博打狂い狐と副社長の準備

「近いうちに必ず借りは返してやろうと思うとったけど、まさかこんなに早く再会出来るなんてな。これもウチの普段の行いの賜物やな」


ウチがセクリトに行くようにと指示された場所に向かうとアンナ王女とリーシアが何か話し込んでいた。


これは先日の借りを返す絶好の好機!

ウチは二人に向けて炎を飛ばした。

だが二人も実力者ウチの炎を何とか避けやがったわ。

ちっ!まぁそんなに上手くはいかんか...だが今日は戦闘準備は完璧、前の時の様にはいかんで!


「リーシアはん、あんたに斬られた傷が疼いて疼いてしゃあない。あんたをぶち殺してこの疼きを収めさせてもらうわ。王女はん、あんたに興味は一切ないけど邪魔するならあんたも一緒に消すで」


王女と事を構えるのは後々面倒になるかもしれへんが、まずはリーシアに落とし前をつけるのが先決や。

ウチの体に傷をつけたんや絶対にタダでは済まさへん。

少なくても骨の2、3本はへし折ってやるわ。

それを邪魔するなら例え王族でも容赦せん、纏めて潰してやるわ。


「さ〜て今日は以前と違って戦闘準備万端や!今度こそリーシアお前を叩き潰しゃっ!!」


ごんっ、ウチの頭から鈍い濁音が聞こえ頭に痛みが走った。

あまりの痛みのせいでウチは纏っていた炎を消し、頭を抱えながらしゃがみこんだ。

あいった〜!!

何!?一体なんなんや!?

ウチは涙目になりながら顔を上げるとユウが呆れた顔をしながら拳を握っていた。 


「あれっユウ!?なんで此処にいるんや!?」


「お前一人じゃ何かやらかすんじゃないかとセクリトが心配して俺に着いて行って欲しいと頼まれたんだよ。全く...案の定問題起こしやがって、少しは考えて行動しろこの馬鹿」


「だって〜ウチの柔肌に傷をつけた怨敵がいるんやで、そりゃあ頭に血が昇るのも無理ないやん」


「は〜?何いってんだよお前の回復力ならあの程度の傷、1日2日あれば自然治癒で完治するだろ。なのになんで根にもってんだよ?傷が残ってないんだから別にいいじゃん」


「そうやけどさ〜傷は治ったけど治すのにかなり苦労したんよ。あの日は本当帰った後地獄やったわ。金が無いから回復薬が買えんから自然治癒で治すしか無くてずっーと傷口が痛んだわ。そのおかげで夜もまともに眠れんかったわ。その痛みをあいつに何倍にもして返さんと気が済まんねん!」


本当にあのリーシアとの戦闘があった日は地獄やった。

あの日の痛みを返してやらん事にはウチの気が晴れることは無い!


「そうか...まぁ痛い目に遭わされた相手に仕返しをしたいという気持ちはよく分かる。俺も同じ目に遭わされたら仕返しを考えるだろうしな」


「ならっ、」


「だけど今回は諦めな、セクリトに聞いたがあいつらが今回の依頼人だ。あいつらを倒したら仕事の話がパーだぞ、この仕事はセクリトどうしても成功させたがっていた重要な物。これをパーにしたらお前セクリトに今度こそ殺されるぞ」


「うげっ....マジかいな」


「おうマジマジ」


この前はこの仕事で金を稼ぐという助け船をセクリトに出してもらえたが、折角出した助け船をウチが潰したら....やばい今度は問答無用でぶち殺しコース待ったなしや。


「.....やっぱり復讐なんて良くないわな!人間人を許してこそ成長出来るってもんや!それに昨日の敵は今日の友、呉越同舟とか色々昔の諺でも敵だった人と手を組め的な事を言うとるし、あの2人と組んで仕事をする事に何の問題もないわな!」


「急に言い訳饒舌になるじゃん、まぁタマモが納得したならそれでいいや。それじゃあほら行くぞ」


ウチとユウはリーシアとアンナ王女の二人に視線を向けた。

二人は臨戦体制に入っていてウチらの一挙手一投足に気を配り何かあった時に直ぐに動けるように警戒していた。

まぁウチが致死性の攻撃をいきなりすればこうなるも仕方ないわ。

けどウチはもうこいつらと戦う気は無い。

こいつらからの仕事をこなさいと良くて2ヶ月の飲まず食わず労働。

最悪セクリトによる制裁が待っている。

セクリトの奴、血も涙もない冷血女やからな...前にウチがやらかした時は一人で魔物の群れに特攻させて全部の魔物を倒して素材を回収するまで帰ってくるなって言われたわ。

その時の制裁は何とか達成する事が出来たけど...次の制裁はどんな無茶を吹っかけられるか分かったもんやない。

どんな手を使っても絶対にセクリトの制裁を逃れてやるわ!

....けどいきなり襲いかかったせいでウチの印象最悪や。

もし仕事の話を打ち切られたらどうしよう....。

何とかそうならないように謝り倒そう。

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