結 女神に申し上げます
「あの、女神様」
と声をかけると女神は見返してきた。ハシビロコウが動いた瞬間を目撃したような目つきだった。
決断できずにいるにもかかわらず、女神はいくつものお試し・サンプルを提示してくれた。ありがたいことではあるのだが、なお一層選択に迷うようになってしまったのはこのせいかもしれない。こういうクレームを吐くこともできた。女神は「さあ、そろそろお決めになって」とは決して言わなかった。それがなお一層プレッシャーだった。もしかしたら女神は分かっていてやっているのかもしれない。とはいえ、これ以上の重圧は本当に勘弁なのだ。そう。決めてしまえば楽になれる。こんな簡単なことを今更になってようやく思いついた。そのせいか、決断のために一つ女神に確認しておくことが浮かんで来た。返答次第で選択できる。
「女神様、どうしても選ばなければならないのでしょうか」
切羽詰まったような口調になってしまっても、女神は柔和だった。
「もちろんです。選ばなければならないのです」
小さくため息をついてから優しい口調を作った。
「それならば、女神様。あなたが私の妻になるのは金の転生ですか、それとも銀の転生ですか」
それを聞くと女神は嬌笑した。
女神に言うべきことはこの一つではない。だから、続けざまにこう言った。
「それならば、女神様。あなたを殺せるのは金の転生ですか、それとも銀の転生ですか」
決然とした答えを聞くと、女神はガチャポンのカプセルを見せた時よりもためらいがないほどに、嘲笑を含んだそれでいてこの上もなく愉快そうに高らかに笑った。
あなたが落ちるのは金の転生ですか、それとも銀の転生ですか 金子ふみよ @fmy-knk_03_21
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます