NO26/ケンジ初仕事ヒーローショー

ヒロト2022年令和4年3月5日(土)

ロシアのウクライナ侵攻、

激しさの度を増している。許せない!

戦争反対の集会があれば参加したい。

とはいえ、密になるのは今はまだまずい。

今日、また戦争反対のツィートをしたよ。


ケンジ1971年昭和46年11月27日(土)

カーイテキー、今夜は大阪の『ホテル南海』というホテルの、私にとっては今まで泊まったこともない豪華な一室で、ベッドの上に足を伸ばしてリラックスしながらこの日記を書いている。なんと言ってもこの部屋はすごい。シャワー付き西洋風呂、洋式便所、フカフカのベッド、テレビ、電話etc.とにかく私にとってはまったく驚の一字としか言いようがないのだ。この部屋は二人用で、タカダ君という私の「ひまわり」の先輩と一緒なのだ。私のすぐ横の窓からは、大阪高島屋のネオン文字がよく見える。ちょっと目を移すと大阪の夜景が、ちょっぴりと見える。ここは九階なのである。そこで、何故私が急にそんな大阪のホテルなどにいるのかであるが、実は昨日大内剣友会から電話があり、すぐ「鷺ノ宮駅」まで来てくれというのである。大内剣友会というのは、擬斗の大内先生がやっているところで、以前仕事をやってみないかと電話番号を聞かれたことがあったのだ。

私はさっそく行った。そこは同業の大野剣友会の事務所であった。そこで、さっそくだけど、明日名古屋へ行ってくれ、と突然言われたのだ。これにはさすがの私もドキッとさせられた。でも、なーにこれも経験だ、どこへでも行ってやろうじゃないか、とすぐ覚悟を決めた。大内先生の話によると、土曜日の午後練習で日曜日本番だというので、まさか名古屋に行くなどとは夢にも及ばぬところであったからだ。

さていよいよ土曜朝9時東京駅、新幹線のりば16番線ホームで三人が落ち合う。ところがそこで、はたまた驚き、名古屋のはずが、今度は沼津、大阪ということになったのだ。しかしそこは、もう名古屋も沼津も大阪も大差ねーやと思い、すんなり受け入れられた。そして沼津、イチイというデパートでの仕事だ。その時はもはや私ら三人ではなく、大阪のICAとかいうプロダクションの関係者四、五人と一緒であった。そこで私らの仕事というのは、今人気絶頂と言われている仮面ライダーに出て来る怪獣のぬいぐるみを身にまとい、そこのデパートの宣伝役としてサイン会をやったり、パレードをやったりするのであった。ICAというのがその企画部だった。大野剣友会というのは、その仮面ライダーの立ち回りに出演している演技者たちであった。なんでも大野剣友会は今、仮面ライダーの企画で非常に多忙なのだという。私ら三人のメンバーは、「ひまわり」のタカダともう一人はその大野剣友会の顔役で、セジマさんとかいう人であった。このセジマという人は、もう4、5年芸能界に首を突っ込んでいるとかで、高倉健、鶴田浩二らのヤクザ映画にもちょくちょく出演するということであった。よって行き帰りの新幹線の中では、いろいろためになる教訓的お話をしてくれた。とにかく今度のこの仕事の旅は大いにプラスであった。その瀬島さんという人とも親しくなれたし、今度またこんな仕事があったら頼むとか言われたし、まったくついて来た。しかしここで、オゴリノボセテハならない。あくまでも冷静でなければならない。


ヒロト2022年令和4年3月6日(日)

やったやった、俺もそのバイトやったことあるよ。

25、6歳の頃所属していた、全国の学校を廻って演劇を上演する小さな劇団で、夏休みで活動がない時に劇団員の一人が見つけて来たバイト。

劇団のワゴン車に、ウルトラマンと怪獣の着ぐるみを積んで、主に東海地方の長崎屋を廻った。屋上でのショー、サイン会。

考えてもみてよ。夏休み、屋上、ゴムでできた着ぐるみ、もう暑いなんてもんじやない。

サウナ着てるようなもんよ。痩せたい人にはお勧めです。でも熱中症には気をつけてねって言っても、この頃はそんな言葉なかったな。汗もにも気を付けなきゃいけない。着ぐるみに入る時には、海パンとTシャツ、でもその前に、素っ裸になって全身にベビーパウダーをくまなくまぶす。特に、胸元と脇の下、忘れてはいけないのはお股、入念に叩く。どうせ汗で流れちゃうから気休めかもしれないけどね。

でも、ちゃんと控え室がある時はいいけど、かなりの確率で、屋外で衝立だけの時がある。そんな時は下が脱げないので、手を突っ込んでまぶす。

お決まりの怪獣やっつけショー、サイン会、

それに、ただポーズをとって立っていなくちゃいけない時がある。この時が危険なんだよね。悪ガキが、キックしてきたり、後ろに回って、

「あっ、ほら、ファスナーがあるよ!あそこから人が入ってるんだよ!」誰彼なく教えてる。ファスナーに飛びついておろそうともする。バーカ、そんなこと誰でも知ってんだよってアタマひっぱたいてやろうかと思った。

でもね、こんな子もいたんだ。2、3歳かなぁ、男の子。ウルトラマンになってる俺の太ももに抱きついて、「ウルトラマン、だ~いすき」って離れないんだ。もう可愛くて、思わずアタマ撫でちゃったよ。

それにこんなこともあった。この着ぐるみたちは、使い回されていてゴムにひび割れがあったり、かなりボロくなっているんだ。俺がウルトラマンに入ってアクションしている時、左足にぐっと力を入れて踏ん張った途端、ウルトラマンの左太ももの外側が縦に裂けちゃった。海パンも毛の生えたナマ足も丸見え状態、咄嗟に進行役の劇団員が俺の左側にくっつき、そのまま二人並んでカニ歩きしながら笑顔で手を振り、袖にはけた。ウルトラマンも中で笑ってたんだけどわかんねえだろうなぁ。そして、急いで空いていたウルトラマンレオに着替えて戻った。

後で、ウルトラマンの太ももは、内側からガムテープで補修したよ。

ケンジも汗もと裂けには気をつけて。



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