博打狂い狐と副社長への懇願
「はぁ〜先物取引に手を出してお金を溶かしたなんて...呆れて物も言えない」
ウチが会社の金の用途を話すとセクリトは呆れて頭を抱えてしまった。
「その...ウチも会社の金を少しでも増やそうとしたんや。ウチが買ったのは本来ならまず損しない鉄板の物を買ったんや。やけど季節外れの天候のせいで全部台無しになってしもうて、大損こいてしもうたんや....」
「はぁ〜タマモあんたは商才が空っきしなんだから商売に関わるなっていつも言ってるだろう。商売は私に任せていればいいんだよ」
「だって...いつもセクリトに金稼ぎを任せていて悪いと思っていたんや。やからウチもドカンと大金を儲けて頼りになる所を見せたかったんよ....」
「はぁ〜全く馬鹿だなタマモは。確かにあんたは商才が無くて金稼ぎに関しては全く頼りにならない。だが貴方には他に出来る事が幾つもあるじゃないか、それに金稼ぎは私がいる。金稼ぎは私に任せて、貴方は出来る事をしてくれればいい。そうやってこの会社『タマモ金融』は上手くやってきたんじゃないか。余計な事はしないであんたはいつもの仕事をしてくれればいいんだよ」
「そうやな...ウチも流石に今回の件で懲りたわ。慣れないことはするもんやないという事が良く分かったわ。これからは大人しくすべき仕事をするとするわ」
「そうしてくれ、あんたは大人しく回収業務に勤しんでくれればいい。後の事は私が上手く回していくから余計な事はしないでくれ」
「分かったよ、その方がこの会社のためやからな」
闇金会社タマモ金融
ウチ、タマモが社長でセクリトが副社長な会社だ。
闇金の名の通りこの国に認可されていない貸金屋だ。
主にキチンとした貸金屋に相手にされない者達や、足がつかない金を必要とする者達を取引相手にしている。
その客層の悪さからまともに利息や元金の返済を誤魔化そうとする者が後を絶たない。
特に貴族連中はウチみたいな亜人を下に見とるから、直ぐに借金を踏み倒そうとしやがるわ。
だが貸した金を返して貰えんかったら商売あがったり。
貸した金はどんな手を使っても必ず回収せなあかん。
例え相手がどんなに偉い貴族様だったとしてもや。
やけど客層が悪いせいで金を返すどころか借金を踏み倒そうとする者が多い。
さらに最低な客どもは金を回収しに来た回収人を殺して借金の事を有耶無耶にしようとする奴等がいる。
そんな奴等が多い事!
本当なら貸す客を選んでそんな事態を避けたいとこやけど。
ウチの店は闇営業。
貸す相手を選んでなんかいられないわ。
だからどんな相手でも金を貸して、それを回収出来る手段が必要なんや。
てなわけでウチの出番ちゅうわけや。
ウチは負債者の元に赴いて元金や利息を回収する。
例え相手がどんな相手でどんな手段を使おうともや。
だが幾らウチでも相手が金を持っていなかったらお手上げや。
そんな時は債務者の身柄を押さえてセクリトの元に連れていくんや。
そうすればセクリトがその債務者を金に変えるんや。
鉱山に送ったり、人体実験のモルモットを欲しがっている研究所に売ったりなど様々なルートに債務者を送って金を稼いだる。
そんな風にウチが金や身柄の回収。
セクリトが金を得るための手段の確立や、資金運用、組織の運営などを行なっている。
....ウチが回収の仕事しかしてないのにセクリトはウチとは比べ物にならん程沢山の仕事をしとる。
やからウチが金を大量に稼げばセクリトの仕事が少しでも楽になるかと思うて先物取引に手を出したんやが....
結果的にセクリトの仕事を増やすだけになってしもうたわ。
これからは余計な事はしないで回収の仕事に専念するとするかな。
「さて、それじゃ話も済んだ事やしウチはこれで...」
「待て何帰ろうとしてんだよ、話はまだ終わってない」
ウチが回れ右して帰ろうとしたらセクリトに静止された。
ちっ!
話は終わったからどさくさに紛れて逃げられるかと思うたけど、流石にそうは問屋が下さなかったか。
「さてタマモには損害分を返すまで働いてもらおうかな。まぁこの金額なら飲まず食わずで24時間死ぬ気で働いて2ヶ月てところかな」
「いや〜2ヶ月も飲まず食わずで働くなんて芸当ウチが出来るわけないやん、もうちょい手心を加えて貰えんやろうか?」
「アホ、これはあんたが二度と馬鹿な真似をしないようにするための罰なんだから手心を加えるわけないだろ。もし....仕事をサボったらぶっ殺すからな。分かったらさっさと仕事に行ってこい馬鹿狐」
ウチが猫撫で声で媚びてもセクリトは取り付く島もない。
ウチに2ヶ月も飲まず食わずで働けと言ってきた。
ウチにこの指示を受けないという選択肢はない。
もし逆らったら...何をされるか分かったもんやない。
セクリトはウチと長い付き合いでウチの弱点を知り尽くしとる。
それにウチは今までも何度もやらかしていてその度にセクリトにお仕置きされとる。
やからセクリトがいないところでこっそりと指示に逆らうのは兎も角、今回みたいにセクリトから直接された命令にウチはもう逆らえん。
....やけど2ヶ月も飲まず食わずで働くなんて事ウチには絶対出来へん。
なんとか罰を軽くしてもらわんと。
ウチはセクリトの側に駆け寄ると土下座をした。
「セクリト、なんとか処分を変えてもらえないやろうか!2ヶ月も飲まず食わずで働くなんてウチ死んでまうよ!どうかお慈悲を、お慈悲を〜!」
ウチが渾身の土下座をしていると、セクリトは呆れて溜息を吐いた。
「は〜情けない。仮にも会社のトップなんだから土下座なんて真似するんなよ。さっさと頭を上げなよ」
「いんや!セクリトが別の罰を出してくれるまでウチは絶対に動かんぞ!ウチを動かしたかったら『飲まず食わずで2ヶ月労働』以外の罰にしてくれや!」
セクリトがウチに頭を上げるように言ってきたが、ウチは頑なに土下座をやめんかった。
ウチの意志が固い事を知るとセクリトは深いため息をついた。
「は〜もう分かった、分かったよ。飲まず食わずで2ヶ月労働はしなくていい。代わりに一仕事してくれれば今回の件水に流すよ」
「ホンマか!後でやっぱり無しなんて言うても受け付けんからな!」
「ああそんな事は言わないよ。だけど私としては2ヶ月死ぬ気で働く方がまだマシだと思うけどね」
そう言うとセクリトは机の中から一つの書類を取り出した。
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