博打狂い狐との交渉

「....確かなのか?」


タマモが高額な懸賞金を見かけたと言ったので、俺は疑いの眼差しを向けた。

この国の賞金首達である程度の額を超えた奴らは捕まえるのが難しい。

高額の懸賞金がかけられた賞金首は騎士や賞金稼ぎに大金を目当てに追われる。

しかもこの国には絶対的な強者である騎士や賞金稼ぎが何人かいる。

そいつらを相手にして勝てる奴なんて殆どいない、その事を高額の賞金首達は重々理解している。

だから高額賞金首達は騎士や賞金稼ぎとまともに戦わず身を隠してやり過ごす。

ある者は一般市民に擬態し普通に生活を送り、ある者は地下深くに潜伏したりなど様々な方法で身を隠している。

そんな理由で王都で高額の賞金首を見つけるのは難しい。

かくいう俺も結構な賞金首であるため、身を隠す事や素性を偽る事に関してはかなりの自信がある。

その辺が上手く出来ないと王都では命が幾らあっても足りないからな。

だからかなりの額、大金貨3枚の懸賞金がかけられている大物賞金首を見つけたというタマモの発言が信じられないんだよな。

俺が疑惑の眼差しを向けると、タマモはムッと心外な表情を浮かべた。


「なんやウチを疑っとるのか。ウチが直接目で何度も確認しとるから間違いないで。いやぁ〜にしても有金を全部溶かした時は己の運のなさを呪ったけど、こいつを見つけた時にはウチにもまだツキが残ってると確信したで!」


「いやツイてるツイてない以前にお前は博才が全くないんだからその事を自覚して大金を賭けるのを止めろ。そうすれば今日みたいに痛い目に遭わないで済むだろ」


「アホか!負けたら痛い目に遭うから博打は楽しいんや!少額を賭けて博打しても楽しくなんかないわ!」


「そのセリフへ歴戦の博徒が言うとカッコいいけど、タマモみたいに負けてばっかの奴が言うと全く響かないな。いつもいつもお前が博打が負けた時の尻拭いをする俺の身にもなれ馬鹿タレ」


「ううっ、それを言われるとぐうの音もでぇへん!だけど安心してくれやユウ!いつか博打で大勝ちしたらその金でユウにたっぷりお返しするから期待しといてくれや!」 


ほんとこいつ今までまともに博打に勝った試しないのに何処から自信が湧いてくるんだ...?


「はぁ〜期待しないで待ってるよ。それでこれからどうすんだ?」


「昨日イザルを見かけてから尾行して住処を特定しとる。今から奇襲をかけに行こうで!」


「分かったじゃあ出ようか。ああ、その前に揉めるの嫌だから先に決めてきたいんだけど」


「ん、何をや?」


「いや報奨金の取り分の事。お前は大金貨一枚で俺は大金貨2枚もらいけど構わないよな」


「えっ!いや山分けで...」


「タマモは余分な金があったらまた賭場に行くだろ。だから必要最低限の金だけ渡して残金は俺が貰う。文句はないな、本当なら昨日王女に必要な分の金を貰ってたんだからお前が有金全部を溶かすなんて馬鹿な事しなければ、賞金首と戦うなんて面倒なことしなくてしなくて良かったんだ。それを態々手伝ってやるんだ分前を多めにもらうくらい当然だろう。それが嫌なら俺は手伝わない一人で賞金首と戦うんだな」



「うっ!...........ウチの取り分は大金貨一枚でいいです」


俺の提案を聞いたタマモは顔を顰め悩んでいたが、俺が折れないことを悟り肩を下ろして俺の提案を飲んだ。


高額賞金首と戦うのにタマモ一人でも多分平気だろう。

だけどタマモはこの稼ぎチャンスを逃すともう後が無い。

今はタマモの右腕である副社長は大事な仕事でこの国を出ている。

だが後数日でその副社長も戻って来る。

そしたらタマモが金を使い込み、大損した事がバレてしまう。

そしたらま〜こっ酷く怒られるだろうな。

前にも似たような事があった。

その時は今回程大金では無いが、会社の金を少し使い込んだ。

使い込んだ理由はなんだったかな、まぁそれはどうでもいい。

結局使い込みは直ぐに副社長にバレちゃった。

もうめ〜ちゃ怒られてた。

近くで聞いていた俺もあの副社長の説教の剣幕はビビった。

説教を受けたタマモなんて数日、副社長に怯えていた。

それが今度は大金貨なんて大金を使い込んだ事がバレたら.....ううっ、想像するだけで恐ろしい。

というかタマモはあんだけ怖い副社長に怒られたのに、懲りずにまた金を使い込むだなんて本当にこいつは馬鹿だな。

けどこの馬鹿とも長い付き合いだし見捨てるのも寝覚が悪いしな。

少し面倒だが助けてやるとするかな。


「ほらっ、さっさと行くぞタマモ!これで今回の件で手を貸すのは本当に最後だからな!もしこれで得た金を博打に使ったらマジで殺すからな!」


「わ、分かっとるよ。流石にウチも懲りた、暫く博打は控えるわ」


「本当か?」


「ああ賭けてもええで!」


「言った側から賭けしてんじゃん。だめだこいつ」


「あっ、やべっ!今のは言葉のあやと言うか...ほ、ほら!行こうで!」


タマモは誤魔化すように俺を引っ張って部屋を出た。

は〜先が思いやられる....

まぁいいや、もしタマモが金を使いそうになったら力ずくで止めればいい。

本気でやれば何とかタマモを止めれるだろう。


そうして俺とタマモは賞金首イザルを倒しに向かった。

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