ヌマヅmy love

そして、ヌマヅの日。

実はこの日が近づくにつれて、浮かれた気持ちがだんだん萎んできて、入れ替わりに、なんだか重たい不安な感情が胸の中でザワついているような、落ち着かない気分になっていました。

初めて会う人とそんなことできるの?

うまくできるの?

そもそもそんなことしていいの?

不安な気持ちを抱えながら、それでも約束の場所に向かいました。

午後三時に、駅南口に集合。

親には、これから受験勉強に専念するから、一泊だけ、高校最後の夏休みに海へ行ってくると言ったけれど、まともに顔は見られませんでした。

ボクたちは総勢五人。ヌマヅから、五人になったと電話連絡を受けたナオヤは、近所に住む中学の時の同級生、カワベとオイカワを誘っていました。確か中学では生物部で、あまり付き合いはなく地味なタイプです。真面目なのによく参加してくれました。

カワベとオイカワはもう三十分も前から来ていたらしい。十分前にボク。五分前にマナブ。ナオヤは、十五分も遅れて、八重歯をチラリと見せながらやって来ました。でも、本日の功労者なので誰からも文句は出ません。

チュウオウ線に乗り、トウキョウ経由でトウカイドウ線。お金がもったいないので各駅停車です。夏休みで混んでいるかと覚悟していたけれど、始発駅なので向かい合わせの四人掛けの席に座れました。カワベとオイカワが、ナオヤと三人掛けでもいいと言うので、マナブとボクはゆったりと座れました。カワベとオイカワは、ナオヤのことが大好きみたいです。

さっきまでの不安な気持ちは、みんなの顔を見たらいつの間にか消えていました。

すっかり旅気分。一応高校生なので缶ビールはやめて、チェリオやファンタを飲みながら

話をしました。

共通の話題である中学の時の先生のワル口、フォークソングの好きな曲、生物部って何するのってこと、勿論女の子のこと、何故か、これから始まるヌマヅのことには触れないで、思い出ばかりしゃべり合いました。

そうこうするうちにヌマヅ到着のアナウンスが流れ、列車は駅に滑り込んで行きました。


改札口の向こうに、二人の女の子が立っています。仲良く腕を組んでいます。

ひとりは、ショートヘアで目がクリッとして、鼻がちょっと上向きの、可愛らしい犬のチンを思わせる小柄な女の子。でもうつむきがち、気が弱そうです。

そしてもうひとりは、チョンマゲみたいに髪を上の方でまとめ、頼りがいのある、そう、女相撲でもやっていそうな、がっちり体型のお姉さんタイプ。横綱とまでは言わないけれど、小結ぐらいの実力はあると見ました。

この小結のお姉さんが、今回の話を進めてくれたとナオヤが小声で教えてくれました。

でも、ちょっと待って。なんで二人なの?

あっ、そうか、なるほど。あとの三人は、家の方でいろいろ準備しながら待っているのだなっと思い直して、小結姉さんの家へと向かいました。

ナオヤと小結姉さんを先頭に、早くもチン似の子に話しかけているマナブ、そして、列車の中とは打って変わって無口になった残りの三人が続きました。

駅前の商店街を抜けて住宅地に入り、しばらく歩いたあと、二階建ての木造家屋の前に立ちました。

「ここよ。」

小結姉さんが玄関の戸を開けて、みんなを家に上げてくれました。

ん?やけに静か。三人が待っている家にしては静か過ぎます。

何処?あとの三人は何処?!

そんなボクの様子に気付いたのか、小結姉さんが、

「来るって言ってたのに昨日になって急にみんなやめるって。今更あなたたちに言えないでしょ。だから急きょ、この子に来てもらったの。」

何?じゃ、小結姉さんチンちゃんにボクたち五人?全然数が合わない!

「しょうがないでしょ。」

しょうがないって、、、

「まぁ、とにかく食事しましょ。」

食事って、、、

「ビールあるわよ、よかったらウイスキーもどうぞ。」

完全に小結姉さんのペースだ。男どもは何も言えず食卓につきました。

小結姉さんが、「カンパーイ!」

乾杯って、、、何に乾杯すりゃいいの、、、

さすが小結姉さん、飲みップリがいい。仕方なしに男どもも飲みました。つまみは、柿の種が器に山盛りになっています。

「カレーライスも食べて。友達が泊まりに来るって言ったらお母さんが作ってくれたの。」

友達ってボクたちです。なんかスミマセン。

美味しゅうございます。

飲んで食べたら、今更帰るとは言えず、覚悟を決めました。

しばらく、それぞれの誕生日とか、星座とか、手相を見せ合って成功線がどうの、結婚線がこうのとか、カワベ君オイカワ君はおとなしいけど何が好きなの?とか、小結姉さん主導の上滑りな会話が続きました。

すると、さっきからコソコソ話をしていたマナブとチンちゃんが立ちあがりました。

あれ、何処行くの?二階に上がってっちゃいました。

もうカップル誕生?ちょっと待って!ふざけないで!残ったのは小結姉さんと男四人。状況は更に悪化しました。

そこで、小結姉さんが、

「大丈夫よ。彼女とは後で誰か替わればいいし、アタシは何人でも大丈夫よ。」

そりゃあ、確かに大丈夫そうだけど、こちらは大丈夫かどうかわかりません。

それに、替わればいい?マナブと?

嫌だよそんな、相手の人にも悪いでしょ。

それに、何人でも大丈夫ってことは、人が替わってもできちゃうってこと?

ボクの方を見ていたナオヤが、

「おまえ、どうぞ。」

どうぞって!?

小結姉さんに、

「いいよね。」

いいよねって!?

小結姉さんが、

「いいわよ。」

いいわよって!?

ボクは焦りました。

「いや、オレが?だって、カワベやオイカワにも悪いし、第一、ナオヤの彼女だろ?そんなの、悪いよ、、、」

もう、何を言っているのかわかりません。頭の中は大混乱。

「そうか、わかった。じゃ、行こうか。」

あれ?あっさりふたり連れ立って、隣の部屋に行ってしまいました。襖を開けた時、二組の敷き布団が敷いてあるのが見えました。用意のいいことです。

襖は閉められました。その向こう側で行われることは、だいたいはわかります。

残された三人は、カレーで汚れた皿たちを前に固まっていました。

そのうちに、『アン』とか、小結らしからぬ甘えた声が聞こえてきます。

なんだかもうやってられないので、三人でウイスキーを飲むことにしました。強過ぎて飲むというより舐めています。テレビを付けてみました。ちょうどコマーシャルの時間みたいで、動かない写真のような画面で地元のお店やら会社やらの宣伝を、呆っと見ていました。

しばらくして、『おーい、おまえたちも来いよ』ナオヤの声がします。

えっ、そこに行くの?まだ最中でしょ?行けるわけないでしょ。

すると、カワベとオイカワが、スッと立って、サッと行ってしまったのです。

とうとうひとりになりました。ウイスキーを舐めていたけれど落ち着きません。仕方ないのでカレーの皿を片付けて、洗ったりしていました。

『おーい、おまえも来いよ。』また呼んでいます。

ヌマヅまで来て、汚れた皿を洗っているのも馬鹿馬鹿しくなって、ボクは行くことにしました。

襖を恐る恐る開けると、そこには異常な世界が拡がっていました。正常位ってヤツことぐらいはわかります。そのことより驚きなのは、白いショートパンツ一丁になったカワベとオイカワが、重なっているふたりの両側に座り、それぞれ片方の手でナオヤの尻を、その動きに合わせて押しているのです。何かの儀式?

「なにしてるんだよ?」

ボクは息を殺してカワベに聞きました。

「手伝ってるんだよ。」

当然のことでしょって感じの答えが返ってきました。馬っ鹿じゃないのこいつら!

それにしても、思っていたよりもあまりイヤらしさは感じない。なんというか、運動しているみたいです。

でも、小結姉さんは意外な可愛らしい声で、また『あん』とか言っています。

何もすることがないので、とりあえずボクもナオヤの尻を押しました。

急にナオヤの動きが速くなり、ボクたちの押す手も速くなりました。そして急にガクッと小結姉さんの上に覆い被さっていきました。


「二階、どうしてんのかなぁ、おまえ、見てこいよ。」

グッタリとしたナオヤが、ボクに指示を出しています。少しムッとしたけれど、本日の主導権はナオヤにあり、従うしかありません。

ボクは二階に向かいました。

トントン、ドキドキしながらドアを叩きました。最中だったらどうしよう。

「どうぞ。」マナブの普通の声。

ゆっくりドアを開けると、ふたりは距離を取って座っています。

小結姉さんの部屋らしいけれど、小結らしからぬピンクが基調です。ベッドには熊とか犬とかのぬいぐるみがあり、全然乱れてはいません。服装も。

ふたりは何をしていたの?いや、何もしていないの?

「この子さぁ、えらいんだよ。」

マナブが話し出しました。この子って?年上でしょ。でも確かに年下に見える。

「家が小さな干物屋さんやってて、早くにお父さんが亡くなったから、小さい頃からお母さんの手伝いをやってるんだって。魚を開くのもお手のもんらしいよ。」

そんな話してたのか。

「どんな魚?」

ボクも話に加わりました。

「主に鯵、この辺のだけじゃなくて、長崎からなんかも来るの。冷凍の鯵開くのって結構大変なの。」

震えそうになるぐらいのか細い声で、一生懸命答えてくれます。

こんな子が、なんでこの怪しい集まりに参加したのでしょうか。

マナブがもう聞いたみたいです。

「あの姉さんが何人かに声をかけて、最初はみんな、『面白そう、トウキョウの男の子でしょ、年下?行く行く』とか言ってたけど、前の日になってみんな尻込みしちゃったんだって。姉さんはこの子と中学高校が一緒で、いじめから守ってくれたり、いろいろ頼りがいのある友達なんだって。その姉さんから、明日トウキョウから友達が来るから一緒にお泊まり会やろうって、強引に誘われて断れなかったんだって。女の子が来るとばかり思っていたらオレたちが来て、そりゃもうビックリしたんだって。」マナブがよくしゃべります。それにしても『だって』が多い。それはともかく。

駅ではすぐ帰ろうとしたけれど、小結姉さんに、『お願い帰らないで、アタシ、ひとりになっちやう』って、腕をガッチリ組まれて動けなかったらしい。そういえば、駅でふたり腕を組んでいたのを思い出しました。

それでも今は、そのか細い声でいろいろ話してくれます。

魚は鯵だけではなく、かますや鯖、それになんと言っても金目鯛、干物もいいけどお刺身が本当に美味しいこと。近くにはアワ島というきれいな小さい島があること。センボン浜から見るフジ山が素晴らしいこと。春はヒエ神社の桜の花が見事なこと。

ヌマヅのことが大好きなんだな。

あの、手の早いマナブがニコニコ聞いています。

「干物屋さん、明日大丈夫なの?」

ボクが聞くと、

「たまにはお友達と楽しんできたらって、お母さんがお休みくれたの。」

お母さん、お友達ってボクたちです。なんか、スミマセン。

マナブは、この子があまりに健気で、そして華奢なので調子が出ないのかもしれません。

とは言ってもこのふたり、いい雰囲気ではあります。ボクももっと話していたい気持ちはあるけれど、ボクの割り込む余地は無さそうです。


少し、悔しさと未練を残しながら下に戻ると、テーブルに飲みかけのウイスキーのグラスが散らばっているだけで誰もいません。

少し開いた襖の向こうから、また『アン』とか聞こえてきます。二回戦が始まっているようです。隙間から見える状況は、どうやら後背位ってヤツ。そしてまたカワベとオイカワがナオヤの尻を押して手伝っています。ボクはもうその儀式に参加する気はしません。

そぉっと襖を閉めました。誰も見ていないテレビがついています。音を小さくして、少し湿気ってる柿の種をつまみに、ウイスキーの水割りをひたすら飲みました。襖の向こうの今回の取組は長そうです。

酔ったのか、眠くなってきました。そのまま、テーブルに突っ伏して寝てしまったようです。


ん、寝てた?

目を覚ますと、襖の向こうはさすがに静か。眠っているようです。テレビの画面は、砂漠の砂嵐になっているので消しました。

いろいろあって、だいぶ汗もかいたので風呂を借りることにしました。

脱衣場の棚には、ありがたいことに何枚かのバスタオルも用意されてあります。浴室も結構広い。田舎はいいなあなんて思いながら体を洗っていると、誰か、戸を開けて入ってきました。

振り向くとそこには、マワシもしていない小結姉さんが立っています。

「汗かいちゃった。」

ボクにかまわず、ぬるくなっている湯舟に、ザッパーンと飛び込みました。湯舟の水位がだいぶ上がったようです。

縁に肘をついて、

「明日どうする?みんなでセンボン浜行こうか、きれいだよ。」

チンちゃんも言ってた。

「松林があって、とっても気持ちがいいよ。」

小結姉さんも、ヌマヅが好きなんだなぁ。

それにしても気になるのが、さっきからボクの下半身をチラチラ見ること。少し身をよじりました。

「ところでさあ、あんた、初めてなんだって?」

「えっ、、、う、うん。」

「アタシ、いいらー。」(らーって?)

「いいって言ったって、ナオヤに悪いよ。」「ナオヤはね、あの二人はともかく、あんたをこのまま帰すわけにはいかない、お前頼むよって言ってるのよ。」

「そ、そんなこと言ったって、、、」

ザァッヴァアーっと、小結姉さんが湯舟から上がってきました。そして、ボクの顔にその豊かな胸を押し付けてきたのです。

筋肉質かと思った小結姉さんの胸は、ふんわり柔らかくて、なんだか懐かしい感じがします。ボクは乳離れが遅かったって母親が言ってたっけ。オンブされた時、いつも後ろから胸に手を差し入れたらしいのです。

そう!ボクはずっと女の人の胸が好きなんだ!

「先っぽ、吸っていいらー」

なんだか、ボクもいいらー!

思考回路が壊れました。夢中になって吸いました。赤ん坊です。

もっと吸っていたいのに、小結姉さんは構わず、今度はボクの前に屈んで、大きくなっているボクのモノを咥えちゃったのです。

「な、なにするの!?」

予想外の展開に、ボクは慌てました。

でも、でも、なんだかあったかくて気持ちがいいのです。

小結姉さん、とっても一生懸命!

そ、そ、そんなに動かすと、刺激が強過ぎる!

あっ!ヤバいよ!

うっ、うっ、うーーー

あっ!あっ!あっ!あーーーーーーーーーーーーー、、、、、.....

小結姉さんは、最後までボクを受け止めてくれました。



小結姉さんはボクに見えないように、背中を向けて口をすすいでいるらしい。

その、シミひとつないつるつるの肌が、水気を弾いて、水滴が小さな玉のようになっています。

その玉のひとつひとつが、浴室の淡い灯りでも、きらきらと反射して、輝いています。

うつくしい、と思いました。

いとおしい、と思いました。

ボクは驚かせないように、そっと背中を抱いて、

「ありがとう」

と、囁きました。



明日はみんなで浜へ行こう。

この町が好きになりそうです。





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昭和ブルー ヤバくない?高校編 まさき博人 @masakihiroto

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