NO8/グループライン

ヒロト2022年令和4年2月8日(火)

今日はお先に失礼するよ。

冬季オリンピック北京大会が始まりました。

今朝再放送だけど、フィギュアスケート団体戦、鍵山選手の演技、ノーカット、すごいものを見た気がする。

演技開始、少年の顔をした鍵山君がいる。ちょっと危なっかしい4回転ジャンプがあるも、すぐ持ち直し、次々とジャンプを決めていく。一つ二つとジャンプする毎に少年の顔だった鍵山君の顔つきが変わっていくように感じたのは、自分だけではないと思う。

演技は続く。最初の方では意識しなかったけど、何か手の使い方がのびのびして来たなと思っていたら、そのうちに、その手、指先から、エネルギーみたいなものが放出されているように見えてきた。

もう素晴らしいというしかない演技もラストを迎える。鍵山君の顔は、大人の顔になっていた。

わずか数分で、こんなにも人は変われるんだ。すごいものを見た。


そして今、男子ショートプログラム、鍵山優真君、さらに成長していました。

自己ベスト108.12

見ている人を笑顔にする、さらにさらに素晴らしい演技でした!



ケンジ1970年昭和45年10月2日(金)

昨日、タクシーなんぞに乗って帰ったおかげで、百五十円も取られた三人の内の一人として、今日、ヨシブーさんに五十円払った。まったく、損したように思えてしょうがない。雨が降りそうだったので、ブーさんら二人とバスを待っていたのだが、なかなか来ないので電車に遅れると困ると思い、タクシーで駅まで行ったのである。まったくバスの野郎めー、ちっとも来ねーでー、バカヤロー!

さて、今日はまた、ブーさんに貸した10円のことを思い出した。それは伊勢丹の屋上で、ゲームをやった時に貸した金だ。しかし10円ぐらいの金、どうも言い出しにくい。別に言ってもいいのだが、親しい仲で果たしてそんな前に貸した10円に何の不便が起ころうか、何のプラスになるだろうか。

私も、他人から金を借りると何となく返したくなくなる。親しい友達ならなおさらそうだ。まぁーいつもいるんだから少しくれーいいだろう、ということになる。私がそうなのだから、ブーさんだってきっとそう思うことがあるにきまっている。思うに、片側通行ではなく、親しく付き合っている同士なら、多少の金の問題は考えるに足りぬ問題であろうと。また私などは、いつもタケにおごられっぱなしなのであるから。親しい中に生まれる気楽さ、人間である以上誰にでもあることだと思う。


ケンジ1970年昭和45年10月30日(金)

今日は、おととい私がパン当番の時、ヤスジマの牛乳代19円を立て替えておいたので、今日のパン当番であるヤスジマにコーヒー牛乳を頼んで、それで帳消しにしようとした。

しかし、私は東京軒へ食べに行ったので、教室に戻って来たのが一時十分、五時間目の授業の始まる直前であった。そこでヤスジマが私の牛乳を飲んでしまっていた。私はだいぶ腹が立った。同時に、やはりヤスジマも金を追う俗人だったのか、といささか失望した。これは私の、例の神経過敏からくる考え過ぎかもしれないが、やはり見損なった感が強い。まぁ一応明日返すとかなんとか言ってたが、明日は土曜日、どうなることか。


ケンジ1970年昭和45年11月 2日(月)

今日は自らをたしなめなければならない。

というのは、今日ヤスジマにコーヒー牛乳を注文してもらい、貸しを返してもらったのである。まぁそこまではいい、しかしそのあとがいけない。私は何といういやらしいやつなのかと、自分でもほとほと情けなくなった次第である。先日はヤスジマが牛乳代を出し惜しんだなどとほざいておいて、実は私の方がむしろ、金の亡者だったのである。

それを棚に上げて他人をけなすとは、私ももう終わりである。まったく悪いことをした。

それにその牛乳代を出してもらってからも、しばらくは「ヤスジマの野郎しぶしぶ出しやがったなー」などと心の隅では思っていた感があるのである。

しかし、それも昼休みにヤスジマがいつもの仙人のようにゆったりとした口調で話しかけてきた時、サッパリと消え去った。

まったく私はしょうがないやつだ。にゃろめー。



ヒロト2022年令和4年2月8日(火)

ケンジ、セコくてちっちゃい男だな!

なんて思わないよ。これは日記。心のつぶやき。思っても、口に出して誰かに言ったわけではない。言った時点でちっちゃい男になるけど、決してそうではない。

誰にでも、人に言えないようなことを思ってしまう時はある。ケンジはそれを記してくれた。

そして素晴らしいのは、日記を俺に託したように、もともと読まれることを想定して書いているよね。だから、読んだら楽しめるようになっている。

ケンジが余命4ヵ月と聞いた時、何と言葉を掛けていいのかわからなかった。何を言っても空しさを感じる。だったらその4ヵ月、ただその時を待つのではなく、ケンジにできることはないのか。

そこで俺は、2Cクラスラインでケンジに、自分史みたいなものを書いてくれないか?

先生、執筆依頼、断らないで!

ってラインしたよね。

そしたらケンジは

この年になって執筆依頼受けるなんてうれしいね。実は俺は小説家になりたかったんだ。

高校の時、小説家になりたいって言ったら、ヨシブーが、だったら日記をつけなきゃ駄目だ、有名な小説家はみんな、日記を書いてるって言われて日記をずっと書き続けているんだ。それが俺の唯一の自慢だよ。って。

それが、この日記なんだね。

ケンジは、自分の経験を面白おかしく小作品にして、ラインに流してくれた。グループのみんなは本当に楽しんで、また次を待っていたんだよ。




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