騙されたユウ

「はぁ〜〜!!」


あ〜あ最悪...

アンナ王女とリーシアが汚いバーで話していた頃。

俺ユウ=ジンはうんざりした気分で深い溜息を吐き頭を抱えた。

アンナ王女とリーシアとの戦いを見た後、俺は次の予定があったのでタマモと分かれ次の目的地に向かっていた。

アンナ王女とリーシアの戦いが思っていたよりも長引いたせいで、約束の時間に間に合うかはギリギリだったけど全力ダッシュをしてなんとか間に合った。

けど全力ダッシュまでして時間に間に合わせたというのに....


「おい手前!何ぼーっとしてやがる!この状況分かってるのか!?」


約束の場所に着くと直ぐに武装した柄の悪い連中に囲まれ脅される羽目になった。

あ〜ちくしょう!また騙された!

今度こそはまともな情報が得られるかもと期待してきたのに、またハズレクジを引かされた...

ああっ!こんな事になるならタマモについて行って俺も賭場に行けばよかった。


俺はここ最近ある事件を解決するために奔走していて今日はその手掛かりがあるという情報を掴んで、この路地裏に来た。

俺が追っている事件の手掛かりを得るために様々な情報筋や自分の足を使って手掛かりを方々探してはいるんだが殆ど何の情報も得られない。

そんな中、最近贔屓にしている情報屋から有力な手掛かりを教えると言われて指定された時間道理にこの場所に来てみたら、ゴロツキ共に囲まれ今にも襲われそうになったというわけだ。

くそっ!また裏切られた!

俺は昔ちょっとした事件を起こしたせいで高額の賞金をかけられている。

そのため賞金稼ぎや騎士などが頻繁に俺の首を狙い襲ってくる。

今日は俺が情報を買った情報屋が金のために裏切って、ここにゴロツキが来るように手配したのだろう。

くそっ!あの情報屋次会ったら覚えとけよ、必ずぶっ殺してやる...!!!

ようやく手掛かりを手に入れたと喜んで来てみたらこれだよ。

無駄足を踏むのも今月に入って4度目だぞ....もう本当に勘弁してくれよ。

はぁ〜〜!!ああもうなんか面倒くさくなってきちゃった。

騙された事で怒りはあるけど、無駄足を踏んだと知ったらなんかどっと疲れた。

今日はもう帰って早めに寝よう。

情報屋へのケジメは明日つければいいや、どうせ俺からは逃げられないし。

そうと決まればさっさと帰ろ。

俺が考え込んでいてゴロツキ共の事を無視していると、ゴロツキ共が痺れを切らして俺に襲いかかった。


「おい、手前!無視してんじゃねえよ!」


俺に最も近いところにいたゴロツキが俺の後頭部目掛けて武器を振り下ろした。

はぁ〜めんどくさいなぁ。

俺は振り下ろされた武器を受け止め、空いた方の手でゴロツキを殴り飛ばした。


「ぎゃぱ!」


俺に殴られたゴロツキは壁まで吹き飛び、壁に激突し地面に倒れ動かなくなった。

ゴロツキ共は俺が一撃で仲間を倒すと、さっきまで息巻いていたのが嘘のように鎮まりかえった。

その様子を見て俺は深い溜息をついた。

はぁ〜やっぱりこいつら弱すぎ。

見た感じこいつらの位階は2が殆どで、数に3の奴がいる程度。

こんな戦力じゃ俺の相手にならないよ。

全くこんな雑魚共で俺を倒そうと思うなんて俺を舐めすぎ。

俺を倒したかったら最低でも団長クラスの騎士か、最高ランクの冒険者連れてこいよ。

それ以下じゃ相手にならないし、こいつらなんて問題外。

俺の能力を使う必要すらない。


「おい、手前ら何ビビってやがる!」


殴り飛ばされ動かなくなったゴロツキを見て固まっていたゴロツキ達の中で、一人の男が怒鳴った。


「あいつはたった一人だぞ!それに比べてこっちは20人以上いるんだ。さっさと囲んで一斉に離れた場所から魔法を使え!そうすればあいつはひとたまりもないだろ!」


男が指示を出すと固まっていたゴロツキ共は我に帰り、俺を囲うように陣形を作った。

どうやら今指示を出している男がこいつらのリーダーみたいだな。

そして陣形が完成するとゴロツキの中から魔法を使える者達が魔法を放つ準備をし始めた。


魔法を発動するには魔力を溜めて一気に放出する必要がある。

熟練者になればなるほど魔力を貯める速度は早く、一流の者はほぼ一瞬で魔力を貯める事が出来る。

だがこのゴロツキ共は一人前には程遠い。

魔力を溜める速度が遅いこと遅いこと。

幾らでも魔力を溜めるのを妨害出来るし、射程範囲から逃げる事も簡単だ。

だけどここで逃げて追われるのも面倒くさいし、やるなら徹底的にやる。

俺は逃げずにゴロツキ共の方に向かった。


「よし!放て!」


炎、雷、水、岩。

ゴロツキ共は一斉に魔法を俺に向かい放った。

一人前には程遠くとも魔法は魔法。

普通の人が食らったならばひとたまりもない、いや高位階の者でも直撃したらタダでは済まない威力の様々な属性の魔法が俺に直撃した。


「どうだ、死んだろ!」


俺に魔法が直撃したのを見てゴロツキのリーダーは勝利を確信して声を上げた。


「げほっ、げほっ、煙い」


「...嘘だろ」


俺はしっかりとした足取りで魔法で出来た土煙から出るとゴロツキのリーダーは呆然と呟いた。


悪いが俺の体は特別性でな、あの程度の威力の魔法なら防御するまでもないんだよ。

さて今度はこっちの番だ。

魔法はこうやって放つんだよ!!


俺が右手に魔力を集め始めると、それを見たゴロツキのリーダーは仲間に指示を出した。


「やばい!手前らにげっ...」


遅い!

俺は素早く魔力を溜めて雷魔法をゴロツキ共に放った。

ドンっ!ゴロゴロゴロ!!


ゴロツキ共が放った物よりも数倍の威力がある雷魔法を俺は放った。

ゴロツキ共は逃げる間もなく、全員俺の魔法の餌食になった。

俺の魔法を食らったゴロツキ共は全員倒れ、意識がない。

一応軽く手加減はしたから多分死んではいないとは思う。

まぁ別に死んでてもいいんだけど。


さてじゃあゴロツキ共も片付いた事だしさっさと逃げよ。

随分派手にやっちまったからじきに騎士共がくる。

これ以上の面倒はごめんだ。

俺はゴロツキ共を倒すと、足早にここから去ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る