博打狂い狐 対 不屈騎士 2

「おりゃあ!!!」


「うおっ、危な!」


切り掛かってきたリーシアの剣をウチは危うく避けた。

剣を持ってからさき程までの攻防の時とは別人の様に動きのキレがええ。

....おかしいな昨日王女と戦ってるのを見ていたけど、ここまで動きは良く無かったと思うんやが。

それに昨日見た感じやとリーシアの能力は体の傷を治す系、体の動きが上がるものやないと思うんやが。

さっき受けたパンチもウチの予想通りの威力やったし。

昨日の今日で急成長するのも考え難いし....

となると考えられる原因はあの剣やな。


ウチは攻撃を避けながらリーシアが手に持っている剣を見た。

あの剣がリーシアの身体能力を上げてるんやな。

一目見ただけでひしひしと魔力をあの剣から感じるわ。

どうやらあれは魔剣の一種みたいやな。


魔剣とは使用者に特別な力を与える武器の総称。

魔剣とはいうけど剣だけではなく槍や弓なども含む。

身体能力の強化なんかは魔剣能力なら珍しくもない。

あの剣が魔剣ならリーシアの強さの理由も納得が出来るわ。

...昨日王女との戦いで魔剣を使わなかったのをみると、その魔剣は王女に貰ったんやろうな。

魔剣を作れる者は殆どおらん。

やから魔剣はエグい程高い、一騎士であるリーシアにはとても手が出せんやろ。

やけど王女なら話が別や魔剣の1、2本用意するのは容易いやろ。

普通の魔剣なら少し身体能力を上げる程度やが、ここまで動きのキレを良くするなんて相当いい魔剣を貰ったんやな。

まぁ....


「それでもウチにはまだまだ敵わなんな!」


「がっ!」


ウチはリーシアの攻撃を避け反撃を叩きこんだ。

魔剣を使う事で確かに身体能力は向上しとる。

けど向上したとはいってもウチとの元々の実力さがありすぎる。

リーシアはいくら有望株と民主に期待されてはいるがまだまだ騎士に成り立てのひよっこや。

位階も低ければ、戦闘経験も全然足りとらん。

まぁ予想はしとったけどこんなんじゃウチには遠く及ばんな。

これじゃあ奥の手どころか、ウチの能力を使う必要もないな。

まぁ素で相手してやるわ、それならウチの遊び相手ぐらいにはなるやろ。


ドカッ!ボコッ!ドスッ!


「おらっ!さっさと倒れろや!」


あれからウチは殴り蹴るの暴行を一方的にしていた。

普通ならとうに地面に倒れ伏してもおかしくない様なダメージを与えとるんやが....懲りずにリーシア派立ち上がってくるわ。

昨日も見てだけど本当にしぶといやつやな...

もう面倒いわ。

最初は少し面白かったけど...自分より弱い奴を手加減して戦うのも飽きてきたわ。

あ〜もう面倒臭いなぁ〜。

気絶させないと直ぐに傷が治ってまい何度も向かってくるからこいつとの戦いはキリが無いわ。

昨日見た感じやと再生にも限度があると思ったんやが、昨日の戦いよりも酷い怪我を負わせとるのに直ぐに回復しとる。

魔剣で回復力も上がっとるのか?

ああもう面倒いわ。

よし決めた。

ウチは息を整えているリーシアに提案した。


「さてリーシアはんここで一つ相談があるんや。もうこの辺で辞めにしないか?もうここまでの攻防であんたがウチに勝てないのは良く分かったやろ。これ以上は無駄な戦いやろ」


「何を!まだまだこれからだ!」


「は〜ならこれからは殺す気で行くで、やないとあんたしぶといからいつ戦いが終わるか分からんからな。これ以上は戦うのはもうごめんや。流石に殺すのは気の毒やからこうして忠告しとるんやが...それでもまだ戦うんか?」


「当然だ!私は勝つのを諦めないぞ!」


「は〜じゃあ仕方ない。死んでも恨まないでくれよ」


ウチは手に魔力を集め始める。

ウチの種族は火の魔法に適性があり、火の魔法を高威力で放つ事が出来る。

しかもウチは高位階者。

他の同族と比べて遥かに高威力の火魔法を扱える。

ウチが本気で火魔法を使えば人間なんて消し炭に出来る。

一応周りに燃え移らん様に加減はするけど、それでもリーシアがこれを喰らえば間違いなく戦闘不能にはなるやろ。


「じゃあこれで仕舞や!」


ウチは手に集めた魔力をリーシアに向かって放とうとした。


「今だ!やれぇ!」


はっ?何を言って、うおっ!

ウチの足が急にもつれた。

まるで何かに躓いたようにウチは地面に倒れ込み始めた。

やばい受け身取らないと!

ウチは何とか顔から倒れ込まない様に手を前に出した。

よし!これでなんとか受け身は取れへぶっ!

ウチの頭にまるで人が乗ってきたかの様な重みが急に加わりウチは受け身が取れずに顔から地面に激突した。

痛っ!くそ鼻打った!

ウチは急いで立ち上がり周りを見渡した。

足をぶつける様な段差や石は周りにないってのに、ウチはなんで転んだんや?


「おらっ!余所見するな!」


ウチが周りを見回していると、リーシアがウチに突っ込んできた。

くそっ!とりあえず応戦せな!

ウチはリーシアを迎えうとうとした。


「はぶっ!え何がぎゃあ!!」


ウチはいきなり右頬に痛みが走りリーシアの攻撃に対する防御が遅れてしもうた。

くそっ!モロに切られてしもうた。

何とか急所は避けれたけど、結構いいのをもらってしもうた...


「お〜いタマモ大丈夫か!無理そうなら手を貸すぞ」


「余計なお世話や!こいつはウチが片付ける!ユウは黙って見ときぃ!」


「へいへい了解〜」


さてユウに引っ込んだらというたのはええけど、これからどないしよう...

さっきの躓きや、右頬の痛みは大した威力やない。

けど不意にあれがきたら体が固まっちまう、その瞬間また斬りかかられたら防御出来へん。

あと何回かモロに切られたらウチも危ない。

何とか原因を探らんと....一体何が起こっとるんや?

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