博打狂い狐 対 不屈騎士 3

よしよし上手くいった。

私リーシアはタマモに深傷を負わせて追い詰めていた。

私とアンナ様はイザルを確保しに此処に来た。

アンナ様は私を専属騎士にすると言っていたが、いきなり新人の騎士である私を王女であるアンナ様の専属にするのは体裁が悪い。

まぁ王族なので無理矢理出来ない事はないんだろうけど、後の事を考えると目立つのは良くない。

そこで大物賞金首であるイザルを私が捕まえて、その手柄で専属騎士に任命するらしい。

イザルの居所はサラが前々から掴んでいていつでも襲いに行けるらしいので準備を整えてから倒しに行こうとアンナ王女は提案した。

だが私は仕事や課題なんかは後に回さずさっさと済ませてしまうタイプ。

準備なんかいらないからさっさとイザルを倒しに行こうと提案した。

最初は私を止めていた王女だったけど、イザルの調査から戻ったサラから話を聞いたら急に考えが変わった。


「やっぱり明日イザルを捕まえに行こうか」


「どうしたんです急に?あれだけ私が行こうと言っても止めたのに」


「本当はじっくり準備をしてイザルを狩に行く予定だったけど予定変更。明日行く、そうすれば滅多に戦えない相手と戦える。これを逃す手はないよ」


「滅多に戦えない相手?それって誰ですか?」


「今日会ったタマモだよ、あいつが偶然イザルの住処をさっき見つけたのをサラが確認した。タマモは金にがめつい明日にもイザルを狩に来るでしょ。だから明日、タマモがイザルを倒したら喧嘩吹っかけてタマモとやっちゃえ!」


「はあ!?タマモとやる!?」


私はアンナ王女の提案に耳を疑った。

今日会議で顔を合わせたタマモは王都で名を轟かしている有名人。

この王都では上から数えた方が早い程の実力者だ。

つい最近、一人前とされる4位階になったばかりの私では手も足も出ないだろう。


「いやいやいや!私がタマモ相手に勝てる訳ないでしょう、自殺行為ですよ!」


「まぁ確かに今のまま戦ったら勝ち目はないね。けどこれを使えば少しはいいとこいくんじゃない?」


私が慌ててタマモに勝てないと主張すると、アンナ様は持っていた剣を私に渡した。


「...これは?」


「あげる。私の部下になってくれたお礼みたいなもんだよ。君に最も相応しい魔剣を持ってきた」


「魔剣!?そんな高い物いいんですか!?」


「いいよ〜城の宝物庫には魔剣はまだ何本もあるし。それに...その魔剣は使い勝手が悪いから誰も使わなくて死蔵されていた物なんだよ。だから使っちゃって平気平気」


「使い勝手が悪い?それって大丈夫なんですか?自慢じゃないですが私はあまり頭がいい方じゃないです。だからあんまりややこしい能力の魔剣だと使いこなせないと思いますよ」


「ああ大丈夫能力は身体能力の強化とシンプルなものだよ。問題はその魔剣の燃費の悪さだよ。その魔剣の身体能力の強化は凄いんだけど、その分大量に体力を消費するという欠点があってね。普通の人が使ったら直ぐに体力が尽きて戦えなくなる。だから誰もこの魔剣を使え無かったんだ。けどリーシアなら能力で体力が尽きる心配はないからこの魔剣を使えると思うんだよ。ほら少し試してみな」


私はアンナ王女から受け取った魔剣に魔力を流して能力を発動してみた。

その瞬間体の奥から信じられないぐらいの力が湧き上がってきた。

五感は研ぎ澄まされ体は軽く頭は冴えた。

一気に自分の強さが上がったのを確信した。

ここまで私の能力を上げてくれるなんて...この魔剣本当に凄いな。

確かに体力は一気に奪われているけど、私の溜めの能力で貯蓄してある体力を使えば長時間の使用も問題ないな。

これはいい物貰った!

私が魔剣の能力に感心していると、アンナ様が声をかけてきた。


「どう、その魔剣を使ってみた感想は?


「凄いですよ!!体中から力が溢れてくるのを感じます!!私なら長時間の使用も出来そうですし、本当にこんないい物下さってありがとうございます!」


「いいってことよ。さてその魔剣とサラの不可視で的確なサポート。この二つがあればタマモともいい勝負が出来そうじゃないか?」


てな感じで私はアンナ王女にまんまと丸め込まれてしまった。

そうして次の日イザルの住処に赴き、タマモがイザルを倒したのを見計らって顔を見せたのだ。

誤算だったのはタマモが一人ではなくてユウと一緒だった事だ。

タマモ一人でもギリギリ勝てるかどうかなのにユウも一緒だともう100パー勝てないわ。

私が諦めて帰ろうとしたが、そこでアンナ王女がタマモとユウを丸め込み私とタマモの戦いを上手くセッティングしてくれた。

そうして私はタマモと戦闘を始めた。


私が相対しているタマモは王都でかなり実力者として知られた人物。

その評判はよく耳にしていた。

実際に相対してその評判が間違っていなかったのを理解した。

位階、戦闘経験、装備どれを取っても私が勝っている所はない。

本来なら100回戦って100回負ける相手だ。

だが今日はいつもとは事情が違っている。

サラからの情報では今日のタマモは博打に負けたせいで身包みを剥がされ碌な装備をしていない。

それに対して私は万全の装備に加えて、昨日王女様に貰った魔剣がある。

この魔剣は使用者の身体能力を限界まで引き上げてくれる優れ物。

位階の差を1位なら埋めてくれるだろう。

それにタマモは気付いていないだろうけど、私は一人で戦っているわけじゃない。

能力で姿を見えなくしているサラが手助けをしてくれている。

見えてはいないけど、サラが絶妙なタイミングで援護をしてくれているのだろう。

足を引っ掛けて転ばせたり、攻撃して体を止めたりなどタマモの行動を阻害してくれている。

....半信半疑だったけど確かにアンナ様の言う通りサラと組めば充分タマモと渡りあえる。

アンナ様の口車に乗って此処に来たのは正解だった。

これはいい戦闘経験を積む事が出来そうだ。

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