チハラ・ジュニア・ホワ・ライラ

ルルビイ

黄金の手


 まあ、これはオレの後輩の話なんスけどね。


 ソイツはまあしょーもない男なんスわ。イマイチ売れてもないし、顔立ちも普通。だからお客さんにいつまで経っても覚えてもらえんような、しょーもない男っスわ。

 ほんでソイツときたらなんやある日ね、ズゥーンとショボくれとって、ますます冴えない顔しとりますわ。せやからソイツのコト連れてな、「たまには酒も飲まんとやってられんやろ!」つって奢ってやったんですわ。

 ほいだらまァー、単純なモンで。ソイツもみるみる元気になってですね、愚痴こぼしたり、助言求めたり、まァ酒飲んで盛り上がるくらいには回復したんですわ。

 そんで、どんくらいやったかなあ。二時間、三時間くらい? もうお互いベロンベロンになり始めた頃にですね、ソイツが言いよるんですわ。

「兄さん聞いてくださいよー。オレ、実はある特技があるんですわ」

 ……って。ほいだらまァ可愛い後輩の言うことやし? 自分も「おうなんや言ってみ」って聞いてみたんですわ。

 

「いやね。実はオレ……、触ったモン黄金に出来るんすわ」


 ……いやいやいや。そんなんもう絶対ウソですやん。

 え、なになになに? 怖い怖い怖い。どえらいマジメェな顔してソイツ、「黄金に……、できるんすわ」って言いよるんですわ。

 せやからね、オレもね、ちょっとお酒飲ませすぎたな思うて店員さん捕まえてね、お水ください言うてソイツの頭冷やしたろか思ったんです。

 したらもうブスーッとふてくされたようなカオしてですね、ソイツが。「なんやもう兄さんも信じてくれへんのかあ」って言いよるんですわ。

 ウワ面倒くさいなー、と思ったんですけど、まあまあまあ今日はトコトン付き合ってやるハラだったんで。コッチもね、気ぃ使って言ってやったんですわ。

「いやだってそんなんぜぇったい出来っこないやん! ほんだら今やってみぃ!」

 って。したらソイツは「よしきた!」とかワケわからん元気な返事してですね、店員さんが持ってきてくれたお冷やに触ったんですわ。


 したらなんや手ェからチカチカチカーッて眩い光が出るんですわ。ジブンもうへエェーーっ!? なってえ! 何が起きてるんか分からん内に水がブゥワァー黄金に代わっていきよったんですわ。

 いやホンマ! ホンマなんですって松本さん! ほんで、ほんでですよ、ソイツはニっタニタ笑いながら「どうスか? 兄さんどうスか? ……黄金でしょ」言うんですわ。

 せやからジブンも「いやスゴイスゴイスゴイ! こんなんもうオマエ大金持ちになれるよォ!」って言ったんすわ。大っ興奮で。

 せやけどソイツときたら「え? 黄金って金になるんスか?」とかアホなこと言いよるモンですから、なんや重いだけで価値が分からんかったみたいです。知らんけど。

 でも目の前でそんなん見せられたら、こっちはもう辛抱たまらんですわ。ですからオレはね、「じゃあもうココはいっちょオレと手ェ組もうや! そのチカラあれば億万長者になれるで!」って言ってやったんすわ!

 したらソイツもアホやから、「ホンマですか!? 兄さんと一緒なら心強いですー!」言うてですね、嬉っしそうに。「よっしゃあ!コレで同盟成立やあ!」言うてですね、その場でガッシィーっソイツの手ェ取って握手したんすわ! 


 そいだらですね、そいだらですよ!


 オレ、黄金になっとったんですわ……。

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チハラ・ジュニア・ホワ・ライラ ルルビイ @ruruvi

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