鎧だけでも冒険はできる

人間ではない種族しかいないVRMMOものというニッチな小説。
主人公からして鎧が独りでに動くリビングアーマーであり、エルフやスケルトンのオーソドックスな種族はもちろん、エレメンタルやオートマータ、果てはハーフスライム(半人半スライム)にトマトまで。
とにかく人間以外の存在だけで構成された良作だ。

ダークファンタジーな世界観のVRMMOを、ジョークを真に受けて厳しい制限がかけられたリビングアーマーで自身の分身を作成してしまったとあるプレイヤーが主人公。
初手から一般プレイヤーとは違う場所からスタートした上で謎のNPCに戦闘を吹っ掛けられたりしつつ、通常の手段では回復できないリビングアーマーを修理してくれる鍛冶屋と出会ったりと悪運をなんとか乗り越えていくのが魅力的。

ダンジョンの探索や仲間との出会い、手に汗握ったかと思えば対策によってサクサクと進む戦闘シーン、冒険の合間に挟まれる街や集落などでの日常や冒険の下準備。プレイヤー達によるゲーム外にある掲示板でのダベり。
VRMMOものにあってほしい場面が過不足なく描かれており、読んでいて飽きない。
特に色んなキャラクターとの会話シーンが面白く、一癖も二癖もあるキャラクターが沢山出てくる一方で、癖の少ない主人公に共感しながら読める為読んでいて疲れるということもない。

作者の力量により読んでいてひっかかる場面が少なく、スルスルと読めて満足感もある。
このレビューを書いている時点では2章までが投稿されており、とても楽しく読めた。
個人的にはやはり素直にキュートなオートマタのカノンちゃんが読んでいて好みだった。