子供ダンジョン

@kuruugingu

第1話

「あっはははは!何それカル!ちょー面白いんですけど!」

「うっせー!笑ってんじゃねぇぞレイナ!」

「いやいや、だって笑うしかないでしょこんなの!」


 時刻は昼間。場所はダンジョンの入り口。

 そこでレイナは腹を抱えて目の前の青年、カルに対し盛大な笑い声を上げていた。

 その様子を見たカルはレイナに抗議の声を上げるが、どうにも止む気配がない。


「だって、何をどうしたら、布団なんかに巻かれた状態でダンジョンから戻ってくるのよ!?」

「うぐっ」


 レイナの視線が向く先には、何をどうしたらそうなるのか布団にぐるぐる巻きにされて横たわるカルの無惨な姿が。

 その様子を指摘されたカルは居心地悪そうに顔を歪め、レイナの視線から顔を逸らして逃げる。しかし顔は逸らせても布団でぐるぐる巻きにされてるせいで耳までは逃げれなかったようで、カルの耳には未だレイナの笑い声がやかましく響いていた。


「あ-笑った笑った。で、どうだった?あのダンジョンに一人で挑んでみた感想は?一人でもいけそう?」

「ん-……キツそうだな。トラップは言わずもがなだが、ダンジョンの中もかなり入り組んでる厄介なタイプだし、これを攻略するには俺だけじゃ難しそうだ」

「だよねー。入って3分も経ってないのにもう戻ってきたもんねー」

「仕方がねぇだろ。横からいきなり布団が猛スピードでぶつかってくるなんてトラップ、初見でどうやって対処しろって言うんだよ。殺気がないから察知もできんし」


 はぁ、とカルはため息をついて自身を巻いていた布団から抜け出ると、眼前に鎮座するダンジョンの入り口へと目を向ける。

 煌びやかな装飾の施された無駄に豪華なその入り口をじっと見つめると、先まで浮かべていた暗い表情を狂暴な、それでいて楽しそうな笑みへと変えた。


「まぁけど、こうでなきゃ攻略しに来た甲斐がないってもんだよな。噂通り、面白そうなダンジョンじゃんか」

「でしょ?わざわざ情報集めてきた私に感謝の一言も添えて良いのよ?」

「へいへい」

「むっ」


「“子供ダンジョン''か……名前に似合わず強かじゃねぇの。俄然やる気が出てきたぜ」


 何故この二人がこの“子供ダンジョン''と呼ばれるダンジョンを攻略しに来たのか。それは、今より少々時をさかのぼる。




 切っ掛けは、レイナがいつものように持ってきたダンジョンの情報の中に入っていた奇妙な噂だった。


「子供の声が聞こえてくる?なんじゃそりゃ、ダンジョン攻略してる冒険者の中に子連れでもいたのか?」

「そんなわけないでしょ。危険度が低いダンジョンならともかく、この噂の出所はできたばかりの、危険度未知数の新種のダンジョンからなんだから」


 レイナが持ってきたその噂は些か突拍子のないもので、最初はカルも半信半疑、疑うばかりだったが、噂の詳細を詳しく聞いてみると、疑うよりも興味の方がだんだんと湧いてきていた。


 レイナが持ってきた噂、それはレイナが先言った通り、新しく発見された新種のダンジョンから流れてきたものだ。

 ダンジョンとは、この世界に不定期に生成される巨大な迷宮のことを言う。

 生成されたダンジョンにはそれぞれ独自の特徴があり、その種類は千差万別で、殆ど特徴が被ることはない。勿論、その大きさと危険度も。

 その上で語るなら、今回噂の種に選ばれた件のダンジョンの特徴はその中でも一際奇妙なものであった。


 曰く、「ダンジョンの中に足を踏み入れたと思ったらダンジョンの入り口の前に立っていた」

 曰く、「ダンジョンの内装が殺風景だなと思っていたら、一瞬で公園みたいな場所に変わってた」

 等々……。


 これだけでも中々の特徴だが、これだけではまだ噂の最前線に出られるほどのインパクトには足りない。これまで世界に生成されたダンジョンの数はもはや数えきれないほど。これぐらいの特徴ならばさほど珍しいことではないのだ。

 なら何故、例のダンジョンが噂の最前線に立っていられるのか。その理由はカルがついさっき呟いた


『子供の声が聞こえる』


 と言う特徴に集約されている。つまり、この特徴は数多あるダンジョンの中でも例のないタイプだということ。


「しかしなぁ、本当にそれはダンジョンの特徴なのか?なんか、そうだっていう明確な証拠でもあるの?」

「いやないけど」

「はぁ?」

「あー待って待って、言葉足りなかった」


 途端に怪訝な表情になったカルに対して、レイナはちょっと慌て気味に先の発言を訂正して、付け加える。


「確かにそれがダンジョンの特徴だって明確な証拠はないんだけどね、ダンジョンの特徴だって判断しないと納得ができないくらい、その子供の声っていうのは不思議な現象みたいなのよ」

「なんで?」

「どうにもその声、ダンジョンコアのある最奥の場所付近から聞こえてくるみたいなの」

「あー……なるほどな」


 ダンジョンコアとは、ダンジョンを構成する核だ。コアがなければダンジョンはその領域を広げることはできず、コアが失われればダンジョンは存在を維持できず、消え去る。

 

「ダンジョンコアのある部屋に行くためには条件がある。少なくとも、未攻略の状態で入れるような場所じゃない。例のダンジョンはまだ“色変わり"してないんだろ?」

「うん」


 色変わりとは、ダンジョンが完全攻略された際に起きる色の変化のことだ。基本は入り口の色が大きく変化し、傍目からでもそれが認識できるようになっているため、見逃すというのはまずあり得ない。


「本来誰もいない、いるはずのない場所から突如聞こえる子供の声。さしずめ“子供ダンジョン"ってか?安直なネーミングだが。……うん、面白そうだな」

「やっぱりカルもそう思う?私もこの情報知った時、同じこと考えたよ。ここ最近、出てくるダンジョンは無難なタイプのものばっかりで丁度退屈し始めてきたからね」


 カルとレイナ。この二人は生粋の冒険者だ。ダンジョンの攻略を趣味とし、人生の生き甲斐とし、常に新しいものを求めている。そんな二人にとって、今回のそれは二人の興味の琴線に見事に触れたようだった。


「じゃ、最初は俺一人で行ってみるわ。まずはサポート要らずで身体慣らしておきたい」

「オッケー。私も外で作業する時間が必要だしね。まぁ2分くらいあればいけるかな」

「相変わらず速いな」

「へっへ-ん、カルも私のサポート無しじゃ速めに戻ってくると思うけど、私の作業が終わるより先に戻ってきちゃ駄目だよ?」

「舐めんな、戻ってくるにしても3分は持つに決まってんだろ」

「それでも随分早いね」


 そうして二人で例のダンジョン、カル命名“子供ダンジョン"を攻略しに行くのを決めたのが早朝のこと。



 そして時刻は、今カルがダンジョンから布団にぐるぐる巻きにされた状態で戻ってきた、昼間の時間に戻る。

 カルは早朝での言葉通り3分、いや実際にはそれより少し早めに帰還してきたが、それでもその短時間の探索で、ダンジョンの構造はあらかた理解できたようだった。

 故に一人で行くのには時間がかかると判断し、予定通りレイナの手を借りることに。


「じゃあここからは二人で行くか。レイナ、視覚共有と遠視の準備は万端か?」

「万端も万端。特別大きいってわけじゃない、というかむしろ普通より少し小さめのダンジョンだったから構造把握も早めに終わったし」

「んじゃやってくれ」

「お任せあれ」


 そう言うとレイナはカルの肩を掴み、静かに目を閉じる。同時にカルの視界に普段よりも広く、安定した景色が浮かび上がった。カルが言っていたレイナの視覚共有の効果。二人の視界を繋げたのだ。


「おーし、見える見える。じゃ、再攻略と行きますか。レイナ、サポート頼むぞ」

「分かってますって」


 構造もある程度理解した。最初と違って準備は万端。その事実から来る自信を胸に、カルはもう一度ダンジョンの入り口に足を踏み入れた。


 ダンジョンの特徴というのはものによって異なり、それぞれが独自性を持っているが、それとは別に一貫して共通している特徴も併せ持っている。それは、ダンジョンにはトラップが付き物だということ。

 完全攻略され、人の手によって管理されるようになったダンジョンならばともかく、誰も攻略していない未攻略のダンジョンには十中八九トラップがあると断言しても良い。

 

 業炎が燃え盛る灼熱のダンジョンなら踏んだ瞬間に火柱か吹き上がるトラップ、自然溢れる森林のダンジョンなら上から蜂の巣が降ってくるトラップ、と言ったように、トラップには様々な種類があり、基本それを管理しているダンジョンの特徴と適応するような形になることが多い。


 そして、今回カルとレイナが挑んでいる“子供ダンジョン"のトラップはその中でも特に独特なものだといえるだろう。


『カル、右方向からバランスボール来るよ』

「バランスボールってまた変なのが来たなぁっと」


 視覚を共有し、それに合わせて遠隔で視界と声をダンジョンへと飛ばすことでカルのサポートをしているレイナの言葉通りに右から吹っ飛んできたバランスボールを軽やかに避けながら、カルは呆れ気味に小言を呟く。


「いやー、これまでへんてこなトラップを設置してあるダンジョンに出会ったことは何度かあるけど、これはダントツだわ。まさか生活用品そのままをトラップにするなんてなぁ」

『しかも触れたらすぐさまダンジョンの入り口に戻されるっていうおまけ付き。ここまで徹底的な転移トラップ構成のダンジョンも珍しいよ』


 そう、あろうことかこの“子供ダンジョン"にあるトラップは総じて、人の生活の身近にありそうなものをトラップの道具として扱っている。 しかもそれに触れてしまうと瞬時にダンジョンの入り口へと転移させられてしまう凶悪な特性も併せ持っている。

 これだけでも厄介なのだが。


【う───す───なぁ】


『ねぇ、これが例の子供の声ってやつなのかな?』

「だろうなぁ。最奥から聞こえてくるから何喋ってるのか殆ど分かんないが」


 ダンジョンコアのある最奥の部屋から聞こえてくる、このダンジョンが噂になった直接の原因である声。その声質は確かに幼げな印象を受け、子供の声だと何となく分かるものだった。


「並の冒険者ならこの声に気を取られて集中力が乱れるな。トラップが襲いかかってくるスピードはかなり速いから、あの声に耳を傾けてるといつの間にかトラップに引っ掛かって入り口へ戻されていた、なんてこともありそうだ……っと、おお?」


【なら──は────?】


 急に大きな声を上げて先まで思いきり良く進めていた足にブレーキを入れる。

 カルの眼前には、先程まで殺風景だったはずの景色に突如として緑豊かな公園が現れていた。


『おー、本当に急に変わったねぇ』

「あっという間だったな」

『情報の通りならすぐにトラップが飛んでくるから気を引き締めてね』

「分かってる」


 レイナの忠告と同時に、カルは意識を鋭く研ぎ澄ます。それから間髪入れずに公園の方向から複数のサッカーボール、紙飛行機といった物が凄まじい勢いでカルに襲いかかってくる。

 しかし、こんな状況でもカル、そしてレイナの二人は落ち着いて協力し、淡々と目の前のトラップに対処していった。

 当たらないことに痺れを切らしたのかトラップの速度もカルがかわすごとに速くなっていくが、元より驚異的なスピードと技術でダンジョンを駆け抜けていたカルには通用しない。


「サッカーボールに紙飛行機か。速度は凄いけど殺傷力はやっぱそこまででもないな。紙飛行機も先っぽが尖ってるタイプじゃ無かったし」

『それは布団とかバランスボールの時点で薄々気づいてたことだけどね。思った通りこのダンジョン、侵入者を殺すよりも追い出す方に重点を置いているみたい』


 ダンジョンは最奥にあるダンジョンコアを取られると消滅する。

 そのためダンジョンは基本自身を攻略しに来た侵入者に対しては攻撃的だ(全てのダンジョンにトラップがあるのもこれが理由だと言われている)。

 しかし、何度も言ったがダンジョンには種類がある。ものによっては侵入者を殺すことに特化したダンジョンや、追い出すことに特化したダンジョン等があるのだ。“子供ダンジョン"は完全に後者だった。


「んじゃ、取り敢えずこのダンジョンの危険度は低めってことだな。ダンジョンの大きさはちょっと物足りないが、中の空間は幅広いし、これは可能性あるんじゃないか?」

「まだラストトラップ見てないから断言はできないけどねー」

「それもそうだな。っと、噂をすれば……!」


 足を止めずに、ひたすらダンジョンを進んできたカルは、一つの大きな扉が自身の目の前にそびえ立っているのを視認し、それと同時に自身の警戒度を一気に最大まであげた。


『ダンジョンコアのある最奥の部屋に続く扉。それを開かんとする侵入者に対してダンジョンが課す最後の試練。これを乗り越えることでようやく侵入者は、冒険者はダンジョンコアへと辿り着き、ダンジョンを攻略できたと見なされる』

「ギルドで散々説明されてきた[ダンジョンを攻略できたかどうかの判定の仕方について]の一文か。毎回思うが、良く一句も間違えずに言えるな」

『一番印象に残ってた言葉だからねぇ。コアの近くにいくとついつい言いたくなっちゃって。ってこれも毎回やってるやり取りだ。まぁ、それだけいつも通りってことで。来るよ!』

「おう!」


【すご──ごい───に─すごい!】


 コアに近づいているからか、子供の声もよりはっきり聞こえてくる。


【これ───うだ!】


 テンションが上がっているのか、今までより強く響いた子供の声に呼応するように、ラストトラップが起動される。


「おいおい、マジか」


 その光景を見たカルの目が見開かれる。カルの視界には、ダンジョン全てを呑み込めるかと思う程に巨大な津波が写し出されていた。


『これまた壮大なラストトラップだねぇ。このダンジョンが階層付きとかだったり、幅広い空間を持ってなかったりしたら殺傷力抜群だったよ。で、どうする?』

「決まってんだろ、正面突破だ。ここに来るまで細かな動きしかしてないからな。ここでいっちょ派手にやってやる」


 そう言うとカルは拳を強く握り、握られた拳に力を込めた。


 ダンジョン攻略が趣味のカルとレイナ。

 これまで二人は数多のダンジョンを渡り歩き、その度に攻略してきた。その中には“子供ダンジョン"より危険度の高いダンジョンも当然のように存在していた。

 それでも二人は互いに協力しあい、ダンジョン踏破という結果を達成し続けた。

 二人の間には、しっかりとした役割分担がある。

 レイナの役割は今どんなダンジョンが攻略しがいがあるのかどうかの情報収集、そして視覚共有や遠隔会話でのカルのサポート。

 そして、カルの役割は至極単純。


──どんなに危険度が高いダンジョンでも、堂々と正面から攻略すること。


「お──らぁ!!」


 カルの拳から放たれた一撃が津波に直撃し、津波は縦に綺麗に真っ二つに割れた。


「勝ち」

『お見事』

「さーて、それじゃいよいよ、ダンジョンコア様に面会させてもらうとしようか。そっちも良いよな?」


【……うん、良いよ】



 ダンジョンコアが鎮座する、最奥の部屋。

 ラストトラップを突破したカルはその場所へと入る権利を得て、ダンジョンコアの前へと来ていた。レイナの視覚支援と遠隔会話も機能中である。

 そこで二人は、熱烈な歓迎を受けていた。 

【ようこそ、僕のダンジョンへ!カル、レイナ!】


 他でもない、ダンジョンコアに。


「いやー、長いことダンジョン攻略してきたけど、初めてだわ、喋るダンジョンコアなんて」

『だよねー』

【君達のことはずっと見てたよ。ダンジョンを正面からどんどん突き進んでいたカルも、ダンジョンの入り口でカルのサポートもしてたレイナのことも】

「どうも」

『どうもどうも~』

【けど、意外だな。もっと驚くのかなと思ってたのに、こんな自然に会話が成立するなんて】

「そりゃ予想してたし」

【え?】

『ダンジョンコア付近で声がしてるって情報を受け取った時点で、その可能性は視野にいれてたよね〜』

「子供の声がトラップだっていう可能性もあったが、あんなに楽しそうな声を聞いていたらいつの間にかなくなっていたな」

『そうそう、ラストトラップの時なんか絶対に【すごいすごい!】って言ってたもんね』

【確かに言ってた】

「やっぱりな」

【……本当にすごいね、二人とも】


 その後も、ダンジョンコアとカル達は様々な事を話した。何でダンジョンコアに人の意志が宿っているのか、何でダンジョンのトラップを転移系のものに徹底してあったのか、等々。その大半は当のダンジョンコアにも分からないことばかりだったが、それでも三人が話す話題の種は中々尽きず、楽しい会話が続いていた。


 そして、長い長い話し合いにも一区切りがついたところで、ダンジョンコアは二人に聞いた。


【それで、君達は僕をどうするの?】

「ん?」

『あー……』


 その一言で、二人はダンジョンコアが言わんとしていることを理解した。即ち、ダンジョンコアを取るのかどうか、と言うことを。


 ダンジョンはコアを取られると消滅する。正確には、コアをダンジョンの外へと持ち出されると消滅する。

 ダンジョンを攻略した二人は外にコアを持ち去ることができる。それを理解しているからこそ、ダンジョンコアは二人に聞いた。


【別に良いよ、僕は。どっちでも。今日最高に楽しかったし、満足してるし】

「うーん」

【どうする?】

「まぁ待て、そう急かすな。……そうだな……ダンジョンコア。略してダン君よ」

【ダン君?】

『ダン君て』

「お前、あのラストトラップの内容を変更することとかできるか?後、他の普通のトラップの速度の調整とか」

【え?……やったことないけど、多分できると思うよ。ダンジョンの構造って自由性高いし】

「良し、分かった。なぁ、ダン君」



「もう少し楽しんでみる気はないか?」



 一つ、この世界の歴史を語ろう。

 人はダンジョンを攻略することによってその文明を広げてきた。

 ダンジョンを攻略し、コアを掌握して、そのダンジョンの構造を思いの通りに動かす。そうして安全な場所となったダンジョンを住みかとする。これの繰り返し。


 今、この世界で有名になっている都市や国も元はダンジョンであったものが殆どだ。

 大きなダンジョンは町や都市、あるいは国に。そうでないものは場合によっては村や施設として使われる。


「あー楽しかった」

「新鮮な体験だったね~」


 つまり、何が言いたいのかというと。

 カルがダンジョンコアに提案したことも、それと同じものだということだ。


「あ、レイナ」

「何?」

「ダン君から。今度は直に会いたいってさ」

「おぉ〜。うん、喜んで行かせてもらうよ」


 布団やバランスボールといった生活用品。サッカーボールや紙飛行機といった遊び道具。そして公園という遊び場。

 カルがダンジョンコアに提案したものは、案外単純なものだった。



 そして、いつしか噂の最前線に立っていた「子供の声が聞こえてくる奇妙なダンジョン」の噂は消えた。代わりに、「子供達の格好の遊び場になったダンジョン」の噂が立つようになった。


 そこに、最奥の部屋から楽しそうな子供の声が聞こえてくると言う情報も付け加えて。

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