不屈騎士と第3王女の裏の仕事

表彰式が終わった後、私は王城のはずれにあるとある部屋の前に来ていた。

アンナ王女との別れ際に式が終わり次第来て欲しいと言われていたからここに来たのだった。

アンナ王女に言われていた場所はここであっている筈...なんだけどなぁ?

私は周りを見渡してほかに部屋がないかと探してみたけどこの辺に他の部屋は無かった。

王城にあるにしてはやけにボロい扉の部屋だから部屋を間違ったかと不安に思ったけど....他に部屋もないしなぁ〜。

どう考えても言われた場所はこの部屋に間違いないんだよなぁ。

まぁここでうろうろしてても仕方ないか。

この部屋であっているか一抹の不安があったけど、私は扉をノックした。


「は〜いどうぞ、鍵は空いてるよ!」


「失礼します」


部屋の中から入っていいとの声が聞こえたので、私は部屋に入った。

部屋の中は薄汚いドアから受けた印象とはまるで異なっていた。

部屋の中は綺麗に整頓されており、中にある家具や品物は一目見ただけで高級品と分かる物だらけだった。

私が部屋の凄さに圧倒されていると部屋の中央に置いてあるソファーにアンナ王女は腰掛けていた。


「お〜リーシアお疲れさん、どうだった式典は?」


「どうもこうもああいうお堅い式は私は不慣れで凄く疲れましたよ。しかも見たくもない顔を見る羽目にもなりましたし」


「見たくない顔?それって誰の事?」


「フージスですよ、あの悪趣味な金色の鎧を着ているゴミ屑野郎」


「あ〜あいつね...けどおかしいな。あいつは確か第3騎士団所属だったよね?」


「ええそうですけどそれが何か?」


「だとしたらやっぱりおかしい。今日は第3騎士団は演習の予定が入っていた筈、今の時間なら王城にいるはずがないよ」


「けど間違いなく私がさっきあったのはフージスでしたよ。私があのゴミ屑を見間違うわけがありません」


「おおう...さっきからゴミ屑って呼んでるけどよっぽどあいつの事が嫌いなんだな。まぁリーシアがそこまで断言するなら本人なんだろう。それにあいつは貴族だからな、演習をサボるくらいならわけないでしょ。ただ態々演習をサボってまで式典に出て来たんだ。なんか目的があったに違いない。リーシア、フージスに何かされなかった?」


「ええ...?少し話しただけで特に何もされてないと思いますよ」


私はフージスとのやり取りを思い出してみたが、フージスは特に変な事はしていなかった。

いつも通りのムカつく話し方に仕草だった。

ああ、あんなゴミ屑奴考えるだけでムカムカしてくる。


「もうあんな奴の話なんてやめましょう。イライラしてしょうがない」


「相当嫌いなんだな...分かった。けど何かされたり違和感を感じたら直ぐに私に言ってね。君は私の大事な仲間なんだから、私が出来る事があったら何でするからね」


「ありがとうございます。それじゃああいつに何かされたら直ぐに報告しますよ」


「おう任せろ、私の持てる力全てを使ってフージスが何かしてきたら捻り潰してやるよ。さてそれじゃあそろそろ今日呼んだ本題を話そうとするかな。リーシアも突っ立ってないで好きな所に座りな」


「はい、それじゃあ失礼します」


アンナ王女に勧められたので手近にあったソファに腰掛けた。

うわ....何このソファー凄い手触り良い、それに柔らかいから体が沈む沈む。

これは人を駄目にするソファーだ....家に一個欲しいけど高そうだから金欠の私じゃ買えないだろうな。


「これいいソファですね、それに周りの家具なんかも高そうですし。流石王族ともなれば良い物使ってますね」


「いやいや王族とはいっても私は王位継承権が殆どない第3王女。この部屋の扉を見たでしょ、私の立場じゃ王城で自由に使える部屋なんて誰も使ってないここぐらいもんなのさ。だから当然国の金なんて殆ど使えないよ。この部屋にある物は私が自分の手で稼いだお金で買ったんだよ」


「ええっ!全部自分の金で買ったんですか!この部屋の物全部!?」


「そうだよ〜凄いでしょ!」


私は改めて部屋の中を見渡してどんな品物があるかを確認した。

王家御用達に選ばれた事もある品物や最近の貴族に人気ブランドなどどれも超高級の品物ばかりだ。

これらはどんなに安く見積もっても金貨数十枚はするでだろう。

それを私よりも歳下の小娘が自分の力のみで稼いだ金で購入したという普通なら嘘と疑う話だが、この話は嘘じゃない事が私には分かる。

何故ならとある理由からアンナ王女は私に対して絶対に嘘をつく事が出来ないからだ。

どうしてアンナ王女が私に嘘をつけないのかはアンナ王女の能力が関係してくるのだが、その話はまた別の機会に。


「は〜凄いな....一体どんな手を使って大金を稼いだんですか?」


「ふふ、まぁ私にはサラとリーシア以外にもう一人優秀な仲間がいてね。そいつに力を貸してもらって金を稼いでるんだよ。まぁ色々グレーな事をやっててバレたらマズいからここだけの話にしてね」


「はぁそうですか...一応聞いておきますけどグレーな事って後ろ暗い事はしてませんよね?」


「ちょっと貴族の裏金奪ったりとか、ならず者や盗賊なんから金品を奪っているだけだよ」


「あんた一体何やってんですか...?貴方仮にも王女なんだからもうちょっと行動を考えて下さいよ」


「だってあいつらから金奪っても被害届けなんて出ないし、それに良い戦闘経験を積めるから一度で2度美味しいんだよ。あいつらから奪うのはやめられない止まらないよ〜」


はぁ〜私が口で何を言っても止められなさそうだ。

.....仕方ないな。


「は〜ならせめて次にそういう事する時は私も呼んで下さい。せめて私の目の届く所で暴れてもらっている方がまだマシです」


「おっなら丁度良いな!近々ある貴族の邸宅を襲いに行く予定があるんだ!リーシアもついてきてね!」


そういう訳で晴れて出世して王女の専属騎士となった私の初仕事は貴族の邸宅を襲う事になった。

.....アンナ王女の部下になるの早まったかな?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る