第187話「敵本主義」
「敵本主義。目的が別にあるように見せかけておいて、急に本来の目的を達成させるやり方。今まさにその手口の真っ最中だったわけだな」
と長山は言う。
「そうです。あの時は全員が騙されました」
亜里沙も認めた。
「それにしても不思議ですね」
「なんだ?」
「どうしてそんなに簡単に犯人を特定できたのかってことよ」
亜里沙の言葉に長山は首を傾げた。
「そりゃ簡単さ。パンドラ殺しの直後に電話した相手が怪しいと思っただけだ。もしオレたちが電話していたらどうなる? 犯人なら慌てて否定するはずだぜ。なのにあっさりと認めた。それどころか、自分がやったと言い出したんだからな」
「…………」
「それでピンときた。パンドラ殺しが狂言だってことがすぐに分かった。あれだけ大騒ぎして、しかもアリバイがないヤツなんて他にいねえだろう。おまけに仲間割れまで起こしやがった。こりゃ決まりだと思わんか? オケイとリサも納得してくれたよ」
「ちょっと待って。『パンドラ殺し』って何?」
「そりゃあ、おまえさんたちには分からんさ。オレたちの推理合戦の話だからな」
「どういう意味なの!」
「まあまあ、興奮すんなって。そのうち分かるさ。それより……これからどうするかが問題だ。このままじゃ塔馬たちは明日にでも殺されるぞ」
「わけわかんない」
そう言って亜里沙は立ち上がった。
「どこに行く気だい?」
「部屋に戻る。気分が悪いわ」
亜里沙は長山の視線を避けるようにして足早に立ち去った。
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