NO32/ストリップショー

ケンジ1972年昭和47年1月23日(日)

今日は私にとって19回目の誕生日である。その誕生日を、船橋ヘルスセンターでの「村田英雄ショー」公演の仕事中に、いつもと変わりなく昨日と同じように一日過ごした。

もっとも、生まれてこの方誕生日の祝いなんてしたこともないし、されたこともないので、今更どうこう言うものではないが、やはり現在日本の平均家庭環境と照らし合わせてみて、テレビのホームドラマなどのパーティー風景なんやかやの場面を思い出すにつけ、何とはなしに寂しいような空しいような悲壮感にかられる。何か、私の歴史の一ページを記し忘れた、そして後になって残念に思う、そういった思いなのである。

まぁーとにかく今日もまたこの世に存在し続けていたということだけで結構デス。プン!

何も改まって誕生日の祝いなんて柄でもねぇー!


ケンジ1972年昭和47年1月27日(木)

今夜は約一ヶ月ぶりに我が家のコタツでくつろいでこの日記を書いている。思えばいろいろ勉強になった一ヶ月であった。

さて、一昨日昨日と日記を書かなかったのは、一昨日は三組しか布団の用意がない楽屋に五人も泊まり、カードをやったり、夜遅くお使いに行ったりしていて、とても日記を書く雰囲気ではなかったのだ。そして昨夜は、これが問題、昨日26日で村田英雄公演も無事千秋楽で、楽屋の掃除をし、一ヶ月間寝泊まりした、鏡のたくさんある楽屋にも、ちょっぴり寂しげな未練を残し、楽屋事務所の人たちにも別れのあいさつを告げ、最後まで腐れ縁とでもいうか、いろいろ良いことも悪いことも教わったアソウさんともう一人、衣装係の人と三人で楽屋を一緒に出た。そして京成線大神宮下駅から西船橋近くの京成葛飾という駅まで京成電車で行き、西船駅に着いた。そこで、その衣装係の人が、「ここは『ストリップ』で有名なところだから、いっちょ、見て行こうぜ」と言い出し、その方面の大好きなアソウさんはすぐOKし、私もつきあうことになった。さて、もちろん私はストリップショーなんてェーのは生まれてこの方見たことも聞いたこともない。しかし一応後学のためにと見ることにした。そこは西船駅から歩いて10分ぐらいのところにある。OS劇場というところで入場料1500円が、行く途中で「招待券を1000円で買わないか」という男がいて、結局1000円で入れることになった。そして、ついに見た。

私が予想していたよりももっと露骨にいさぎよく、「ハーイどうぞォー」と言ってま、、(ピーーー)見せるのだ!、、、(ピーー)

十人十、、、(ピーーーーーー)

しかし、ああいう(ピー)はもろに(ピー)られると、あまり快い(ピー)ではない(ピー)であるなぁー!まぁーいい勉強になった。


ヒロト2022年令和4年3月14日(月)

またかぶったケンジ。俺の初ストリップ!

俺も19の夏、たまり場になっている地元の喫茶店のマスター、ぽんちゃん(我が名著、「昭和ブルー高校編」で登場するポンちゃんのモデル)に、「ヒロちゃん、海行こう」と誘われて、ぽんちゃんの彼女とその友達の4人で西伊豆に出かけたんだ。雲見という小さなきれいな海岸の近くの民宿に泊まった。

そしてその夜、ぽんちゃんと俺は、たまたまその民宿に来ていた別グループの女子大生たちと、一緒に来た彼女たちそっちのけで、ガンガン盛り上がってしまったのよ。

酔っぱらってよくわからないまま寝たらしい。

翌朝起きると、一緒に来た彼女たちはもぬけの殻、怒って帰っちゃったみたい。つくづく、ぽんちゃんも俺もいい加減な男だと思う。ごめんなさい。

とは言っても、今日という日は二度とないのだから楽しまなくちゃ。謝るのは帰ってからにしようってぽんちゃんが言うので、今日は堂ヶ島に行ってみようということになった。

堂ヶ島に着いて、とりあえず温泉街をぶらついていると、それはあった。実は細かいところはよく覚えてないけど、記憶を繋ぎます。

それは劇場とは名ばかり、まさにストリップ小屋、狭い入り口の横に小さな窓口があり、おばさんがこっちこっちと手招きしてる。ぽんちゃんもせっかくだから見ていこうかって言う。せっかくって言ったって2000円て書いてあるよ。見たことないんだろ、これも勉強だ、おごってあげるから入ろうってぽんちゃんが言う。そこまで言うんなら、とチケット代を払ってもらって中に入った。

座席はなく、平面に座布団が無造作に置いてある。先客が5、6人いる。ちょっと高くなっている舞台らしきところのそばに固まっている。自分たちは真ん中あたりに陣取った。

ど演歌が流れている。そこへ、確か入り口でチケットを売っていたおばさんが客席に現れて、「ハイハイ、チップチップ、ひとり千円千円、払わないと見せないよ」って、客のひとりひとりのそばに行って手のひらを出している。みんな、仕方なさそうに千円札をおばさんの手のひらに乗せてるので、ぽんちゃんも仕方なく、千円札 2枚を渡した。これで、

ひとり3000円?!

いよいよ始まるらしい。客席が暗くなった。ど演歌の音量が上がった。暗かった舞台に、赤やら緑やら黄色やらの明かりが灯る。

中央にスボットライトが当たると、そこに、

ネグリジェみたいな衣装を着けた踊り子さんが、片膝立ててうつむいて座っている。

音楽がテンポのある曲に変わった。

踊り子が顔を上げた。



おばさんだ!あのおばさんだ!チケット売ってたあのおばさんだ!2000円払ったのに、客席で千円出さないと見せないよって千円札むしり取っていったあのおばさんだ!!!!

50近い?!!!!!!!!

あと2、3人の踊り子さんが出てきたかもしれないけど、よく覚えていない。

もちろん見たよ。見たと思うよ。きっとトラウマになったんだと思う。俺はそれ以降、風俗なるところに行ったことがない。行く気にならない。本当だよ。これこそ3000円の授業料の反面教師なのかなぁ。おごりだったけど、、、

それにしても、同じ頃だよ、西船1000円、

西伊豆3000円、どうなってんの?!

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