戦いのあっけない幕切れ

「.....ユウ何の真似や?」


いきなり腕を掴んできたユウに対してウチは真意を問いただした。


「勝負はお前の負けだ。さっさとイザルを引き渡して帰るぞ」


「はぁ!?何を言ってるんや!?ウチはまだやれるで、それなのに何で負けを認めなあかんねん!」


「いやどう見たってお前に勝ち目なんかないよ、これ以上はお前が無駄な傷を負うだけだ。金は惜しいけど、仕方ない。諦めるんだな」


「何言ってんねん!ウチにはまだ打つ手がある。それを使えば問題なく勝てるんやで!何で諦めなあかんねん!」


「馬鹿、それが1番の問題なんだよ。打つ手ってどうせ奥の手の事だろうけど、それはお前の正体をバラしてしまう可能性が高い諸刃の剣。もし使ってお前の正体がバレたら大変な事になるぞ」


「問題ないわ、こいつらを皆殺しにすればええ。そうすれば死人に口なし、誰もウチの正体を話す恐れはないやろ」


「は〜少しは落ち着けこの馬鹿!」


「あ痛っ!!」


ごつん!

ユウはウチの頭をこづいた。

いっ痛〜!!

ウチはあまりの痛みに涙目になりながら、頭を押さえながらへたりこんだ。


「な、何するんや!いきなり殴るなんて、あ痛〜目から星が出たで!」


「お前が馬鹿なこと口走るからだ。お前が奥の手を使ってもし目撃者を残したらどうすんだ、直ぐそこで王女も見てるんだぞ。それによしんば皆殺しに成功したとしても、王女を殺したとなると後がかなり面倒な事になる。もう諦めろ」


「うう、けどここまで傷を負わされて引き下がるのは...それにこの機会を逃したらもう金を稼ぐ機会がなくなってまう」


「その傷ば相手を舐めた罰として甘んじて受け止めるんだな。これに懲りたら戦う時は常に万全の準備をする事を心掛けるんだな。金の事は俺が一緒に付いて行ってやるから誠心誠意謝り倒すんだな」


「え〜そんなぁ....なんとかならん?」


「ならないな。これ以上我儘言うなら俺が力ずくで連れ帰るぞ。それでもまだこれ以上やるのか?」


そう言うとユウはウチの手を離して武器に手を当てて戦闘体勢に入った。

ウチとユウはもう10年以上の付き合いになる。

ユウの強さは良〜く知っとる。

ユウは滅茶苦茶強い。

今のウチは装備も不完全な上に手負いや、例え奥の手を使ったとしても間違いなくユウには勝てないやろうな。

................は〜仕方ないなぁ。

ウチは大きく溜息を吐いた後、全身に溜めていた魔力を消した。

ウチが魔力を消したのを確認したユウは構えを解いた。


「分かったよ!ウチの負けや大人しく帰るよ!」


「分かったならいい」


「けどウチが副社長に謝る時には付いてきてくれよ、一人で怒られるのは本当に怖いねん!頼むから付いてきてくれよ!」


「分かったよ、お前が怒られている時に隣にいてやるよ。そうすれば少しは副社長の怒りもマシになるかもな。まぁかなり期待は薄いけどな」


「だよなぁ、あいつは本当に容赦がないからなぁ〜。あ〜気が重い」


「元々はお前が博打で作った借金だ。自分のケツは自分で拭くんだな。さて...というわけで俺達はこれで失礼させてもらう。イザルの身柄は王女様に渡してあるから安心してくれ、それじゃあタマモ行くぞ」


「おう分かったわ。.....おいお前ら一つ言っておくで!今日の所は負けを認めておいてやるわ!けど覚えておくんやな、ウチは執念深い。今日の屈辱は絶対に忘れんで!絶対、絶対、ぜ〜っ対に!!!この借りは近いうちに返させてもらうからな!覚悟しときぃ!!」


そうしてウチとユウはこの場から去った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ふ〜助かった...」


私リーシアはタマモとユウが去った事で気が抜けてしまい、へたりこんでしまった。

助かった...何なんださっきのタマモは。

あの状態のタマモに勝てる気が全くしなかった。

もしあのままタマモと戦っていたら...うう想像するのも恐ろしいな。


「お〜い!無事か!」


私がほっと一息ついているとアンナ王女がイザルを引きづりながら私達の元に来た。


「あ〜重かった!」


王女は引きずってきたイザルを私達の前に放り投げた。


「あの二人本当にイザルの身柄を置いていってくれたんだな」


「あいつらはこの王国では犯罪者ではあるけど決して悪人じゃない。一度した約束は破らないよ」


「そうか...まぁこれで当初の計画通りイザルの身柄を確保出来たわけだね。これで計画が一つ前に進んだ」


「そうだ、このイザル確保の手柄を元に君を私の専属に出来る。そうすれば君を伴って行動しても目立つ事はなくなる。これでもっと攻めた行動が出来る様になるよ。リーシアそれにサラ、これからも私に力を貸してね」


アンナは私達に向かって片目を瞑って下を出して、私達に頼んできた。

...最初は半信半疑だったがアンナ王女のいう事を聞いたら、確かに格上のタマモ相手に戦えた。

アンナ王女は確かにこの王国を変えられるかもしれない。

どうせ私の足りない頭じゃこの国を救う考えなんか出てこないんだ。

これからもアンナ王女の作戦に従うとしよう。


「勿論これからも粉骨砕身貴方に力を貸しますよ」


「ありがとうサラは?」


「は〜私が今更降りるわけないでしょ。つまらない確認なんかしないで下さいよ」


「それもそうだな。さ〜てこれから忙しくなるぞ!」

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