博打狂い狐タマモ
「ああ〜よく寝た...」
翌日の早朝。
俺は王都内にある隠れ家で目が覚めた。
俺は王国では賞金首であるため普段は王都の外に住んでいる。
だが昨日は王都の外に出るのがめんどくさかったから、王都にある隠れ家で寝た。
んん〜今日はこれからどうしようかな?
俺は寝癖のついた頭をかきながら今日の予定を考え始めた。
とりあえず俺を嵌めてくれた情報屋のネズをぶっ殺して、それからどうしよう。
昨日で事件の手掛かりは無くなっちゃったし、もう打つ手がもう無い。
はぁ〜とりあえず適当に飯でも食いに行こうかな。
俺は頭をボリボリ掻きながら身だしなみを整えるために、洗面台に向かった。
ドンドンドン!
洗面台で顔を洗おうとした瞬間、ドアがノックされた。
ん、誰?
俺はドアをノックしている人物に心当たりがなくて、首を傾げた。
ここに今日俺がいる事を知っている奴なんて誰もいない筈だけど.....
もしかして、昨日ボコボコにしてやったゴロツキ共が仕返しに来たか?
俺は戦闘準備をしてからドアに近づきゆっくりと開けた。
「やあユウ!ええ朝やな!」
そこには下着姿のタマモがいた。
「いや〜助かったでユウ。服貸してくれてありがとな」
俺は部屋にタマモを入れ、下着姿なのも可哀想だから昨日着ていた上着をタマモに貸した。
体格の差があるからぶかぶかだけど、下着姿よりは幾分かマシだ。
「で、なんで俺がここにいるのが分かったんだ?ここに泊まった事は誰にも教えてなかった筈だけど」
俺は貸した服を着たタマモにどうやってここを知ったのかを聞いた。
「そんなの簡単や。ユウが王都内に持っとる隠れ家の場所は全部知っとるからな。しらみ潰しに回ってここにいるのを掴んだんよ」
「そこまでしてどうして朝っぱらから俺に会いに来たんだよ。....まぁその酷い格好を見れば大体の予想はつくけどな」
「いやぁそれがなぁ昨日、有金全部溶かしもうたんよ」
「はぁ!?お前昨日王女から相当な額を貰ってたよな!それをぜんぶ溶かした!?お前どんだけ派手に遊んだんだよ!?」
「ううっ....面目ない。それでユウにお願いがあるんやけど。なんとかまた金を稼ぐのを手伝ってもらえないやろうか?」
「嫌」
「......お金を稼ぐのを」
「嫌」
「.......お」
「嫌」
「「.................」」
タマモがお金を貸して欲しいと何度も頼むが俺が食い気味で断ると、タマモは黙った。
暫く俺とタマモの無言の睨み合いが続いた。
「お願いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!ユウぅぅぅ!!!!金を稼ぐのを手伝ってやぁぁぁぁ!!!!」
タマモは俺に泣きながら縋りついてきた。
「おい、やめろって情けない!」
「やってぇぇ!!!ウチ昨日博打で有金全部溶かしちゃったんよぉぉぉ!!!この事がウチの副社長にバレたら確実に殺されてまう!!お願いやウチを助けてや!!」
「アホ!昨日あれほど金を使い過ぎるなと忠告しただろ!それなのに金を全部溶かしたお前の自業自得だ、素直にお前んとこの副社長に怒られるんだな!」
「いやぁぁぁ!!!ウチを見捨てないでやユウぅぅぅ!!!」
「おい!離せって...力強っ!!」
俺がタマモを引き剥がそうとしてもがっしりと掴まれて全然引き剥がせない。
タマモは俺と変わらない位階の上に身体能力に優れている獣人だ。
俺が本気で抵抗したとしても引き剥がせるかどうか微妙だ。
それに本気で抵抗したらタマモを怪我させてしまう。
こんな事でタマモを怪我させるのも可哀想だ。
ああもう、しかたない!!
このバカをこのまま放っておいておくのも可哀想だ。
少し手助けをしてやるか...
俺は深いため息をついて、抵抗をやめた。
「は〜!!!分かった、分かったよ。金を稼ぐの手伝ってやるよ!!」
「あ、ありがとうユウ!やっぱり持つべき者は友やなぁ!」
「はいはい、それで何か金を稼ぐアイデアでもあるのか?また一からコツコツ金を稼ぐなら骨が折れるぞ」
タマモが稼がなくてはいけない金額は大金貨一枚。
王都の平均時給は銅貨10枚前後、普通にアルバイトして稼ごうと思ったら何十年も働かなくてはいけない。
そもそも俺は王都では指名手配されてるからまともに働けないし。
まぁそんな俺でも金を稼げる方法はいくつかある。
その中でも1番手っ取り早いのが魔物や賞金首を狩る事だ。
最近の王国は治安が悪く賞金首や危険な魔物が溢れかえっている。
そいつらを倒して引き渡せば、そいつの強さや起こした被害の大きさによって報奨金が貰える。
それに俺とタマモは腕に自信がある。
そんな俺達が組んで仕事をすれば大抵の相手には負けない。
並み居る賞金首や魔物を次々と倒してお金を貯めていった。
けど高い報奨金をもらえる魔物や賞金首は遠方にいたり、隠れていて中々遭遇する事が出来ない。
そのため少しずつしか金を稼ぐ事が出来なかった。
前に大金貨一枚分稼ごうとして組んで仕事をしていたが、1ヶ月でやっと半分ぐらいしか貯まらなかった。
また一からあの狩の日々をしなきゃいけないとなると、はぁ〜気が重い。
俺がこれから悲惨な日々を過ごす羽目になる事を予想して溜息を吐いた。
「ふっふっふっ!心配はご無用や、ちゃんと策は用意しとるで!これを見てくれや!」
タマモは懐から一つの紙を取り出して、俺に見せてきた。
え〜なになに。
王都にて無差別に人斬りを行う殺人鬼イザル。
既に20人以上が被害に遭っています。
こいつは深夜一人でいるところを襲うので、不用意な外出は控えて下さい。
こいつを討伐するために出動した騎士も数人返り討ちに遭っています。
もし狩ろうと考えている人がいるなら十分注意して下さい。
懸賞金大金貨3枚。
タマモは高額の懸賞金がかけられている人斬りについての情報が書かれている手配書を見せてきた。
「なんだよこの手配書がどうかしたのか?」
「それがな昨日有金を溶かして絶望に打ちのめされながら帰り道についとったら、偶然こいつを見つけたんよ!」
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