ある種のスピリチュアル的な何かとも言い切れない何か

 私はいわゆる霊感と言われるものは一切ない。


 冒頭から唐突だが、祟期さまの自主企画にお邪魔した。

 https://kakuyomu.jp/user_events/16816927862753609048


 新作短編である「ムダ毛を食べるカタツムリ」は、自分が実際に見た記憶であるのは間違いない。その日は夜更かしをして、テレビをザッピング(チャンネルをコロコロ変えること)をしながら、午前3時だか4時だか、もう眠たい時間になって意識がモーロ―としつつも、ぼんやりと見ていたテレビ通販の内容に驚いた。


 作品を読んでいない方に簡単に説明を。


 深夜によくやる海外のテレビ通販で取り扱っていたのは、カタツムリだった。

 そいつは人間の毛を溶かして食べるという。

 そのカタツムリを売る、ということだ。


 深夜に夢うつつで眠気と戦っていたとはいえ、私はその内容に驚愕した。


 その記憶と衝撃だけが強く残り、それから数年経ってもずっと悶々としていたところ、ちょうど良いラジオ番組があったので投稿してみた。

 リスナーの謎をリスナーからの情報提供で解決する、というコーナーだ。

 ところが、その謎は未解決のまま番組は終了した。


 あれが「よくある通販番組風に作ってみたド深夜のおふざけバラエティー」だったのか、本物の通販だったのかは、定かではない。

 いや、たぶん本物の通販だったのだろう。

 何月何日、何チャンネルかも憶えていない。

 とにかく深夜にザッピングしてたら、たまたま映ったチャンネルということだ。



 といったように、自分の中で腑に落ちない、どうにも説明できない、永遠の謎というものがいくつかある。


 ひとつは、二十年ちかく前に見た、この通販番組。

 もうひとつは、数年前の母の葬儀だった。



 通夜のとき、斎場には小学一~二年くらいの男の子が来てくれていた。

 白シャツに紺のベスト、紺の短パンという、まるで卒園式か入学式という感じのいで立ち。

 兄嫁のお姉さんのそばに座っていたので、てっきりそこの家の子かと思っていた。


 その子とは、いくつか会話もした記憶がある。

 少しだけ照れもあるけど、今時の子らしく大人に慣れていて、なんだかはにかんだ笑顔で言葉を返してくれた。絵本を読んでいたのか、絵を書いていたか。

 正直、自分が何と言ったか、その子が何と返事をしたかも憶えていない。

 だが間違いなく、通夜を終えたおとき(葬儀の後にする食事のこと)の場で、その子とは言葉を交わした。


 後日その話をしたら、兄嫁のお姉さんの子は、とうに二十歳ちかいという。

 周りでその会話を見守っていたはずの兄妹や叔父、叔母ですら、そんな子は居なかったと言い出す始末。


 父方(自分の方の親戚)はだいたいわかる。

 ごく近しい内輪だけの家族葬だったので、そんな子が居るわけない。

 ところが母方の親戚に聞いても、子供や甥っ子、孫を連れてきた人も居なかった。


 あの男の子は、いったい誰が引率して、どこの家から来たのか。

 なぜ母の通夜の日にあの場にやってきたのか。

 では他の皆は見てないという子と、自分はどうして会話をしたのだろうか。

 だとしたら他の皆の目には、誰も居ない空間にひとりごちてる私が居たということだろうか。


 今となっては永遠の謎である。



 でも謎って全部解明されない方が面白かったりする。

 私に霊感は無いが、世には本当に能力のある方たちは居ると信じるタイプなので、大衆的な価値観で十把ひとからげにカテゴライズされた『スピリチュアル』と表現するのも不適切だとは思うが、その未知の体験こそが目に見えないなにかからの人生のヒントや価値観の幅を広げる気づきを与える機会だと信じてやまない。


 こうして短編一篇になったり、創作のネタになるだけでも儲けものじゃないか。

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