不屈騎士と第3王女への説得

「いや〜さっきはすまん!ちょっとした手違いで襲いかかってしもうた。ほんまにすまんかったわ!」


私とアンナ様を襲いかかってきたタマモは後から来たユウに小突かれると少し話し込み始めた。

するとタマモからさっきまでのピリピリした殺気が霧散して申し訳なさそうな態度で私達に頭を下げてきた。


さっきまで私達を殺そうとしてきたのに急にこの申し訳なさそうな態度....気味が悪いな。


(どう思いますアンナ様、この態度の変わりよう...何か裏があるかもしれませんよ)


(確かにここまで態度が急変すると怪しくて仕方ないな...それになんでタマモとユウが此処に来たんだ?こんな時間にこの寂れたバーに偶然来るなんて考え辛いし...聞いてみるか)


「ねぇ、どうして二人はこんなところに来たの?偶然じゃないよね、こんな汚い店何か用事がないとくるわけないし」


「ああそれはやな...」


「俺達が貴方が依頼した助っ人だからですよ」


タマモと一緒にいたユウが此処にきた理由を説明し始めた。


「本当はセクリトが来る筈だったんですけど、セクリトの奴はどうしても手が離せない仕事があるみたいで代わりに俺達が来たんですよ。で、そこまではいいんですけどタマモの馬鹿が良く考えもせずに貴方達に襲いかかってしまったんですよ。本当に申し訳ない、ほらっ!タマモももっと謝れ!」


「ホンマにすいませんでした!!」


ユウは此処にきた事情を説明するとタマモと一緒に深々と頭を下げた。

二人が此処にきた理由は分かった。

どうやらアンナ様はセクリトという人に助っ人を頼んだけど代わりにこの二人が来たらしい。確かにこの二人なら戦力は十分だろう。

タマモは私が直接戦い実力を把握している。

ユウの方は直接戦っている所は見た事はないけど...まぁ聞いている噂やユウの立場から判断して実力に間違いはないだろう。

だが一つ問題がある。 


(どうするんですかアンナ様、当初の予定通りこの二人と一緒に仕事するんですか?ユウはともかくタマモは信用出来ません。ユウだけ連れて行ってタマモは置いていった方がいいんじゃないですか?)


私はタマモの同行をやめた方がいいとアンナ様に進言した。

いきなり襲いかかってくるような奴と背中を預けて戦えるか。

いつ裏切られるか分かったもんじゃない。

だから私はタマモの同行に断固反対だ。

私とアンナ様とサラそれにユウもいれば戦力は十分だし。


私がタマモの同行をやめた方がいいと勧めるとアンナ様は困った表情を浮かべた。


(うう〜ん...困ったな。確かにタマモの同行はリスクがあるけど出来れば連れて行きたいんだよな。今日の獲物はセクリトがいたとしてもギリギリ勝てるかどうかの敵。セクリトの代わりにユウがいるとしても私達が生きて帰れるかは半々...だけどタマモがいればほぼ確実に生きて帰れる。セクリトが来なかった時はどうしたものかと焦ったけどこれは逆にチャンス。タマモとユウの二人に力を貸してもらえるこんな機会を逃す訳にはいかないな)


アンナ様は私の進言を聞いて少し考え込み始めた。


「ねぇリーシア、私はタマモにも同行してもらおうと思っている」


「ええっそんな!こんないきなり襲いかかってくるような頭のネジが外れている奴と同行するなんて危険ですよ!!」


「うん...仕方ないとはいえ随分と厳しい評価やな。ウチ少し悲しいわ」


何かタマモが呟いた気がするけどそっちは後回し、今はアンナ様を説得する方が先決だ。


「タマモがいないとしても私とアンナ様、それにサラとユウがいれば十分でしょう!こんないつ裏切るか分からない狐なんて必要ない!いや寧ろ裏切らないように気を配る分戦力ダウンですよ!!絶対に帰らせた方がいいです!!」


「いや〜全くもってその通りやな。ウチもアンタの立場ならウチの同行を認めんよ。やけどさ〜何とかウチの同行を認めてくれん?ウチも仕事をせんと色々不味いんよ」


「そんな事言われても知らない、勝手に困ってろ」


「そんな連れない事言わんでくれやぁ〜!ウチもアンタに切られた事は忘れるからさぁ〜アンタも襲われた事を水に流して仲良くやろうや」


「馬鹿言うな。お前みたいな後先考えずに行動する奴と仲良く出来るか、さっさと帰って大好きな博打でもしてくるんだな」


「その大好きな博打をするためにもこの仕事をしないといけないんよ。なぁ〜頼むわ、ウチの同行を許してぇや。絶対に裏切らんからさ〜」


「信じられないね、アンナ様こんな奴連れて行くのは絶対によした方がいいですよ」


「いやそれでも連れて行く。今回の仕事は少しでも戦力が欲しいからね、タマモの力を逃す手はないよ」


「ですけど...!」


「ああだがタマモが裏切るかもって不安要素があるね、だがそれは私が何とかするよ。だからタマモが同行してもいいでしょ?」


「......貴方がそこまで言うなら私からはこれ以上何も言いません。貴方に従いますよ」


「ふふっ、そんな顔じゃあ不満たらたらなのが丸分かりだぞ〜。もう少しポーカーフェイスを身につけた方がいいよ」


こんな危ない奴と一緒に行動する羽目になったんですから少し不満に思うぐらいしょうがないじゃないですか。

だけどアンナ王女が裏切らない様にするというならタマモと一緒に戦いますよ。

アンナ様ならタマモが裏切らないようにする事が出来るからな。

だけどそれをするにはアンナ様はかなりのリスクを背負わなきゃいけない。

そこまでしてアンナ様がタマモと同行しないといけないと思ったならこれ以上私は何も言えない。

まぁ面白くないから少し不満げな顔になってるけど...それぐらいは勘弁してくださいね。


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