NO27/さぁ剣友会

ケンジ1971年昭和46年12月22日(水)

さぁーさぁーさぁーさぁーさぁーさぁー。

いよいよ私の決断の時が迫って来たようだ。というのは、今日大内剣友会の桜庭道場へケイコに行って言われたのだが、「どうだ、大内剣友会でずっと仕事をする気はないか、「ひまわり」でセリフのケイコばかりやっていても見通し暗かろう」と大内先生が言うのだ。それに「大内剣友会では来年からいろいろケイコや練習を盛んにやるから決してマイナスになるようなことはない」と言うのだ。普通の人なら二つ返事で「じゃーやります」と言うところだろうが、私はそこいらのドサ回り志望ではなく、一世をフウビするような大スター志望なのである。少なくともテレビドラマに主役の一つや二つ出れるぐらいになりたいのだ。そんな訳であるから考えちゃうのである。その大スターになるにはどちらの道が有利か確実か、それは決して近道を選ぼうというのではない、より実力が付き、やりがいのあるケイコなり練習なりをしてくれる方を選びたいのだ。そう考えてくるとなかなか難しい、「ひまわり」だって、これから研究科の試験を受けてその方面にうまく進み、舞台で劇などをやるのだったら有利だ。それに見通しだってまんざら暗くない。しかしそこでまた考える、日本人一億人の中には私と同じくらいの芝居の素質を持った人間は多々いるだろう。また私より恵まれた素質を持っている人たちもたんといるだろう。そして良い素質を持っていて、日の目を見ずにいる人の方が多いことも確かだ。となれば、私はどっちかというとテレビやタレントなどとして活躍したいのだから、いくらか大内剣友会の方に分があるように思う。

まぁーまだまだ考える余地はあるだろうが。

ここでは大内剣友会としておこう。


ヒロト2022年令和4年3月7日(月)

なんか嬉しいよね、人生動き出した感じがするよね。

俺も、俳優をめざし、曲がりなりに少しお金をもらってきた身として、30年間やってわかったことがある。

俳優、タレントはあくまでひとつの駒なんだよね。だから、駒として使ってくれる人、自分を活かしてくれる作品に出会えるか否か、それが圧倒的に重要なんだよね。そして出会った時に認められるように、如何に自分を鍛え、準備しておけるか、これに尽きると思うんだ。

そしてまた、いくら準備していても出会いがない場合もあるという、厳しい世界なんだよね。人はそれを運と呼ぶ。

どっちかを選ぶっていうのも、本当に難しいよね。でも選んだらそれが人生、もしあっちの方を選んでいたら、なんていうのは止めといた方がいいと思う。後悔ほどネガティブなことはないからね。ポジティブに行かなくちゃね‼️

もし駒を使う立場になりたい!と思ったら、作家や演出家やプロデューサーなんかだよね。それはまた、違うこころざしになるのかも知れないね。


ケンジ1971年昭和46年12月26日(日)

今日は11時半頃から大内剣友会へケイコに行った。いつもの桜庭道場へ行くと、またずいぶんと靴が並んでいるのだ。それにヤケに小さな子供用みたいな靴もあるのだ。ドアを開けて稽古場を覗いて見れば案の定、なんか見たことねーよーなのが四、五人固まって座っているのだ。もちろん剣友会の連中も二、三人すでにおり、そいつらは着替えて、ちゃんと木刀を振り回しているのだ。ところが、固まって座っている連中は着替える様子もなく、ただ見物人のように座っているのだ。いやむしろずいぶんデッカイツラして見ているといった方が妥当だろう。そのうちにみんなが集まり、先輩も来られて本格的に練習が始まった。しかしまだその連中はズーズーしいと言おうか、ふてぶてしいと言おうか、とにかくでっけーつらして見ているのだ。とくにその中のもういい加減の年のオッサンなどは、ひとり抜きんじてでっかいツラしているのだ。その顔のスケベッタラシイことといったら、もうなんとも言えず吐き気をもよおすような、私の大嫌いなタイプ。しかしそれがオドロキ、なんと後で聞いた話によると大内剣友会がいつも世話になっているマネージャーだとかいうではないか。マネージャーなんてーなーイヤな顔つきしてるネェー、今日しみじみ思った。尚、あとの三、四人はそのマネージャーの身内の者たちらしい。


ヒロト2022年令和4年3月8日(火)

さぁ、そのマネージャーさんが仕事を取ってきてくれるぞ。

この後の日記も楽しみだ!


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