第三王女 対 不屈騎士 1
「さて、ここならいいだろう」
私アンナはリーシアと従者を連れて、会議場から抜け出し王都のとある場所にやってきた。
「ここは王都の中でも人が殆ど来ない。ここでなら邪魔者が入らず思う存分戦える」
「それはいいが、どうしてわざわざ私達以外の者を帰らせてたんだ?なんか見られて不味い事でもあるのか?」
「いや、別にそういう訳じゃない」
ここに移動する前に会議に集まってもらった他の連中には帰ってもらった。
あの連中を今日集めるのには少し苦労したが、それでもその気になればいつでも会う事は出来る。
まずはこの脳筋騎士の対応が最優先。
他の連中への対応はまた後日に回すしかないな。
リーシアは強い。
リーシアと戦って、勝てたとしても満身創痍は免れないだろう。
そんな状態であの連中とやり合うのは流石に厳しい。
だからリーシアだけに集中したいから、悪いが他の連中には帰ってもらった。
まぁ馬鹿正直にその事をリーシアに伝える必要もないな。
...そうだいい事思いついた。
折角だ、リーシアの真の実力をこの目で見たい。
私が王族だからといって気を遣って手加減されたくない。
今のままでも充分怒ってるから平気そうだけど、念には念を入れてもう少し煽っておこうかな。
「いや、王国を守る騎士ともあろう人が私みたいな小娘に倒されたら面目丸潰れだろ。だから貴方の敗北が他の人にバレないように、目撃者が出ないように気を遣ってあげたんだよ。私ったら気配り上手!」
「....それは余計な気遣いだ。いくら王族とはいえここまで大口を叩いたんだ、骨を2、3本折られる程度で済むと思うなよ!!!」
私の煽りが上手くいって、リーシアは益々怒り心頭になり私に殴りかかってきた。
「シッ!」
リーシアは私の顔面めがけて右ストレートを放った。
私はそれを避け、お返しにリーシアの顔面に向かって拳を放った。
だがそれをリーシアは屈んで避けると、私の胴体に向けて攻撃してきた。
それも私は避けて、反撃を行った。
攻撃、反撃、攻撃、反撃、攻撃、反撃。
私とリーシアは互いに一進一退の攻防を繰り返す。
互角の攻防を暫く続けているうちに私はある考えが浮かんでいた。
このままこの攻防を続けていたら、私は負けるだろう。
この一連の攻防で私は息が上がってきているのに対してリーシアはまだまだ余裕がありそうだ。
流石周りから疎まれて危険地帯に飛ばされながらも生き延びているだけはある。
彼女は周りから疎まれているせいで孤軍奮闘で幾つもの戦場を一人で戦ってきた。
一人で大群の魔物と戦い続けるためにはただ強いだけではダメだ。
強いだけだといずれ疲労し、大量の魔物に押し潰される。
一人で大群の魔物と戦うには単純な強さだけではなく、もっと他の武器が必要になってくる。
彼女リーシアにはその特別な武器がある。
彼女は疲労しないのだ。
何日徹夜しようが、飲まず食わずだろうが、怪我をしようが、一切ポテンシャルを落とさずに戦いを続ける事が出来る。
彼女がどれ程戦い続けられるのか正確な日数は不明だが、最高で5日間ぶっ通しで戦い続けた記録がある。
そんなスタミナお化けで決して諦めない不屈の精神を持っている事から彼女は不屈騎士と呼ばれている。
そんな彼女と持久戦なんて絶対に勝ち目がない。
出し惜しみはせずに短期決戦をするしか私に勝ち目はない。
私はリーシアの攻撃を避けると、後ろに下がり距離を取った。
「....中々やるな。王都でぬくぬくと暮らしている王族がここまで戦えるとは、何処で戦いを教わったんだ?」
「教えてほしい?なら私の部下になってくれたら、教えてあげるよ」
「ならいいや、そこまで興味があるわけでもないし。さて、このままなら私の勝ちだ。今なら『大口叩いてすみませんでした』と謝るなら許してあげるよ」
「勝った気になるのは早いんじゃない?」
「私はこのままずっと戦えるが貴方は後、数分も経てば疲れてくるだろ。そしたら私が一方的に貴方をボコボコに出来る。まだ若い小娘な貴方をボコボコにするのは少し気が引けるからな。さっさと謝ってくれ、もう私はそれでおしまいでいい」
どうやらやり合っているうちにリーシアの頭が冷えたようだ。
先程あれだけ私をボコボコにすると息巻いていたのが嘘のようだ。
普通ならここでお終いにするところだ。
だけどこのまま終わるわけにはいかない。
私はまだリーシアに対して自身の力を証明していないのだ。
ここで終わったら、少し強い程度の小娘という評価で終わってしまう。
それではダメだ。
私はリーシアに上に立つに相応しい人物だと認めさせなければならないのだ。
....仕方ない。
リーシアには疲れ知らずという能力があるように、私にも特別な力がある。
それを今から使う。
出来れば使いたくなかったけど、リーシアは能力を使わず勝てるような甘い相手じゃないからな。
私は自身の能力の使用条件を満たし、能力を発動した。
私が能力を使用したその瞬間、私の纏う雰囲気が一変した。
私の雰囲気の変化を感じとったのか、半分戦いを終わりにしようとしていたリーシアは警戒心をあらわにした。
「....何をした、先程と雰囲気が全然違う。もしかして何か能力を使ったのか?」
「ふふ、その問いに対する答えはさっきと同じ私の部下になるなら教えてあげる」
「ならっ、直接確かめる!!」
先程よりも比べ物にならない速度で私に駆け寄ってきた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます