第4話 ドブネズミは人肉がお好き。

 それは、突然おとずれた。

 校舎の2階で、たいくつでしかたがない授業を聞きながしていたときだ。

 廊下側の席の俺は、幾人もの生徒の頭越しに、ボケーとグラウンドをながめていた。


 すると、なんだか黒い円が現れた。まんまるの真円だ。三十メートルくらいか?

 その真円は真っ暗で底が見えない深淵だった。


 そっから「どっぷん!」と地の底から響くような音が聞こえて、おっきなネズミが現れた。

 そのネズミは、全身がぬらぬらと黒光に光っていて、赤い瞳がギラギラと輝いている。


「なんだ、あれ?」

「でっかいネズミ!」

「臭い! ドブのような匂い!

「巨大ドブネズミか!」

「おいおいおい、これ、ヤベーんじゃない?」


 チューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


 巨大なドブネズミは、金切り声をあげると、ドロドロとくずれてグラウンドいっぱいに広がっていった。


「え? 死んだ!!」

「腐ってやがる……」

「……早すぎたんだ」

「なにが?」

「てかどうすんだよ、グラウンドぐっちょぐちょじゃねーか!」

「これ、俺たちが掃除すんのか?」

「やってらんねー」

「ん……なんかヘンじゃね?」


 崩れたドブネズミは、どんどんと拡散していって、斑点状になっていく。

 いや、ちがう、動いている。斑点は!!


 チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー チュー!


 大量のネズミが、こっちに向かって走っている。そして、


 パリーン!


 バスケットボールくらいの真っ黒いネズミが飛び込んで、窓際にいたクラスの女子ののど元に噛み付いた。


「きゃあああああぁぁぁぁぁぁ…………あぁぁぁががががあが!」

 バリ! ボリぼりボリゴリ………………グラグラ…………ゴシャ!


 ネズミに喉元をかじられた女子は、その頭を地面に落とした。怯えた瞳がこちらをじっと見つめて、はげしく瞬きをしている……いや痙攣しているのか!


 そして頭と離れた体に、後から入ってきたネズミが嬉々として群がっている。


 バリ! ボリぼりボリゴリ! 

 バリ! ボリぼりボリゴリ!

 バリ! ボリぼりボリゴリ!


 食っているんだ!!


「きゃああああああ!!」

「ちょっとまて、なんだこれ! なんだこれ!!」

「ちょっと男子、追い払ってよ!」

「そんなこと言われても…………ぎゃ! ぁぁぁぁあがががが!」


 ネズミは、どんどん割れたガラスから入り込んできて、次々とクラスメイトに襲いかかって、いや、喰いかかっている。


 そして、まだ食料を得ていないネズミが俺に向かってとびかかってきた。

 

 あ、これ死んだわ。確実に死んだわ。はい死んだー! 連載終了のお知らせ。


 そう思った瞬間、熱線が目の前を横切って、ネズミの胴体が真っ二つになっていた。


 俺は後ろを振り向いた。すると、左手の人差し指でメガネを直しながら、右の人差し指から熱線を出している不知火しらぬいがいた。


 脳内で、システマチックな音声が響き渡る。


<<不知火しらぬい丁路ちょうじレベルアップ!>>


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 不知火しらぬい丁路ちょうじ

 レベル1 →2

 知力 10→11

 体力 5 →6

 統率 3 →5

 魅力 7 →7

 ユニークスキル【熱釘フレイルネイル

 ★★★☆☆☆☆☆☆☆

   ↑NEW

熱釘フレイルネイル】を2本同時に操れるようになりました。

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