NO19/ひまわりの授業と近所の自然

ケンジ1971年昭和46年8月10日(火)

今日は快晴の青空の下を、ハツラツと初の出陣をした。向こうに着くまで一時間40分ぐらいだった。まー短いもんだーなー。

ところで、そこへ着いて15分ぐらい経つと、いよいよ先生が出て来た。来るよりも早く「ダメー、タランタラン席を立つなー」「さっさと立てー」「椅子をきちんと並べろー」「黒板を前にもって来ーい」等々、さっそく雷来襲である。こちとら、とっぱじめから出し抜けに怒鳴られたもんだから、それこそ目ん玉が飛び出んばかり。まったくオッカナカッター。それからも、もー大変。返事をする時になって、どういうわけか私の出席番号が一番なもんだから、さっそくハイ、ときれいに返事をした。ところがどっこい、きれいじゃ聞こえぬとまたドナラレタ。雷には雷をということらしい。私もおもいっきり半分怒鳴るような調子で返事をした。まーどうやらその返事でかろうじてOKだったらしい。次のやつやその次その次なども、何回も何回も返事をさせられて、いい加減あきれけーってたようだ。まったくすごい雷だった。まーこういうのも刺激になっていいだろう。



ヒロト2022年令和4年2月25日(金)

先生、つかみはOKだね。

俺が初めて高円寺にあった俳優学校に行ったのは、22の時だった。雰囲気はそっちと違って、のんびりとした優しい感じだったな。ほんの見学だけのつもりだったんだけど、準備運動の時一緒にやってみるって言われて、生徒はみんなトレーニングウエア着てる中で、この日に限ってスーツの俺は、ネクタイだけ外して参加した。

変わった体操で、首を水平に左右に動かしたり、ぐるっと首を水平に回すっていうのがあって、生徒たちはあまり上手く出来る人がいないところで、俺はクルッ、クルクルって簡単にやって見せちゃったんだ。

すごいねキミ、ってみんなに言われて、ちょっといい気分になってたね。後でそこに入ることになるんだけど、首が回ったせいかもしれないね。


ケンジ1971年昭和46年8月13日(金)

さて、今日は金曜日なので、「ひまわり」へ出かけた。12時からの授業が始まる。

なんとまーその席で私は2回も当たってしまった。はじめはパントマイム、お次はセリフ読みというように、13人いるところで二度も当たったのは私ひとりである。他の半分以上が一度も当たらないのである。これはいったい何を意味するのか。そしてその授業が2時に終わった。

私はこの次の6時から始まる授業までだいぶあるので、恵比寿駅周辺をぶらぶらと歩き回った。迷ってしまって相当参ったが、何とかまた「ひまわり」に戻れ、6時からの授業を受けた。教本を借りられると思っていたところが、なんと70円で買うことになっていた。私は買いそびれてしまい、教本を持たずにその授業を受けた。隣の奴に見してもらいながら受ける授業はまったく気分が乗らなかった。何しろ、昼は13人しかいないのに、夜のその音楽の授業となるとざっと三、四十人いるのである。これだけでも私はまったくやる気を無くした。でも今度からはその教本を買い、面白くその授業を受けようと思う。


ヒロト2022年令和4年2月26日(土)

公務員生活は楽しかったよ。

仕事はそんなに難しくないし、体を使うわけではないから疲れないし、残業はほとんどないし、事務所は若い人が多かったのであまり気を使わなくてもいいし、野球チーム作って試合もしたし、北海道出身の先輩にスキーを教えてもらったし、飲み会もやったし、淡い恋愛もしたし、こう書くと、いいことづくめだね。

あのまま勤めていたら、今は定年退職していて、どこか郊外の一軒家に住み、家庭菜園なんかやったりして、悠々自適って感じかもしれない。安い時給で、長い通勤時間で、干物売ったりしていなくてもよかったかもね。

てもあの時、俺は心の中に物足りなさというか、満たされないものを感じていたんだ。

時間と、ある程度の収入もあるから、海、山、スポーツ、夜の町、それでも満たされない。同期の女の子が、東京経済大学略して東大の二部の入試を受けるというので俺もって。サークルにも入った。サッカー部。バンカラな感じが残っていて、OBは神様みたいだったけど、いざ酒飲むともうぐちゃぐちゃ、上も下もない。何か、昼間の大学の体育会ごっこをしているみたいで、それはそれで楽しかったよ。

それでもまだ満たされない俺は、ある運命的な再会をする。って話はまた今度するね。

ところで今日の出勤途中、楽しいことがあった。朝10時前に家を出て、いつもの道を散歩するように歩いていた。この辺りは、ジブリの「平成ぽんぽこ狸合戦」の舞台になった近くで、住宅地ながら結構自然が残っている。

雨水を調整する為に、大雨の時に一時的に水を溜める調整池が、住宅と林が隣接している場所があるんだ。そこにさしかかったら、双眼鏡を覗いてる小柄なオッサンがいた。俺は気さくに、「何かいますか?」って声をかけた。この池には、カワセミや白鷺、鴨などがよくいるんだよ。

振り向いたオッサンは日本人じゃなかった。ちょっと焦った俺は、「ジャ、ジャパニーズ、OK?」オッサンは「スコゥシ、デェモEnglishネ」ときたもんだ。「サムシング、グ、グ」

ちょっと言葉に詰まっている俺にオッサンは、右手を空に上げてぐるぐる回し、「オゥタカ、オゥタカ、、」もういなかったけど、すごいね、大鷹がいたんだ。

オッサンは今度は両手をいっぱいに拡げて、

「good spot ネ」と言ってウィンクした。

俺はこの間の大雪の時に撮ったこの場所の写真を見せて、「ス、ス、スノー」

オッサン、「ユゥキィネェ、beautiful」

楽しい国際交流でしたよ。

今日はまだまだあるよ。オッサンとgoodbyeして、今度は、上流にある大学の構内に涌き出る水を源流にした小川のほとりに着いたと思いねぇ!そこでなにやら、川を覗き込む男女三人!今度は明らかに日本人だ!

俺も一緒に覗きこんだ!そこには、なんと!

テラテラと真っ黒く光った川鵜が水に潜り込んでいて、なんとそのすぐそばで、羽根はコバルトブルー、腹は山吹色の川蝉が水にダイブしている。同時に狩りをしているのだ。それぞれは何回も見たことはあるけど、コラボは初めて見た!!

若いオネェチャンが俺に、「あの黒い鳥は何ですか?」と聞いてきたので、俺は「かわうという鳥だよ、ああやって潜って、魚を採っているんですよ。」と、優しく教えてあげました。ちゃんちゃん。

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