第三王女からの提案
「ふーご馳走様でした!」
リーシアが追加注文した大量の料理を全て平らげ、満足そうに腹を撫でた。
「本当に良く食べたな、軽く10人前は平らげたんじゃないか?」
「げふっ、これで暫くは食べないで済む、最近金欠で食費に困ってたんで本当に助かりましたよ」
「何言ってんだリーシア、お前は騎士で高給取りだろ。前線じゃあお金があっても意味がないから苦労するのも分かるけど、金なら持ってるだろ」
「それが...貴族に反抗する度に減俸を食らって、今は殆ど給料もらってないんですよ。その給料も戦闘の消耗品に使わないといけないので本当にお金が足りない....最近は少しでも腹が空かないように家ではずっと寝て過ごしているよ。食事を取ったのは10日ぶりだ」
「わー随分と過酷な状況下で生きてるんだな。というか10日も食事を取らないで良く生きてるな」
「人間3週間は何も食べないで生きていられるっていうし10日ぐらい余裕だよ。ましてや私は食い溜め出来るからね、今日食べたのを加えて1ヶ月は何も食わないでも平気。これで次の給料日までなんとか生きていける」
ほんとリーシア悲惨な生活をしてるな。
こんな不味い食事が今月最後の食事だなんて可哀想すぎる。
私の部下になったからにはリーシアにもっといい暮らしをさせたい。
未だ未熟な身だけどリーシア一人ぐらいを養うぐらいの甲斐性はある。
....本当はもう少し先にする予定だったけど仕方ない、予定を先倒しにしよう。
「なぁリーシア一つ提案がある、私の専属騎士にならないか?」
「専属騎士ぃ?」
私の提案を聞いたリーシアは眉を顰めた。
この国では貴族や金持ちが金や権力にものを言わせて、気に入った騎士を手駒にする事が認められている。
その制度が専属騎士だ。
本来騎士は治安維持や魔物の駆除が仕事だというのに、専属騎士は金や権力を持つ者しか守らない。
そのため真面目に仕事をする騎士や市民からは蛇蝎の如く嫌われている。
まぁ今や真面目に仕事をする騎士なんて殆どいないんだけど。
そんな中でリーシアは今時珍しく真面目に働く騎士だ。
私の専属騎士になって欲しいという提案を聞いて、リーシアは不機嫌になった。
「私の事をサラを使って調べたなら専属騎士の事を私が嫌いな事は知ってるでしょ。その上で私に専属騎士になれと言うんですか?」
「まぁ落ち着いてくれ、専属騎士といっても形だけだ。専属騎士になっても今まで通りに仕事をしてくれて構わない、市民を守るための活動を続けてくれ。そしてリーシア君が私の専属騎士になってくれれば今とは違って正当な給料を払えるし、君の活動を他の奴らが妨害してきても私の名前である程度までは追っ払える。ほら一つも損は無いのに利ばかりある私の専属騎士になるのを断る理由はないだろ?」
「いや、だけど....」
私の提案を聞いたリーシアは怒りを収め、申し出を受けるか迷い始めた。
今まで専属騎士を目の敵していたリーシアだ。
自分が突然その敵の立場に移る事になりたい動揺が隠せないのだろう。
私が挙げたメリットに嘘はない。
私はリーシアの行動を制限するつもりは全くない、寧ろ他の奴がリーシアの活動を邪魔してこないようにガードするつもりだ。
その上、生活に苦労しないように給料は多めに渡す。
リーシアも本心では迷わずに私の提案を受け入れたいだろう。
だが今まで専属騎士を敵対していた手前、私の提案を受け入れ難いのだろう。
それにリーシアが私の提案を受け入れない理由はもう一つある。
それは私の事を信じ切れていない事だ。
今日あったばかりの私がリーシアに一方的に利がある提案をしたので裏があると思っているのだろう。
こう思われるのが嫌だったから時間をかけて信頼関係を築いてから、専属騎士の提案をしようと当初は予定していた。
だけどリーシアの生活があまりに悲惨だから、一刻も早く救いたくてこの提案を今した。
だけどこのままだと私の提案を断りそうだ。
....仕方ない。
私の能力についてバラすのはもっと先の予定だったけどリーシアに信頼してもらうには能力を実際に使い、説明するのが一番手っ取り早い。
私は自身の能力をリーシアに明かす覚悟を決めた。
「なぁリーシア悩んでいるところ悪いんだけど、一つ聞いてくれるか?」
私は自身の能力の詳しい詳細を説明し、その後実演してみせた。
その結果リーシアは私の事を深く信頼し、私の提案を受け入れる事になった。
こうして王国の若手最強の騎士、リーシア=バルは王国の第3王女アンナ=エリザートの専属騎士になったのだった。
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