スキル【無能】で無双します。

かなたろー

第一章

第1話 ユニークスキル【無能】

 世の中ってのはよくわかんないもので、ある日突然「スキル」が使える世界になった。


 スキルは二種類にわかれる。


 全員が使えるスキルと、その人だけが使えるユニークスキル。


 全員が使えるスキルは、たった1種類。

 スキル名は【ステータスオープン】そう。ゲームなんかでよくあるあれだ。


 このスキルのおかげで世の中は「ウソ」がつけなくなった。

 それはとっても公平であり、とっても残酷だった。就職活動なんかではてきめんだ。シンプルにステータスがいい人間が採用され、低い人間は非採用。


 ステータスだから運の要素もからまない。


 たまたま、親が金持ちだったとしても、本人のステータスが低ければ、エスカレーターのおぼっちゃま学校にすら入れない。


 ステータスが見えちゃってるから、「運が悪かったから失敗した」なんて言えなくなったわけだ。努力不足で失敗したことが、誰の目にも明らかだから。


 とはいえ。


 神様というのはそこまで残酷な人じゃない。ちゃあんと「運の要素」も残しておいてくれた。


 それがユニークスキルだ。


 ユニークスキルはその名の通り、世界に一つだけの自分だけの能力だ。

 当たりのスキルを引きさえすれば、ステータスが低くてもなんとかなったりする。


 例えば【読心術】を授かれば、そもそもテストの答えを、どっかのお利口さんから読みとっちゃえばいい。社会に出ても恐ろしいくらい役立つだろう。

 そしてもっとも強いのが、「ステータスオープン」で、【読心術】のユニークスキルを持っていることを他人にアピールできることだ。


 相手が【読心術】を持っているとわかっているのに、ウソやお世辞なんてつくバカいないだろう?


 そういうことだ。


 つまりこの世界は、いままでは、生まれた時代、親、友達、環境、出身地、などなど、たくさんの要素がかなみあってできていた運が、かなりの割合で「ユニークスキル」に割り振られたってことだ。


 前の世界とどっちが良かったって?


 そんなの、人それぞれだろう。


 今まで、運が良かっただけなのに、それを実力だと調子に乗っていた勘違い野郎は底辺に叩きつけられた。

 反面、まったくぱっとしなかったのに神がかり的な「ユニークスキル」をいただいて、苦労しないで悠々自適にやっているヤツもいる。

 たいしたユニークスキルがもらえなかったとしても、目視ができるようになったステータスを地道にあげるべく、日々努力を行うストイックなヤツもいる。

 本当に人それぞれだ。


 ん? 俺はどうかだって?


 俺は、どれでもない。

 俺のユニークスキルは【無能サーフェス】。

 名前は田無たなし能己よしき。高校2年生の17歳。


=============

 田無たなし能己よしき

 レベル1

 知力 5

 体力 9

 統率 6

 魅力 3

 ユニークスキル【無能サーフェス

 ★★★★★★★☆☆☆

=============

 まったく、5963ごくろうさんなこった。

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