第4話 噛み合わない男達
採用会議の朝
「先輩、おはようございます。水色のルージュの方はどうですか?」
「いやー、何とか完成して投稿してもらったよ。共通フォルダに格納されているから後で読んでみて。でもなあ、あの条件はやりすぎやろ。」
「条件って、何でしたっけ?」
「主人公の女友達3人を登場させるやつやん。連ドラならわかるけど、単発ドラマやからわざわざ出すのしんどいやろ。主演女優さんの事務所のバーターやからしゃーないねんけどなあ、そこが一番苦労されてたわ。でもいい作品になったよ。」
「そうっすね。後で読んでみます。」
(やば---------。この条件知らんかったなあ。どうしよう、今更コージさんに
変更お願いしても間に合わないし。けど、コージさんの作品はいつも書いてる
古いハードボイルド小説の女版なだけだからどっちにしても採用されないからいいか。とりあえず、水色のルージュの作品読んでみるか。)
(さすが、水色のルージュさん。最高‼ OLと同期入社の男性社員との話だけど、上品で情緒があっていいなあこの作品。特に男性社員が海外赴任が決まって、会社に出勤する最後の日の所が泣けるなあ。まあ、友達3人登場するところは無理あるけどなあ。でもこれでこっちに決まりだなあ。よかった、安心して会議に出れるなあ。)
採用会議
「それでは、みんな集まったところで早速、アメーバTVの単発ドラマ原作採用会議を始めます。すでに、各員から寸評をもらっていますので採用作発表と総評を星野シニアマネージャーにお願いします。」と事業部長から冒頭の説明があった。
「みなさん、評価と寸評ありがとうございます。また、今回ユーザーさんをサポートした夕木君と高橋君お疲れ様でした。」
「結果から言いますと、ほとんどの方が水色のルージュさんの『Departure旅立つ前に』評価されました。私も素晴らしい作品だと思います。ただ、、、」
「この作品は85点です。我々は100点とは言いませんが90点以上でなくてはなりません。一方、ウルトラコージさんの作品 『今宵はどうする?』は甘く見積もっても70点位です。、、、、、、でも、我々はこちらを選ぶべきです。」
会議室にいた20数名は思わずえーと驚いた。ただ秘書の小沢さんは無表情だった。
すかさず、シローが訊ねた。
「星野さん、『今宵はどうする?』の方なんですが、そもそも制作条件を満たしていない箇所がありますよ。まずは、主役は働く女性が条件なのですが、この物語の主役は女スナイパーですよ、しかも成功率が60%の為、報酬が1回2万円の格安でバイト感覚の子ですよ。たまたまターゲットの男人が好みで恋する話で、しかも女友達3人が登場しませんよ。いいんですか。」
「皆さん、考えてください。我々monogararyの運営スタッフの前にソニーグループの社員だということを。ソニーのモノづくりの精神を忘れてはいけません。私にも且つては後輩の相棒がいました。彼はラジカセのダブルデッキを発案した人です。最初、当時の技術者たちは私も含めて、カセットを2つつける意味がまったく分からなかった。しかし、ダビングや1つのカセットでカラオケを流し、歌っている所をもう一つのカセットで録音する、更に倍速ダビング等に展開し技術の発展に繋がっていった。この事業も同じです、普通の発想では我々は発展や進歩できないんです。だからなんです。」
「話がそれてしまって、申し訳ない。『今宵はどうする?』ですが1つ目の指摘、働く女性についてだが、まあ、一応仕事で安いけど報酬も貰っているのでこれはアリにしよう。2つ目の女友達3人の件だが、、、、」
「高橋君!」
「はい。」(やばい!)
「これに関してはいい仕事したね。あえてウルトラコージさんには細かい条件はつけず、書きたいように書かせたんだね。素晴らしい。」
会議室内拍手が巻き起こった。
「高橋君、但し女友達3人は必須条件だから申し訳ないがウルトラコージさんに加筆を頼んでくれないか。」
「星野マネージャー、すべて分かってたんですね。早速依頼してます。」
ユウトは、会議室を出て自席に向かった。
(いやー、危なかった。まさか星野さんの深読みというか勘違いと言うか。でも何か久しぶりに褒められたなあ。)
ユウトは高揚感を得ながら、自席に戻った。コージに電話を使用とスマホを取り出した時LINEにシロー先輩からメッセージが届いた。
《ユウト、女友達3人の件言い忘れただけやろ。(笑)》
(やっぱ、ばれてたーーーーーーーーーーー)
終
女スナイパーは派遣社員!シーズン・ゼロ ~すべてはここから始まった~ 夕哉圭シロー @yuyakeshirou
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