第三王女との交渉
「...王女様と騎士様がこんな汚い場所に何の用や?ここはあんたら二人には場違いだと思うで、回れ右して帰ることをウチはおススメするわ」
ウチ、タマモは急に現れた王女とリーシアに警戒しながら、此処に来た理由を聞いてみた。
「そうはいかないんだよ、私はそこのボロ雑巾に用があるんだよ」
ウチがここから離れる様に促したけど王女には通じず最も触れて欲しくない所、ウチの足元の黒焦げのイザルを指差した。
チッ!やっぱり王女はこいつが目当てか。
王女ともあろう者がこんな汚い場所にくる理由なんてこいつぐらいしかないやろうしな。
けど...どうやってこいつの事を見つけたんや?
こいつ戦闘力はそこそこやけど身を隠すのは抜群に上手かった。
ウチみたいに偶然出会あって跡をつけるぐらいじゃないとこの隠れ家を見つけることは出来ないと思うんやけど.....まぁええ今はその事は後回しや。
今優先すべきはこのイザルの身柄についてや。
ウチも金が必要な身、ここでイザルの身柄を素直に引き渡す訳にはいかんわ。
「王女様このボロ雑巾はただの浮浪者やで、ただ喧嘩売られたから少し懲らしめただけや。王女様が気にかけるような相手やないで」
「ああ、いい。そういう誤魔化しは時間の無駄だ。こっちは全部把握していて此処にきているんだ。その黒焦げの物体がイザルなのは分かってる。そいつをこっちに渡してくれ、そいつは私のこれからの計画に必要不可欠なんだ」
「あ〜.....」
くそっ、誤魔化すのは無理みたいやな。
さてどないしようか...ウチは金が必要な身、イザルの懸賞金を諦めるという選択肢はないな。
ここでイザルの懸賞金を逃すと副社長が戻って来るまでに必要な額を稼ぐのが不可能になってまう。
ううっ...あの副社長に大金を失った事がバレたらどんなに怒られるか...!!
このイザルの懸賞金は絶対に逃せん!!
かと言って...力ずくで奪っていくのも厳しいなぁ。
この国の貴族は皆執念深い。
それが王族ともなれば此処でイザルを奪ったら後でどんなしっぺ返しが待っているか....ううっ、くわばらくわばら。
触らぬ神に何とやら、力ずくで奪うのは論外やな。
となると残された手段は...可能性は低いけど交渉するしかないか。
はぁ〜ユウがイザルを倒してくれたまでは良かったけど、ここにきてこんな面倒があるなんてな。
気が重いわぁ〜。
「悪いけど、簡単にはこいつは渡せないな」
ウチと王女のやり取りを黙って見ていたユウが口を挟み、大破した窓から飛び降りウチの側に着地した。
「一応こいつ倒すのにもそこそこ骨は折ってるんでね。それに俺達もこいつの身柄が必要なんでね、それを『はいどうぞ』と簡単には渡せないんだよ」
「.....勿論ただとは言わない、充分な御礼を支払う用意はある」
「そうか、じゃあ大金貨50枚くれたらこいつを渡してやるよ」
「「大金貨50枚!!??」」
ユウがあんまりにも大金を要求するからウチとリーシアが思わず驚いた声をあげてしもうた。
ユウはイザル本来の懸賞金の10倍の額を要求した。
これはあんまりにも吹っかけすぎやろ。
ウチが呆れていると、王女は少し考え込んだ。
「.....うん、一つ提案がある。少し賭けをしないか?」
「賭け?」
「そう賭け。私はこのまま大金貨50枚をすんなり渡すのも悔しい。だから一つこのリーシアとタマモで勝負しないか?タマモが勝ったら諦めて大金貨50枚いや100枚払う。そのかわりリーシアが勝ったらただでそいつの身柄を渡してくれ。どうだこの賭け乗るか?」
「....少し考えさせてくれ」
「どうぞ〜でもなるべく早く決めてね」
「分かってるよ」
王女と話していたユウとウチが相談を始めた。
「でどうする?」
「そりゃあ当然向こうの提案に乗るべきやろ!勝ったら大金貨100枚やで!乗らないという選択肢はないやろ!」
「だけどここまで好条件は怪し過ぎるだろ?多分向こうにはなんらかの勝算があると思うぞ」
「かもなぁなんらかの策があるのかもしれへん、けどなユウ。アンタはウチが負けると少しでも思っとるのか?」
「.......いや騎士団長ならいざ知らず、リーシア程度ならまず負けないだろ。少し不安要素はあるけどまぁタマモなら大丈夫だろ」
「せやろ!じゃあ賭けを受けるって事で決まりや!お〜い王女様!提案を受けるで、リーシアはん勝負や!」
「分かった、じゃあリーシア頼むよ。お金は出来るだけ払いたくないから頑張ってね」
「はいベストを尽くします」
リーシアがウチに近づいてきた。
ウチも剣を抜こうと腰に手を当てたが何も掴め無かった。
そういえば賭場で身包みを剥がされたせいで碌な武器今持ってないんだったわ。
仕方ない素手でやるしかないわ。
まぁウチよりも位階が低いリーシア相手にするにはええハンデやろ。
そうしてウチとリーシアの戦いが始まった。
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