第9話 復讐の色

大きな目に整った前髪や綺麗すぎるフェイスライン、鼻も口も理想的で…どこもかしこも完璧な彼女にもまた、秘密はある。

 それは意外すぎるにもいじめを受けている事そして僕と復讐をすること。言葉では簡単に纏められるこの事柄はそう簡単にはいかない事で。でもそれは僕がこの人について行く以上なし得ないといけない事実で。

  

    そう、それは他でもない先輩の復讐内容。

「殺す」

 彼女は唐突に言葉にする。それは物理的か…社会的か。人生には言葉や言動の2種類が存在するそれはどれも唐突に始まり唐突に終わる、そんな簡単なことの繰り返し。だからそれも唯、復讐に色がついただけ…そう僕は考える。

「天野るるアイツをまずは殺す」

 先輩からは話は聞いていた天野るるという先輩。確かにコイツは僕も一番許せない。

「…わかりました。じゃあ策を講じましょうか」

 先輩はまずは経緯を話す。

「私はさ。自分だけがボロボロになろうがそれなりには我慢する。でもねアイツは私の友達を奪いそして傷つけ秘密という鎖で蓋をした」

 その友達は先輩が初めて趣味で繋がった八代美咲という先輩で

「…でも秋くんとの約束を守るまではバレるわけにもいかない」

「ですね…まずということは次の事も‥」

「それなんだけどさ…1人目殺したらもう君のお父さんに会いに行くよ」

 それはもうそれ以上は関わるなという事だ。

「えっと‥一旦って事ですか?」

「違うよ。もう私たちを繋ぐひみつはこれにて終了!ってこと」

 分かってはいた。人の復讐を手伝うなんて限度があるそれは踏み込んではいけない法という一線。彼女は踏み出し僕は一歩引く。でもそれに何の意味があるのだろうか。僕は胸の奥が苦しくなる。彼女が僕に何もしてあげれないように僕も彼女に何もしてやれない…それは家族でもなければ小さい頃からの友人でもなんでもないからで。でも…だからこそ…!この人に尽くしたいと僕は思った。僕は願うより先に手が飛び出してしまう。先輩の手を握りようやく気付く…とても華奢なその手は小さく震えていてそれはただの1人の女の子で

「先輩…僕。先輩の為なら捕まったっていい。先輩がくれたこの命で僕が先輩の人生をつなぎたい」

 僕は強く目を見る。その目の前に映る瞳は潤んでいた。

「駄目…!先輩の命無駄にしないでよ!!!」

 先輩は席を立ち怒鳴った。それは本心なのか偽りなのか…そんなの今の僕にはどうでもよくて僕も席をたち見下ろす様に先輩を見る…先輩がまた口を開こうとする…それは多分否定の言葉で僕はそれに蓋をするように先輩の唇に僕の唇を重ねる半ば強引に。先輩の頬は真っ赤になっていて熱がこっちにまで伝わってくる。先輩の匂いで頭が真っ白になりまるで脳が溶けたように…すると先輩の舌が僕の舌に優しく誘う様に入ってくる僕はそれに不器用ながら舌で返す。お互いが絡み合いいつのまにか先輩を押し倒す様な形になっていて…バシンっっっっ!!!

 


 一瞬何が起きたか分からなかった…でも目の前にいる先輩の顔を見るとよく分かった。少し赤みが残った頬に目には大粒の涙を浮かべる先輩。

「最低…!もう帰る…!」

 そこでようやく自分がしてしまった事がどれだけの事なのかに気づいた。僕はそれから走る先輩を止められず…ただただ図書室に1人

「何やってんだろ」

 状況が全く掴めないでいた。何故あんなことを?

 離れて行く先輩への独占欲なのか…それとも自分が否定されそれに向きになってしまっただけなのか…。

 僕はそれが分からないまま家に帰る帰路‥夕日も沈み暗くなったその空は今の僕によく似ていた。

 何も考えられないまま家に着いた、そんな自分はとても抜け殻みたいでただ生きているだけの…まるで今の父さんみたいで。明かりをつけると父は家にいなかった…またどっかで酔い潰れているのか、夜には帰るだろう。とりあえず夜ご飯を作ることにした簡単な野菜炒めとご飯、2人分を作り自分の分を食べ風呂に入る。夜11時、まだ父さんは帰ってきていない…今までも何度かあったがタイミングがタイミングなだけあって心配になる。

「また…1人か」

 すると携帯が鳴った、そこには 八代美咲…先輩のことをよく知る人物で、朝連絡先を交換した先輩だ。そこにあったメッセージを開く。そこには…

『今…美月のことで電話できそうかな?』

 その文字に投げ出しそうになって初めて僕はこんなにも落ちぶれているんだなと自覚した。

『はい。』

 そして数分電話がかかってくる。

「はい。もしもし」

「ごめんね‥こんな遅くに」

「いえいえ暇してたとこなんで」

「うんありがと…まずはその…美月は元気そう?」

 その言葉に僕は素直に答えた。

「今は‥何考えてるか分からないです‥」

「…まぁそうだよね。このまま探ってても進まなそうだからさ?私と交換条件しない?」

「交換…条件‥?ですか」

「そうまず私からのお願い。私あの子に許してもらおうなんて…甘いことは言えない…でもせめてもの礼儀として謝りたいの」

「やっぱりあんたもやったんですね」

「うん。だから…

「アンタが!先輩を苦しめるから‥こんなことになってんのに…。謝る?今更そんなことで先輩は…先輩は…」

 僕は泣いていた。

「先輩はもう人を殺したいくらいに追い詰められているのに…そんなのよっぽど!!!!!僕より追い込まれている!!!それを今まで1人で抱えて‥そんなの死んだ方がマシだよ…」

 死んだ方がマシ、そんなのは僕だから言えることでそれを選ばなかった先輩を傷つけてしまった自分を許せなくて

「水城くん…。ごめんね…ごめんね‥ごめんなさい……!」

 先輩も泣いていた。それから2人で泣き12時を過ぎた頃。

「先輩。じゃあ先程言ったことで交換呑んでくれますね?」

「うん。こちらこそ…。あ!それと最後に」

「なんです?」

「ルカも‥じゃなくて今日朝一緒にいた子覚えてる?」

「はい‥少し背の小さな」

「そう‥!」

「その子がどうかしたんです?」

「その子もよかったら‥?」

「あ、はい。じゃあ明日」


 そして電話を終わり八代先輩との間で決まった交換条件は明日実行することになった。僕は最後に先輩のトークを開く。そして…

『先輩今日はごめんなさい。明日の放課後よかったらもう一度図書室に来て欲しいです…お願いします』

 先輩はいつもだったらすぐ返信が来るが流石に来なかった。

「先輩。待っててください」

 僕は強く願う明日が上手くいきますように…そんな願いはまさかの結末を迎えることは今の僕達は想像もできなかった…。




 

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二人のひみつごと 美波 @matchaore

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