足元の屍
宵闇(ヨイヤミ)
人気者
突然だが、俺は学校で成功してると思う。所謂 “ 勝ち組 ” というやつだ。俺は俺自身がそう呼ばれるに相応しいと思っている。
え、なんでかって?じゃあ俺の事をお前に教えてやるよ。
まず俺は成績が優秀なんだ。成績はいつも上位で、学年で10位以内に毎回入るんだ。
300人くらいいる生徒の中の10位以内だぜ?凄いだろ。分からないところがあったら教えてやるよ。
俺、部活もやってんだよ。テニス部のエースなんだ。顧問からも信頼されてるし、女子からも結構人気なんだぜ?
良かったら今度の試合、見に来てくれよ。絶対勝ってみせるからさ。
そうそう、言い忘れてた。俺には自慢の彼女がいるんだよ。学校で一番可愛いって有名な子なんだ。束縛気味なところはあるけど、人気な可愛い子と付き合えてるんだから、文句なんか言っちゃいけねぇよな。
友達も沢山いるから、もし良い人紹介して欲しかったらいつでも言えよ。周りに声掛けてやるからさ。
な?俺勝ち組だろ?学校生活イージーモードで楽勝だなぁ。これなら将来も苦労するなんてことないかもなぁ。
『さて、それはどうですかねぇ』
「誰だ?田中か?今日は俺部活には行けな……」
『貴方は、自分の足元……見てますか…?』
「何の話だよ」
あれっ、田中じゃ、ない…?知らない顔だ。それに制服じゃなくて、スーツ…?先生……にこんな人はいないはずだ。ならこいつは一体……
『足元には、注意した方がいいですよ』
「お前、誰だよ!」
『忠告、しましたからね。それじゃあ』
「おい!誰なんだよ!待て!」
-数日後-
「おい、聞いたか」
「何を?」
「テニス部のエースの話」
「あぁ、あれか」
「やべぇよなぁ」
「まさか全てを………」
《 金で買ってたなんて 》
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺は全てを失った。友達も、彼女も、成績も、エースの座も、何もかも……
『だから忠告したんですよ』
「お、お前は…!」
『自分の撒いた種でしょう』
「お前の仕業か!」
『ご自身でしたことでしょう』
『私は関係ありませんよ』
『貴方が金銭で全てを得たことが周りに知られ、それが全校生徒に知られたこと』
『貴方が生徒を虐め、恐喝をしたこと』
『貴方が自分の言うことを聞かない人を、この学校から追い出していたこと』
『貴方が彼女さんに金をチラつかせて、抵抗出来ない女性に酷いことをしていたこと』
『それ以外にもいくつかありますよね』
『全て、貴方がしたこと』
『自業自得ですよね』
「お、俺は…完璧に隠して……!」
『隠し事はいつかバレるものです』
「んだとっ!」
『足元には注意してください、と忠告したはずですが』
「あ"?」
『どうやら、意味を理解していなかったんですね』
「なんの事だ」
『貴方にとっての “ 足元 ” とは……』
《今まで貴方が踏んできた弱者だ》
「弱者だと?」
『貴方が虐めていた人』
『貴方が金で買った成績につくはずだった人』
『貴方が買ったエースの座に座るはずだった人』
『貴方は自分の足元を見ていない』
『自身が足元に溢れさせた弱者を』
「んなこと知ったことじゃないね」
「この世は所詮、金が全てだろ!」
『はぁ…そんなんだから貴方は……』
《 殺されたんですよ 》
足元の屍 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121
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