第130話「ドッペルゲンガー」
「うんうん」と呟きながらうずくまる女子高生。
その背後から忍び寄る影…… そして振り下ろされる包丁!! グサァッ!!!
「きゃーー!!」
悲鳴を上げる女子高生。しかしよく見ると、包丁を持っているのは自分自身だったのだ!! ドッペルゲンガー現象である。
さてこの都市伝説の元になった事件についてだが、これは実は創作ではないらしい。
1952年、アメリカのX州で、1人の少女が失踪した。当時16歳の彼女は、ある晩突然いなくなり、そのまま帰ってこなかった。彼女の友人が警察に捜索願いを出したところ、3週間後に、彼女が行方不明になった場所から約50マイル離れた山中で、変わり果てた姿となって発見された。全身に無数の傷があり、顔には苦悶の表情が浮かんでいたという。彼女はその後病院に収容されたが、数日後に死亡した。これが、後に「ドッペルゲンガー」と呼ばれるようになったものである。
この事件以来、アメリカでは度々ドッペルゲンガーによる事件が起こるようになった。たとえば1968年には、Y州の高校生2人が、真夜中に学校へ侵入し、校内をさまよった挙句、2人とも階段を踏み外して転落死するという事件が起きている。また1969年には、Z州の高校に通う14歳の少年が、自宅を出た後行方がわからなくなったが、約10日後に、近所の農場で発見された。彼は全身に切り傷を負っており、特に両肩の傷が深く、出血多量で死亡した。これも、後に「ドッペルゲンガー」と呼ばれることになるものだ。
1970年には、W州に住む17歳の少女が、深夜外出したまま帰らないという事件が発生する。翌々日になって彼女の家を訪ねた父親が、ベッドの中で眠り込んでいる彼女を見つけ、ほっとしたのもつかの間、翌朝になってみると、彼女は既に息を引き取っていた。
日本では、1977年に、東京・Q区のOLが、仕事帰りに会社を出て、帰宅途中に消息を絶ち、翌日に死体となって発見されるという事件が発生した。その遺体には首や手首などあちこちに、刃物のような物で切られた跡があった。この事件は後に、「ドッペルゲンガー」と呼ばれるようになり、日本にも徐々に広まっていったのである。
ドッペルゲンガーの外見は、人によって様々だ。髪の色が違うとか、服の模様が違うとかいった程度ならまだいい方で、中には身長まで違う人もいるらしい。しかも年齢や性別だけでなく、国籍さえ異なることもあるのだという。
また、本人以外の人間が目撃しても、それは本人の姿に見えるのだが、本人自身が遭遇した場合はそうではなく、全く別の姿として見えるのだという。
ちなみにドッペルゲンガーと出くわした人間は、死ぬ前に自分の死について考えることがあるらしく、それが本当かどうか確かめるために、もう一度同じ場所に行ってしまうことも多いそうだ。しかし多くの場合、そこで見たものは、本物の自分ではなかったりするわけで……。まあ、ドッペルゲンガーなんて迷信にすぎないけどね。
「あの~、すいません。ちょっと教えて欲しいんですけど……」
「はい?」
「今、何時ですか? 私時計をなくしちゃって」
「えっと、今は……あっ、もうすぐ8時ですね」
「うわぁっ!?」
「どうしました?」
「い、いえ何でもないです! それより、どうしてわかったんですか!?」
「はい?」
「いやだから、私が腕時計をしてないこと……」
「いや、時計をなくしちゃってって言いましたよね?」
「な、なんかすみませんでした!」
「はい?」
「お邪魔してしまって、本当に申し訳ありません!!」
「い、いえ別に謝らなくてもいいですよ」
「ありがとうございます!」
男は走り去った。
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