第128話「実践躬行」
「『有言実行』と同じような意味の四字熟語で『実践躬行』というのがある。理論や観念、信念を、口だけでなく自分で実際に行うこと。主義主張を言うのではなく態度で示すこと。有言実行の大切さを言った言葉だ」
「どうしたんです急に?」
「それは、今の社会は、この四文字熟語が似合うような状態になっているからさ」
「そうなんですか? よく分かりませんけど……」
「まあ、これは俺の考えだけどね。今、俺たちがいるこの国は、戦争もしていないし、犯罪もない。でも、何か物足りない気がしないかい? 特に、君のような若い子は」
「そう言われても……」
「俺は、いつも考えているんだ。もし、世界中がこんな感じだったら、平和でいいなぁってね。そして、そんな国になるには何が必要だろうか……と」
「……」
「ただ、残念ながら、今はその答えが出ないままなんだ。だから、俺は毎日のように『今日こそは、早く帰ろう!』と思っているわけさ」
「いや、日本はそんなに平和じゃありませんよ。凄惨な事件だって起きているし、南北のロシアや中国との国境近くでは不穏な空気が漂っています」
「そうか。じゃあ、今はそれでいいんじゃないかな」
「えっ!?」
「君は、日本の平和を守るために戦っているんだろ? その戦いの結果はどうなった? まだ終わっていないじゃないか。それどころか、これから先の方が長いだろう。ということは、まだまだ頑張る時期なんじゃないのか?」
「……」
「それに、君は、自分が思っているよりずっと強い子だよ。だから大丈夫だ。きっとできる。信じてあげなさい。自分のことを。そして、君の大切な人のことを」
「ぁ、はい……」
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