよかった。


ヒロト2022年令和4年4月12日(火)その2

ファイヤーマンの必殺技

ファイヤーフラッシュ

一定のポーズを取り、両腕に集中させた巨大な超高熱のマグマエネルギーを変換させた破壊光球を相手に投げつけて倒す必殺光線。放つ際には技名を叫ぶ。


ドリゴラスは、雄で、一本角怪獣

身長60メートル 尾の長さ30メートル

体重31000トン

青江半島の伝説に語り継がれる、太古から生き続けてきたトリケラトプスの変異体。

戦力は、口から放射する橙色の熱線「ニトロビーム」と光る頭部の一本角から放つ楔型の白色光線。

先に現れた三本角怪獣ドリゴン(雌 身長 59メートル 体重39000 トン)を捜して青江半島の漁村に上陸した。

ファイヤーマンの必殺技「ファイヤーフラッシュ」で倒された。


のちに、「ミラーファイト2012」にも登場している。「ウルトラマンタロウ」では、

オカリヤンに改造されている。


ケンジ1972年昭和47年11月14日(火)

今日も怪獣をやってきた。

今日の仕事こそは、微塵の誇張もない、まさしく凄まじきものであった。

水の中に飛び込まされては、怪獣が水を吸い込んだ重みで倒れビショ濡れ。おまけに一人では立てないので危うく水を飲んで溺れかかるところ。

また角を光らせる場面では、そのコードが私の頭にズレてぶつかり、私の頭は、

ビリビリのビリ、目の前真っ白になったかと思ったら目の前真っ暗、電気は頭から入って歯から抜けていったようで、すぐ切れたからいいようなものの、もう少しで感電死するところ。クワバラクワバラ、また明日もどうなることやら。


ケンジ1972年昭和47年11月15日(水)

さて、今日こそは、絶対に今日こそは昨日なんてメじゃない正真正銘、万国共通のまさに地獄の三丁目、三途の川まで行ったのである。とにかく息の苦しいこと藁をも掴みたいが如く、顔のカユイことジンマシンの如く、頭の痛いことジャイアント馬場の空手チョップをくった時の如し。

とにかく今日はとうとう怪獣の故障が極悪になり、頭を固定するための鉄骨がぬいぐるみの肩の肉をぶち破って出て、固定していた頭部の輪っかが後頭部へ大きくずれてしまったからさぁー大変。

固定の鉄骨がずれれば当然首が安定せず、頭はガクガク、目は見えなくなる。それを直そうとスポンジをぶっこんだおかげで今度は息が苦しくなり、スポンジにベタッとくっ付けられた口と鼻はまさしく呼吸困難をもよおした。それにスポンジにギュッと押し付けられる顔の肌は、チクチクジャリジャリと荒らされ、私のホッペからアゴににかけて、ニキビともなんともつかないヒリヒリするものが出来てしまったのだ。それだけスポンジを詰めたにしても、首の方は前と同じくガクガクするのであった。あーショック!


ケンジ1972年昭和47年11月16日(木)

今日は格闘がなかったため、だいぶ楽をした。しかしながら二時間水に浸かっているというみるからに冷えて来そうな事態に直面して来たのだ。でも今日は陽気が良く、ポカポカとあったかだったのでその点は楽だった。

しかし二時間怪獣に入って水の中に膝まで浸かっていると、かなり足もふやけてくる。腰もちょっと冷えたのだろうか、心持ち痛さを感じた。

けれどもこれで大部分私の出番は撮り終わったので一安心である。思えばかなりしんどい一週間であった。私もだいぶ疲れたでェー!

今日は早く寝なくては。明日はまたすぐ道場で稽古だということだし。よく寝て疲れをとって稽古にのぞみ、みっちりファイトしなければ。とにかくよかったよかった。

『あー痛し、あすはカラッと、またケイコ』

ヘタな句だねェー!ダァッハッハッハッハッーアア!


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