談笑 ロングver.

夏目夜半

談笑

 「そう真っ昼間から大酒を飲むんじゃない。昼から酒に酔うなど、みっともなくて見ておれぬわ」

 昼の明るい景色とは似つかわしくない、静脈血のような漆黒の表情を浮かべるブドウ酒のグラスを片手に持つ、これまた昼という時間帯に似合わない酩酊状態の男に、友人であるもう一人の男が呆れたように言う。対し男は答えた。

 「ならば、全てを夜にしてしまえばよい。すればこの恨めしいほど煌々とする日の光を、ニュクスが——— もとい、夜闇が美しく、この“みっともない”姿ごと覆い隠してくれるわ。その方がお前も好都合ではないか?なあ、ウーラノス」

 からかうように、にやりと意地の悪い笑みを浮かべる。酔いのせいで、呂律はうまく回っていない。

 「何を言うのだ。馬鹿げたことを。出来るわけがないだろう。ニュクスがどれだけ尽力しようとも、昼というのはやって来るものだ。見よ、辺りはこんなにも照り輝いているではないか」

 体中に回る酔いに任せ放たれた戯言を前に、少々動揺した様子の男は、聖人を気取るように余所行きの口調で返した。すると相手の男は、ゆっくりと顔を上げ、今度ははっきりとした口調で言った。

 「ほう。ならば、ヘーメラーを殺せ」

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談笑 ロングver. 夏目夜半 @hanabi0922

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