第3話 残念なイケメンとワケアリな秀才。

 俺が、のんびりと学校に向かっていると、クラスメイトにあった。


 氷室ひむろ不知火しらぬいだ。


 二人はステータスウインドウを開いて、キャッキャとはしゃいでいる。


「よう、田無たなし! ステータスオープン!」


 氷室ひむろは、開口一番、俺のステータスを開いた。

 

「マジか! 俺、田無たなしよりも知力が低いわー、へこむわー」


 氷室ひむろはため息をつくと、となりの不知火しらぬいがポンポンと肩をたたく。


「まあまあ、かわりに統率? ってのが「10」もあるじゃないですか」

「だから何につかうんだよ統率って!」


 こんな妙なことが起こっているのに、ふたりともやたらとのん気だ。

 せっかくなので、俺はふたりのステータスを見た。


=============

 氷室ひむろじん

 レベル1

 知力 3

 体力 7

 統率 10

 魅力 8

 ユニークスキル【氷柱アイスエッジ

 ★★★★★☆☆☆☆☆

=============


 氷室ひむろは、俺よりちょっとばかし顔がよくて(愛嬌がある可愛い系)、ガタイが良すぎな俺に比べるとスタイルが良い。そして憎らしい程足が長い。ジャニーズにいてもおかしくない。

 でも、それをハナにかけないナイスガイだ。

 きっと、知力3の脳みそから放たれる、残念な無駄口をたたかなければ、女子の人気もあるだろうに……もったいない。


=============

 不知火しらぬい丁路ちょうじ

 レベル1

 知力 10

 体力 5

 統率 3

 魅力 7

 ユニークスキル【熱釘フレイルネイル

 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆

=============


 不知火しらぬいは、学年一の秀才だ。氷室ひむろや俺よりも背が高くて、細身で猫背。塩顔系の銀の細フレームの眼鏡がよく似合う、俺よりちょっとだけイケメンだ。

 なんで学年一の秀才が、俺みたいな無能野郎と、氷室ひむろのような残念イケメンとつるんでいるのかまったくもって不明だ。


 そもそも、なんでこんな何の変哲もない偏差値の残念な学校に通っているのかがすごく気になる。なにせ不知火しらぬいは、2年生の時から、都内にある名門私立から転校してきたからだ。


 でも、まあ、俺たちは詮索はしない。「しないほうがいい」って、氷室ひむろが言ったんだ。

 氷室ひむろは余計な無駄口が多いヤツだけど、こーゆーとこがイケてると思う。ぶっちゃけカッコイイ。


 俺は、はしゃいでいるふたりに、気になっていることを聞いてみた。


「ところで、最後についている【スキル】ってなんだ?」


「知らね!」


氷室ひむろには聞いてない! 不知火しらぬい、なんだと思う?」


「さあ、なんとなく苗字に関連している気がしますね。でも、まあ、僕もわからないです」


「そっか、不知火しらぬいが分かんないんじゃ気にしてもしゃーないか。ありがと」


「どういたしまして」


「……ん? おいこら田無たなし! 俺にもお礼を言えよ。俺もちゃんと「知らね」って言ったぞ! 不知火しらぬいと同じ答え言ったぞ!!」


不知火しらぬいは、考えて「知らない」って言ったからお礼を言ったんだ!

 氷室ひむろはそもそもなーんも考えてないだろ!」


「なるほど! さすが知力5!」


「ほめられた気がしねー」


 俺たちはいつものように、くだらないことをダベりながら校門をまたいだ。

 このとき、俺たちは想像もつかなかった。


 この日を境に、世界がめちゃくちゃになるなんて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る