白鳥の足音は案外大きい

こんにちは&こんばんは。

田舎の嫁、小烏です。


 義実家の家の北側には市道が通っています。その向こうに市道に沿って圃場整備された田んぼが広がります。ずぅぅぅっと田んぼです。見渡す限り、田んぼ。


 視界の右端には数年前に新しく出来た保育園と数軒の民家。田んぼの向こうには川土手があり、春には桜並木が見事です。その土手の川向こうも田んぼ。そして遠景は連なる低い山々。


 保育園とは反対側の視界の端に、川向こうにある郵便局とお寺の屋根が見え隠れしています。「のどか」を絵に描いたような風景です。


 ところで、義実家のある地域は白鳥の越冬地です。ほぼ毎朝白鳥の群れがクォークォーと鳴きながら目の前を横切ってエサ場に向かうのが見られます。週に数回家から見える田んぼのどこかに飛来するので、田舎初心者の小烏はテンションがそれはもう上がります。スマホ片手に田んぼの真ん中を通る農道へウォーキングに出かけたりします。


 しかし公園の白鳥と違い野生の白鳥にサービス精神を期待する方が無理というもの。


 小烏がスマホを翳してじわじわ近づくと、白鳥たちもじわじわ(このっていうのがまた余裕ありげで、ねぇ)と反対側に移動してしまいます小烏の「写真を撮りたい!」という気合に押されるように。毎回じわじわと避けられています。


 一方地元の皆さんは慣れたもので、芸能人がいても気づかぬふりで通り過ぎる東京人のように(個人のイメージです)、白鳥のいる田んぼをチラッと横目にするだけで通り過ぎます。白鳥たちの方も首をあげるものの、特に目立った動きはないのです。


 ある日のこと。ウォーキングの途中、6棟並んだビニールハウス(トラクターが4台入るほどの大きさ)のすぐ向こうの田んぼに、白鳥の群れがいたのです!


 小烏、思わず足を止めてハウスの陰に隠れました。


 白鳥は百羽ほどいるでしょうか。餌をついばむもの。べったり座り込んで休憩しているもの。灰色がかった若い白鳥もいます。群れから少し離れたところにいる二羽は仲睦まじそうです。群れとは別の田んぼで一羽、座り込んで首を上げこちらを見ている白鳥もいます。見張りなのでしょうか。白鳥の世界のコミュ障さんでしょうか。


 今までになく近距離で、息をするのも緊張します。スマホを出して驚かせたらと思うと手も動かせません。


 時は4時過ぎ。そろそろ夜営地に帰る頃。


 しばらく息を殺して覗いていると、何羽かがクォークォーと鳴き始めました。すると他の白鳥たちも首を高くあげてクォークォーと鳴き交わします。そのうち数羽が田んぼの端のほうへゆっくり移動を始めると、ほかの白鳥も田んぼの中を歩き始めました。


 このあたりの田んぼは冬でも乾かず水が貯まっています。白鳥が歩くと足音というか、水音がします。ジャボっというか、ズボッっというか。ジャッポ、ジャッポと歩きます。


 全白鳥が動き出すとその水音は思いのほか、その、うるさいです(白鷺が水中を歩く時のようなピシャくらいを想像ていました)。


 そして、あっという間にみんな飛び立って行ったのでした。白鳥が飛び立つときに水面を走るような映像をよく見ますが、田んぼから飛び立つときはそんなこともなく、2歩くらいで離陸していました。


 ちょっと予想と違った白鳥の足音。でもあの距離だったから聞くことのできた貴重な足音でした。


近況ノートに写真があります

(ボケています。すみません!)

https://kakuyomu.jp/users/9875hh564/news/16816927860826507835






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