ユウ 対 人斬りイザル

「イザルはあそこや」


宿屋を出て暫く移動し、下町の汚い家をタマモは指差した。

こんな場所に潜伏してるなら、普通に探してたらそりゃ見つからんわな。


「じゃあ俺が正面から乗り込むからタマモはイザルが逃げないように裏に行って逃げ道塞いどいてくれ」


「了解〜それじゃあユウ、くれぐれも怪我しないように気をつけてな」


「おう、じゃあまた後で」


俺とタマモは表と裏に分かれてイザルを挟み撃ちにする事にした。

そのまま突撃しても逃がさないだろうが念には念を入れておく。

ここまですればよっぽどの猛者でもない限り、逃しはしないだろ。

タマモが俺から分かれて数分経った。

そろそろいいだろ。

俺はタマモが裏に着いたのを見計らってイザルが潜伏している家の正面玄関に近づいた。


さてさて...部屋にはイザルはいるかな?

俺はドア越しに家の中の気配を探った。

家の中には....一人いるな、こいつがイザルか?

というか今更だけど..よくよく考えてみたら俺イザルの気配がどんなのか知らなかったわ。

今この家にいるのがイザルかどうか分かんないわ。

あ〜どうしよう違う人の家だったら、何かイザルかどうか判別する方法ないかな?

あ〜まぁいいか面倒臭い、違ったら全部タマモのせいにして逃げよ。

よしっ!じゃあチャッチャッと終わらせよう。

は〜フンっ!

ガッシャァン!!

俺はドアを殴って吹き飛ばした。

そのまま家に乗り込み、気配を感じた部屋に急行した。

よしっ、ビンゴ!!

部屋に行って見るとさっきまで寝ていたのか、寝巻きで髪がボサボサの中年がベットから這い出ていた。

黒髪の短髪、ボサボサの髭に虚ろな目に中肉中背の中年。

手配書に乗っていた写真のまんまだ、良かった〜違う人の家じゃなくて。

俺はほっと一息ついた。

イザルは突然家に入ってきた俺に目を白黒して、目的を聞いてきた。


「お、お前いきなりなんなんだよ!俺に一体何の用だ!!」


「何ってお前みたいなゴミ屑にある用件なんて一つしかないだろ。お前とっ捕まえて報奨金をもらうんだよ。無駄な抵抗はやめてくれよ、そうすればいらない手間が省けて楽に済む。それにお前も痛い目をみずに済む」


「ああん!!いきなり人の家に乗り込んできて何をほざいてやがる!!!手前ぶっ殺してやる!!」


イザルはベッドの脇に置いていた剣を手に取り、鞘から刃を抜いて俺に切り掛かった。

おっと随分早いな。

俺は攻撃を避けながらイザルの実力の高さに驚いた。

イザルが俺に攻撃する為の一連の動きの無駄の無さや速さからイザルの実力の高さが分かる。

位階は....3いや4はあるな。

この前王女と戦っていたリーシアぐらいの位階だな。

は〜面倒臭いなぁ、こんな事になるならタマモに正面から突入させれば良かった。

とんだ貧乏くじを引かされた。


「死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇ!!!!!」


イザルが俺を目を血走らせながら剣で俺に襲い掛かってきた。

自分の部屋の物がいくら壊れても構わず、思いっきり剣を振り回している。

おーおー随分と派手に暴れるな。

これ貸し家だったら敷金完全に帰ってこないな。


「ああっ!ちょこまかと逃げやがって!手前逃げないでさっさと俺にぶった斬られろよ!!」


「嫌に決まってんだろ、俺を斬りたきゃ自分の実力で頑張れ。まぁお前程度の実力じゃ無理な話しだけど」


「ああもう殺す!絶対に殺す!!こうなったら俺の能力でお前をズタズタに切り裂いてやる!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「お〜お〜随分派手にやっとるな」


ウチ、タマモはイザルの家の裏口で逃げないように見張っていたら家から派手な戦闘音が鳴り始めた。

ユウがイザルと戦闘を始めたんやろうな。

物が壊れるような音や、知らないおっさんの雄叫びが時々聞こえてくるわ。

聞こえる音からして随分派手な戦いをしとるみたいやな。

あ〜あつまんないなぁ。

万が一に備えて裏にいて逃げ道を塞いどるけど、どうせユウからは逃げられないやろ。

ここにいてもやる事ないし、ウチもイザルと戦いたいわ。

よし、そうと決めたらさっさとあそこに乱入しようかな。

もたもたしとったら、ユウは直ぐに片付けてまう...

ピカっ!ゴロゴロゴロッ!!!

ウチが中に突入しようとした瞬間、眩しい光と共に轟音が鳴り響いた。

そして窓から黒焦げになったイザルが飛び出し、地面に投げ出された。

あ〜くそ遅かったか。

今のはユウが得意な雷魔法の光と音や。

あれが直撃したんや、イザルはお終いやな。

まぁ一応確認はしとこうかな。

ウチは飛び出してきた黒焦げのイザルに近付いて状態を確認した。

うん脈はある、一応生きているな。

良かった〜死んどったら引き渡した時の報奨金が満額でもらえなくなってまう。

流石ユウや、一応死なないように手加減はしとる頼りになる男や。


「お〜いタマモ!そいつ生きてるか!?」


ウチが感心しとると、イザルが飛び出してきた窓からユウが出てきて俺に声をかけてきた。


「おお微かだが息はあるで!」


「良かった!一応加減はしたけど当たりどころが悪かったら死んでたかもしれないからな」


「ああけど今にもこいつ死にそうや!早く引き渡した方がええで!」


「そうだな、それじゃあさっさと引き渡しに行」


「悪いんだけど、そいつこっちに渡してもらえない?」


「!?」


急にウチとユウ以外の声が近くから聞こえた。

ウチは慌てて声の方に振り向くと、昨日あったばかりのアンナ王女とリーシアがいた。

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