踏みだす勇気

川谷パルテノン

計画を立てよう

 遠足は三人ひと組で班をつくって行動すること。そういうルールだったので私とミナトと死を知る根深き者とで班をつくった。ミナトとは小中、そして高校になってからもずっと同じ学校に通う幼馴染でケツの穴付近のホクロの正確な位置まで知り尽くしたダイの大親友である。そして死を知る根深き者はかつて竜の軍勢を束ねた無色3黒2、パワー1/タフネス5のアンデッドクリーチャーであなたのアップキープ開始時に死を知る根深き者が墓地に存在する場合、アンタップ状態でそれを場に戻すことを選んでもよい。ただ当時の権威は失墜しており今やただの高校生なのでいたって害はないものの友達も少ないせいではみ出していたのをミナトが可哀想だとピックしたのだ。しかし同じクラスでありながら私もミナトも死を知る根深き者とは殆どというか皆無に等しいコミニュケーションであり、私の場合、落とした消しゴムを拾ってやった時に会釈された程度であった。因みにその直後原因不明の病で三日寝込んでいる。


「さて、じゃあ神戸散策ってワケだけど特別やりたい、もしくは行きたいトコとかある?」

「無難に中華街とか異人館とか? 私あんまり関西詳しくないからピンと来ないっていうか。ミナトこそなんかないワケ?」

「うーーん。ぶっちゃけウチも詳しくないんだよね。一応、先生が貸してくれた雑誌とかは目を通したわけですけど……どこも予算的にお高いというか。死を知る根深き者くんは?」

「……」

「いや、頷くだけじゃ分かんないから。ウチもサヤカも特になしって感じだからさ。任せちゃうのも悪いけど確か死を知る根深き者くんって二年の時に京都から転校してきたんじゃなかったっけ? だったらウチらより関西詳しい系みたいな?」

「……」

「そっか。まあ仕方ないね。京都イコール神戸ではないもんね。んじゃサヤカの提案で南京町食べ歩きして異人館目指しますか」

「自分で言っといてアレなんだけどありきたりすぎない?」

「いやいや、待ってよ。話前に進まんじゃん。じゃ他になんかあるワケ?」

「ミナトが決めてよ。よく分かんないけどなんかリーダーシップ取り始めてるしそういうの好きそうだし」

「はあ? なんなの? え? もしかしてサヤカ今ウチにケンカ売ってる?」

「え? なんでそうなるの? 私はただアンタが仕切ってっからそのまんま決めてくれたらいいじゃんって思っただけだし」

「だからアンタが言ったプランでいこって言ってんじゃんバカなの?」

「なんでバカとかってなるワケ? それじゃつまんねえから他ねえかっつってんの? んで大事なとこ人まかせにすっからテメーも案出せっつってんの」

「さっきと言い方のニュアンス変わって来てるよね? おめやっぱケンカ売ってんだろ? 幼馴染とかカンケーねえからな? いつでもイッたんぞワレィ」

「あ、ちょ、え、ナニ? え、関西弁ww イキりじゃん。イキり、じゃん」

「ちょっと待って。オマエ絶対ボコすわ。裏来いや」

「どこの裏だよハナクソ女」

「これホクロだから! おい見た目は違うじゃろがい! 屁臭オンナ!」

「誰が屁臭だよ風呂入ってんだわ毎日!」

「じゃあ終わりじゃん。風呂入ってて屁臭は終わり」

「テメー表出ろや!」

「どこの表だよガス漏れ」


「ブックオフ」


「「え?」」


「ブックオフ行きたいです」

「ちょっと待って。神戸まで行ってブックオフ行くってこと?」

「本を売るならブックオフだから。死を知り尽くす書、売ってしまって人生変えたいんです」

「プライベートでやればよくね?」

「二人は優しいから」

「どういう意味?」

「厚かましいお願いですけど、もう一歩が踏み出せないワタシを二人に後押ししてほしい。神戸のブックオフでワタシが死を知り尽くす書を売り飛ばすところを見守っていてほしい! その後旧居留地とかでウインドショッピングでもして、昔ながらの喫茶店みたいなとこでコーヒー嗜んでみたりして、最後はハーバーランドで三人で夜景が見たいそのためにワタシが死を知り尽くす書をブックオフで売り飛ばして人生変えるとこ見ててほしい!」


 プランは決まった。

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踏みだす勇気 川谷パルテノン @pefnk

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