第161話「怒り心頭に発する」

国会で居眠りしている議員を見れば、誰だって怒り心頭に発するはずだ。怒りが心の底からわきあがる。激怒する。だから、この感情は正しいのだと、私は自分に言い聞かせた。

しかし……、それでも私は釈然としなかった。もやもやした気分を抱えながら、私は家路についた。

そしてその夜、夢を見た。暗い部屋の中に私はいた。そこは自分の部屋のようだった。しかし、そこにいる私は、なぜか着物姿ではなくて洋服を着ていて、しかも髪が長くなっていた。まるで十年くらい前の私のような感じだ。でも、それはおかしい。なぜなら、私はその当時の写真など持っていないからだ。なのに、なぜそんな昔の自分が、今目の前にいるのか……。

「あなた」

と、突然後ろから声をかけられた。振り返ると、そこには知らない女がいた。いや、正確には知っている人だが、今の彼女はこんな顔をしていないし、こんなに若くもない。二十代前半に見える彼女の顔には、化粧っ気が全くなかった。それに髪型が違う。長い髪を結い上げて、かんざしをさしていたあの頃の彼女ではなかった。今は、肩にかかる程度のショートカットにしているのだ。そのせいか、彼女が幼く見えた。でも、それは当然のことなのだ。なぜなら、私が覚えている彼女と今の彼女は別人なのだから。そう思った瞬間、私の意識が急速に覚醒していった。目が覚めた時、私は泣いていた。なんで泣けたんだろう? どうして、あんな夢を見てしまったんだろうか? 分からない。ただ一つだけ言えることがあるとすれば、それは今の彼女に会ってみたいということだ。

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