王都へ駆ける
その後ろに守るべき全てのものがある砦。その砦は敵の強襲によって燃え上がっていた。
「お前には、王都に向けて伝令に出てもらう。振り返ることなく、止まることなく走り続けろ」
「は!必ず援軍の共に帰ってきます」
砦を守る騎士の中で一番若い少年はまるで自分がこの瞬間のために生まれてきたみたいに瞳を燃やす。
「いいか。この黒い旗をはっきり分かる様に背負うんだぞ。そうすれば援軍が来てくれる」
少年はその背に黒い旗を掲げ馬に乗り込んだ。
「王都に着いたらこの手紙を届けろ」
「はい!行ってきます」
「よし、行け」
少年は砦を旅立った。王都まで5日。
「行きましたか。あのバカがちゃんと授業を聞いてなくてよかったですね。援軍を呼ぶ時は黒じゃなくて赤だっつうの」
「あぁ。さぁお前ら青の風が吹くその時まで戦い続けるぞ!」
少年は走り続けた。途中で乗っている馬が足を折って走れなくなった。
浅く苦しそうに息をする馬の首に少年は短剣をたてた。その命が初めて奪った命になった。
団長の言葉を思い出す。
「途中で乗ってる馬が走れなくなる事がある。そのために馬は二頭連れて行け」
少年は繋いであった二頭目の馬に跨り再び王都へ駆ける。
そして、王都にたどり着いた。守るべきものではあるが、砦で死闘が続いているのにこの平和に少し腹がった。人で溢れるバザールに突っ込む。
「帝国による大攻勢を確認!現在、戦闘を継続中!直ちに援軍を!」
「……何を言っている?背負っているのは黒じゃないか?何日前だ?」
「5日前です。あとこの手紙を届ける様にと」
「残念だが砦の騎士たちは今頃全員、青い風に吹かれているはずだ。この手紙は命令書だ。お前には大陸を渡る脱出船に護衛として乗ってもらう」
「……え?じゃあみんなは?」
「なんて危ない。どこの騎士団?」
「姫さま、戦です。黒です。砦が陥落した様です」
青い花の咲く国 土蛇 尚 @tutihebi_nao
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