不屈騎士と第3騎士団の副団長
「リーシア=バル、賞金首イザルを捕まえた事を讃えアンナ=エリザートの専属騎士に任命する。これからも励むように」
「はっ!アンナ様の専属騎士の名に恥じぬよう精進していきます!」
王都の中央にデカデカと建てられているエリザート王国の初代王の時代から脈脈と王族が住んできた歴史ある城。
未だ敵対勢力が大勢いた当時、大勢の魔物や亜人などの攻勢を防ぎきった歴史を持っている。
未だ城壁には大量の兵器が備えつけられており、城内も迂闊に入り込んだら命の危険がある罠が幾つもしかけられている。
王城 ラーサイン。
見た目よりも戦う事に重きを置いている、武装されている王城である。
その王城の中の一室で私リーシアは褒章を受けていた。
先日のイザルの捕縛の後、アンナ王女は私が一人でイザルを捕まえた事にした。
そしてその手柄を元に私を出世させ、アンナ王女の側近である専属騎士に推薦した。
普通ならいくら大物賞金首であるイザルを捕まえたといっても、ここまでトントン拍子に話が進むなんてありえない。
この国のどこでも言える事だが皆出世に必死で互いに足を引っ張りあっていて、中々出世なんて出来やしない。
だがアンナ王女は事前に自身の王族という立場とサラが掴んだ他人の弱みを巧みに使い、周りへの根回しを完璧にしていた。
そのため私への妨害は全く無く、こうして褒章を受ける事が出来た。
....改めてアンナ王女の凄さが身に染みて分かった。
もし私一人だったら歯牙にも掛けられず、軽く流されるか他の世渡りが上手いやつに手柄を横取りされていただろう。
こうゆう風に周りを巻き込んで上手く動かせる人が上に立つべきなんだな。
...まだアンナ王女の事を完璧に信頼した訳ではないけど、少なくともアンナ王女に上に立つ資格がある事は良く分かった。
ふ〜疲れた.....
私の褒章式が一通り終わって式に集まった人達が帰っていく中私は深い息を吐いて強張って身体から力を抜いた。
普段は切った張ったの戦場にばかりいるからこうゆう場所には慣れていないんだよなぁ。
周りには自分よりも格上の騎士や貴族ばかりで、何かやらかしてしまわないかとず〜っと緊張してたし。
アンナ王女からは「そんなに緊張しなくていいよ、どうせ形だけの式典だし」って事前に言われていたけど、ああ〜緊張した。
「おっと〜リーシアちゃん発見!俺様とお喋りしようぜ〜!!」
うげっ....面倒臭いのに見つかった。
私が一息ついていると一人の男が近づいてきた。
全身を金色でゴテゴテと固めていて、離れたところからでも見つけるのに苦労しない格好をしている。
そんな悪趣味な格好をしているこの男は私と同期の騎士であるフージス=ナザレ。
私が騎士になってから何かと付き纏ってくるうざったらしい男だ。
「うるさいな、疲れていてお前の相手をする体力がないんだ。さっさとどっか行け」
「おいおい〜つれないな〜。折角同期である俺様が態々お前の出世を祝うために来てやったんだ。少しは歓迎してくれてもいいんじゃないの〜リーシアちゃん」
「おい私に気安く触れるな。それに前に何度も言ったけど馴れ馴れしく私の事をちゃん付けで呼ぶな、はっ倒すぞ」
フージスの野郎が馴れ馴れしく私に肩を組んできたので跳ね除け、睨みつけた。
私の睨みを受けてフージスのゴミクズは軽い調子で肩を竦めた。
「ふふつれないなぁ、だけどそんな反抗的なお前だからこそ俺様に無理矢理にでも跪かせたくなる。お前は一体どんな顔で俺様に屈し、寝床に連れ込んだらどんな風に泣き叫ぶか...くくっ、想像するだけで堪んないよ」
「ちっ!この変態がさっさとくたばれ」
この男フージスはこの国でそこそこの格の貴族であるナザレ家の生まれだ。
その実家の名の力と自身の高い世渡りの力を巧みに使い、私と同じ若輩の身ながら第3騎士団の副団長にまで昇格していった。
それからはもうやりたい放題。
夜の街の住人をタダ食いし、それに飽きたら街の女性を食い散らかした。
被害を訴えた人達を家と役職を使って無理矢理黙らせた。
そんな傍若無人な行いを私は黙って見過ごす程、騎士として落ちぶれていない。
夜の街でフージスに遊ばれた人達や被害に遭った街の女性に被害届けを書いてもらいそれを上に提出した。
だがフージスの方が上手だった。
上層部に巧みに根回しをして私が提出した書類を握り潰した。
だがフージスの方も無傷では済まなかった。
上司に弱みを握られた上に派手に遊ぶ事も出来なくなった、ざまぁみろ。
それからこいつは私を目の敵にして事ある事に私を落とし入れようとしてきた。
ある時はミスを捏造されて減俸されたり、魔物との戦いの最中攻撃してきて私を殺そうとしてきたり、上司にある事ない事吹きこんで私に辛い仕事を回る様にしてきたり、etc、etc.....。
こいつが私に対してしてきた嫌がらせを数えたりしたらキリがない。
しかもこいつは自分が関与した事が確実にバレない方法を取っている。
なので私がどんなに懸命に探してもこいつが私に対して嫌がらせをしているという証拠が全く掴めなかった。
まぁ...もし証拠を掴んでいたとしてもまた捻り潰されるだろうが。
だがこんなゴミクズ野郎に屈してたまるか。
その一心で今まで耐えてきた。
その結果アンナ王女に見込まれて部下に誘われて、専属騎士に出世した。
これで騎士団での地位は私の方が上だ、ざまぁみさらせ!
「まぁいいこれで私の方が立場が上になったんだ。せいぜい言葉使いには気をつけるんだな」
「....ああ、これからは気をつけさせて頂きますよ。リーシアさん」
フージスは仰々しい態度で私に頭を下げてきた。
言葉使いは形だけ丁寧だけど悔しがってのがバレバレだ。
体が少し震えている上にこいつ全く目が笑ってない。
ふふっ...こいつのこんな顔が見れるなんてな。
式典は堅苦しくて疲れたけど、最後にいい物見れた。
私は嫌いな男の悔しがっている姿が見れて少し機嫌が良くなった。
「さて、じゃあ私は疲れたからこの辺で失礼するよ。それじゃあなフージス」
「...ああまたなリーシア」
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