第2話 【無能】ですが何か?

 最初に、俺がこのスキルを授かった時、実はそこまで落ち込んだりはしていなかった。

 俺が、自分のステータスとユニークスキルに気がついたのは、朝の学校に行く前、鏡の前で歯を磨いている時だった。突然、


「ぽよん」


 なーんて、おまぬけな効果音がして、鏡の前にいた、寝癖で「もさっ」とした髪型の、目つきの悪い男の前に、ちょっと大きめなタブレットが表示された。


 でもって、そこにはこうかかれてあった。


=============

 田無たなし能己よしき

 レベル1

 知力 5

 体力 9

 統率 6

 魅力 3

 ユニークスキル【無能サーフェス

 ★★★★★★★☆☆☆

=============

 TIPS:

 ウインドウを消すためには「クローズ」と唱えましょう。

 開けたい時は、相手の名前を呼んで「ステータスオープン」といいましょう。


 なんだこりゃ?


 レベル1 そりゃそうだ。学生だしバイト経験もない。

 学力 5 知ってる。普通の中の普通。

 体力 9 これも知ってる。学力よりはマシ。

 統率 6 何に使う能力なんだこのステータス?

 魅力 3 よく目つきが悪いと言われる。


 そこについてきたユニークスキル【無能】だ。別に驚きはしない。

 これといって取り柄がないことなんて、自分が一番よく知っている。


 俺は、歯ブラシを口から抜くと、このいそがしい朝の身だしなみタイムの邪魔をする、わけのわからんタブレットが表示している情報のなかで、今、最も重要な単語をつぶやいた。


「クローズ」


 すると、黒いタブレットは音もなく消え去った。


 俺は、口をゆすいで、歯ブラシを洗うと、鏡を見ながら「もさっ」とした髪型を、ドライヤーでどうにかこうにか落ち着かせると、朝食を食べ、制服に着替えて家を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る