第5話 【熱釘】と【氷柱】と【無能】

<<不知火しらぬい丁路ちょうじレベルアップ!>>


 脳内にシステマチックな音声が鳴り響く中、


 チュー! チュー!


 続け様に二匹のネズミが飛びかかってくる。


 すると不知火しらぬいは中指からも熱線を出して、二匹のネズミを真っ二つに切り裂いた。


<<不知火しらぬい丁路ちょうじレベルアップ!>>

 だからなんだよコレ!


「なあ、不知火しらぬい、さっきからなんか頭の中でお前がレベルアップしたって響いているんだけど、なんなんだこれ?」


<<氷室ひむろじんレベルアップ!>>


「あ、今度は氷室ひむろがレベルアップした!」


 俺は、あたりを見回した。

 だけど、氷室ひむろはいない。

 あるのはなぜか突然できている氷の壁だ。

 氷の壁には、ネズミが一匹下敷きになって内臓を飛び散らかしている。


 その氷の後ろから、氷室ひむろの声が聞こえてきた。


田無たなし! 不知火しらぬい! 生きてるか!」


「ああ。おかげさで」

氷室ひむろも無事でなりよりです」


「そっか、俺のスキルは、ちょっとこいつら向きじゃない。

 俺はクラスってか学校のみんなを防護するシェルターを作って回るから、倒すのは田無たなし不知火しらぬいとでなんとかしてくれ!」


 そう言うと、氷の壁をよじのぼって出てきた氷室ひむろは、そのままクラスメイトたちを先導して教室から出ていった。

 どっから取り出したのか、足にはスノーボードをつけている。


<<氷室ひむろじんレベルアップ!>>


 あ、また、氷室ひむろがレベルアップした。

 だから、なんだ? これ??


「と言うわけで、田無たなし、君もユニークスキルをつかってネズミ退治を手伝ってください!」


「え? なに?? ユニークスキル?? どうやって使うんだ!?」


「どうやってって……ネズミが出た時から使い方が分かりましたけど?

 てっきり君もそうかと」


「え? そんなもんなの??」


 俺は、ステータスを開いた。


「ステータスオープン!」


=============

 田無たなし能己よしき

 レベル1

 知力 5

 体力 9

 統率 6

 魅力 3

 ユニークスキル【無能サーフェス

 ★★★★★★★☆☆☆

=============


「っておい! 俺のスキル【】なんだけど!

 こんなのどうやって使うんだ!」


「さあ? とにかく、君も手伝ってください!」


「わかった! ……ってなるわけないだろ!!

 【】だぞ! !! どーかんがえても俺も避難する側だろ!!」


「いえ、違います、おそらくですが、田無たなしは、僕たちとおんなじ、

 その証拠に、ステータスがじゃないですか!」


「え? どういうこと??」


「僕は今日、ステータスを開きっぱなしでいたんですけど、君と、氷室ひむろ意外、誰も気が付きませんでした!

 きっと、君は【無能サーフェス】というスキルを持ってるはずです。

 僕の、【熱釘フレイルネイル】や氷室ひむろの【氷柱アイスエッジ】みたいに!」


 チュー!


 ネズミが襲いかかってくる。俺は、不知火しらぬいを見た。

 何匹ものものネズミを、2本の炎のムチをあやつって切り刻んでいる。

 俺を助けるヒマなんてなさそうだ。


 こうなったらヤケクソだ!


 俺は飛びかかるネズミを紙一重で避けると、尻尾をむんずとつかんで、思いっきり地面に叩きつけた。


 ボグン!


 ネズミは、嫌な音を立ててぐったりと倒れた。


<<田無たなし能己よしきレベルアップ!>>


=============

 田無たなし能己よしき

 レベル1→1

 知力 5→5

 体力 9→9

 統率 6→6

 魅力 3→3

 ユニークスキル【無能サーフェス

 ★★★★★★★☆☆☆

=============


 え? どういうこと???

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