おっぱいとゆうもの。

ハナイト

第1話

アンダー65㎝、Eカップ。

最近少しきつくなってきたから、もう1サイズ上げようかと思っている。Fカップ。

巨乳じゃん。


体が細身なので、そこまで大きくは見えない。

でも胸元の開いた洋服を着ると下品じゃない程度の谷間が見える。

お椀型で色も白い。垂れてもいないし、真ん中にあるものも赤みがかったピンクで邪魔しない存在感。

我ながらよいおっぱいである。


私はおっぱいが好きだ。

性の対象は男性だし、LGBTでもQでもない。ただ、女性のおっぱいが好きだ。

「美」の対象である。

そして、愛し合う男性から自分のおっぱいを「美」として扱われることも好きだ。

触れられて自分の形や境界線がわかる。

自分が柔らかい生き物だと気付く。

それにはおっぱいが必要だ。


そう思えるまでには時間がかかった。


私は多分、ある程度の年齢まではQだった。

女性としての成長を受け入れられず、女性と分類されることに嫌悪感を抱いた。

胸にさらしを巻こうか本気で母親に相談したし、女性として犯罪に巻き込まれるのは想像を絶する屈辱だと、起こってもいない犯罪に打ちのめされて過ごし、スタンガンの購入も考えた。


両親も私の苛立ちに気付いていたはずだが、思春期特有のものと思っていたようだし、私の両親は「娘らしい娘」を望んだので私はますます生きづらくなった。


ある夜、父親が眠っている私の体をなぞり「女っぽい体になってきた」と母親に話していたことがある。母親は窘めるでもなく相槌を打っていた。

ぞわりとして目が覚めた私は内臓がひねり出される程胸糞が悪いのをじっとこらえて、眠っている振りをした。

以降も、生理痛でのたうち回るほど辛い時も父親は顔を覗き込み横向きに眠ると良いなどと男性には分かるはずのないことを無神経に伝えてきたりもした。


私が過敏なのかもしれない。

けれど、当時の私が「男」も「女」も嫌いになるには十分な日々だった。

「女性」になることも「女性」として両親の目に映ることも私にとっては最悪なことだった。


女性として変化することを拒み続けた私はついには拒食症になった。




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